㉘ 雪村の告白
さてこのあたりで、ボクの内面に起こっていた幾つかの変化について、白状しておかなければならないだろう。
もしもコレが推理小説なら、読者諸氏から「今さら追加の情報入れるなんて、アンフェアだ!」と叱られてしまうところだろう。
でもコレは、SFファンタジーなのだ。どうかお許しあれ。
振り返ってみれば、小学一年生の時に、初めて雪子さんと話したあの日から、ずいぶん時がたった。
あれから何度も彼女と出会ってきたが、そのせいでボクの中に「ある種の副作用」が出てきたようなのだ。
まず第一に、ボクはカンが鋭くなった。
コレは主に、他人からの悪意や、危険な事態の前触れなどに、反応するものだ。
それゆえに、いつの間にかボクは、雪子さんの助けが無くても、色々な種類の危機回避が、可能になっていたのだ。
そして、少なくとも、ボクに近づいて来た女性たちからは、何の悪意も感じなかった。妹よ、安心しろ。
この能力は、60才になった今でも続いている。
最近だと、まず、1995年の年明けに神戸に行く予定を、1994年の年末に変更した。
2000年の9月11日には、名護屋に居なかったし、2001年9月11日のニューヨーク旅行は、早い段階でキャンセルした。
また、2008年の四川省への旅行は、前もって5月中旬から4月下旬に変更しておいた。
それに、2011年の宮城県への旅行は、春休みから冬休みに前倒ししたりした。
もしも、それぞれの旅行が、予定どおりに実行されていたら、どうなっていたのか。誰もが知っている通りである。
ただこれらは、あくまで「ムシの知らせ」のようなものだし、何がどのような規模で発生するのか、分かる訳ではない。
仮に他人に知らせても、大した事が無かった場合に、予定変更の責任が、取れないのである。
だからこういった件は、自分の胸に留めておくか、一緒に旅行に行く人だけに知らせていたのだ。
「なんだかイヤな予感がする」
映画「スター・ウォーズ」の中で、ハン・ソロがこのセリフを言ったとき、ボクは大いに共感したものである。
それから第二に、少し未来に知るであろう、ワードや言い回しが、まるで予知夢のように、いつの間にか勝手に頭の中に、侵入してくるようになっていた。
コレは、雪子さんと会話をするために、必要な能力として、ごく自然に備わったのだと思っている。実に便利なものである。
そして第三に、ボクは、雪子さんの出現の気配を、前もって感知できるようになってきた。
この能力のおかげで、ボクは、突然目の前に雪子さんが現れても、それほど動じなくなったのである。
高校生になったころには、彼女がいつ、どこに現れるかまで、早めにはっきりと、解るようになってきていた。
コレで雪子さんが急に来ても、いちいちビクビクしなくても良くなったので、最近では助かっている。
だから、そろそろ雪子さんが近くにやって来るころだということは、とっくに分かっていたのだ。
......なのにまさかまた、こんなに驚くことになるとは。サプライズが過ぎるぜ。雪子さん。