認めぬ。
廊下から何かが聞こえてきた。
「ヒュー♪ヒュー♪」
「............」
エドガルドが顔を上げる。
「............」
ローデリックも扉へと視線を向ける。
口笛。
らしきもの。
見事に鳴っていない。
徐々に近づいてくる。
「ローデリック」
「何だ」
「来たぞ」
「来たな」
足音が止まった。
次の瞬間。
――バァン!!――
「父上ー!!俺とセシルの結婚認めてー」
「............」
「............」
政務室の入口。
満面の笑みを浮かべた第三皇子。
ルシアン・フォン・ヴァルディア。
その視線が父へ。
そして。
ローデリックへ向く。
「おっ、ちょうどいいじゃん」
何も知らない。
本当に何も知らない。
数分前。
この部屋で決まったことを。
当然ルシアンは知らない。
「ルシアン。ノックぐらいせんか」
エドガルドの言葉を全く聞きもしない。
「二人ともいるなら話早いわ」
エドガルドとローデリック。
一度だけ互いを見る。
苦笑しながら小さく溜息を吐く。
「父上」
「ああ」
「ローデリック」
「殿下」
「俺」
ルシアンは自信満々に胸を張った。
「セシルと結婚することにした」
「してないぞ」
「しておりませんな」
二人同時。
「細かいなぁ」
「細かくない」
「極めて重要です」
「まあ聞けって」
ルシアンが勝手に椅子へ座る。
「セシルが言ったんだよ」
「何と?」
「ローデリックが了承すれば構わないって」
「ほう」
ローデリックの目がわずかに細くなる。
「だから」
ルシアンが笑う。
「認めて?」
「認めぬ」
「............」
即答。
ルシアンの笑顔が。
止まった。
「............」
エドガルドは書類を見る。
「............」
ローデリックも書類を見る。
「............」
ルシアンだけが。
二人を見る。
「......はぁ?」
政務室に第三皇子の間抜けな声が響いた。