㉗ 高校生の雪村⑵
高校の入学式で驚いたことは、校長先生の挨拶が短かった事だ。
「私の話は短いですよ。それが私の自慢です。」と言う言葉から始まったけど、その前フリで、本当に短い話だったからびっくりしたのだ。
「みなさん、入学おめでとう。我が校は、卒業生たちから、光陽温泉などというあだ名で呼ばれるほど、のんびりした校風です。でも早めに将来やりたいことを見つけて、それに向かって努力を積み上げてください。そして、その上で、3年間楽しく過ごしてください。私はいつでも皆さんを応援しています。以上!」......こんな感じだった。
なんて素敵な校長先生なんだ。ボクは感動した。
1学期が始まった。
前述の通り、ボクは受験勉強で燃え尽きていたため、予習、復習などの家庭学習に、まったく手がつかなかった。
......さすがに宿題はしたけどね。
でも、中学時代に気が狂うほど勉強したおかげで、高校一年生の学習内容で困ることは無かった。
それらはほぼ全て、中学校の知識の簡単な応用に過ぎなかったからだ。
まあ、二年生の2学期ごろに、サボって来た報いを受けることになるのだが......それはまた別の話だ。
それから、雪子さんの言いつけを守って、読書は続けていた。
今までに和モノのSF小説はたいてい読んだし、推理小説も江戸川乱歩や横溝正史、小栗虫太郎、鮎川哲也なんかを読んでいた。
だから高校に入ってからは、洋モノに手を出したんだ。
例えばSFならアーサー・C・クラーク、アイザック・アシモフ、ロバート・A・ハインラインなど。
推理ならコナン・ドイル、モーリス・ルブラン、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーなど。
どの作家の作品世界も、いい刺激になったなあ。
あとは、だまされて入った陸上部の事だけど、活動内容はシンプルだし、競技のルールも簡単だったから、なんとか続けられそうだった。
それに男女一緒に活動するから、可愛い先輩の存在も、練習の励みになった事実は否めない......いや、ヘンな意味じゃなくて。
ボクの担当種目は1500m。3000m。5000m。
いわゆる中・長距離だ。それに時々、監督の気まぐれで「円盤投げ」にも出場させられた。
コレがもとで、ボクのあだ名が「UFO」とか「宇宙人」とか「ET」とかになるんだけど......実際の理由はそれだけじゃ無かった。
実は、ボクはクラスで一目置かれるくらい、浮いていた。
どうやら、近寄りがたい負のオーラをまとっていたらしい。
コレも受験勉強で燃え尽きた副作用の一つだった......それ以外にも、ナニカがボクの中から出ていたのかもしれないけど。
おかげで近寄って来る奴らは、どいつもこいつもイカツイ顔をしていた。
......まあ所詮、我が校のコワイお兄さんなんて、大した事はないんだけど。
それでも集まると、独特な威圧感をかもし出す集団の一角を、いつしかボクが、担うことになってしまっていたのだった。
小学校では女子もどき。
中学校では勉強仙人。
高校では愚連隊の宇宙人。
振り返って見ると、我ながら「キャラ変激しいな」とは思う。
でも、どのキャラも、ボクがそう成りたくて成ったワケでは無いので、仕方ないかな。
初めての行事はどれも楽しかった。一年生だけで行った、青少年公園の宿泊学習は面白かった。
クラスメートの意外な面がたくさん見れたし、みんなと打ち解けられた感じがした。
1学期の体育祭は、瑞穂競技場で盛大に行われた。
学校の運動場が、校舎の建替え工事のせいで、使用不能なせいだったけど、素敵な会場で開催できて、かえって良かった。
2学期の文化祭は、前夜祭・後夜祭も含めて、三日間も行われた。
ウチのクラスの映画は、イマイチだったけど、他のクラスや先輩たちの出し物には、随分感動したものだ。
来年はもっと頑張ろうと思ったし、文化祭の運営の方にも興味が出てきた。
......そしてモンダイの事件は、3学期に起こったのだった。