㉝ 村田京子の介入
村田さんは、周りの空気を凍らせながら、一歩ずつ歩み出てきた。
どうやら、空気中の水分を凍らせるのが、彼女の能力のようだった......氷雪系って事かな。
因みに久保帯人先生の「ブリーチ」の連載開始は2001年の事である。
日番谷冬獅郎ってカッコイイよねえ。
って、ボク、村田さんの、そんなチカラのこと、全然知らなかったぞ!
「あら、意外と驚かないんですね?」
村田さんは、そう言いながら、用心深く左右の雪子さんに目線を投げかけた。
最早いつものような笑顔はそこには無い。
むしろ目を見開いて睨みをきかせている。
そこに居るのは、ボクの知らない村田さんだった。
「やっぱり、並行世界の神たるアナタたちには、何でもお見通しなのかしら?」
ああ、それもう、悪のラスボスのセリフだよぉ。ボクはドキドキした。
「イヤ、驚いてイル」「いや、驚いている」
二人の雪子さんは同時に言った。
実際、充分に驚いた顔をしていた。
「では、単刀直入に言わせていただきます。今すぐ、その迷惑なひとり相撲をやめて、疑似二重人格を解消してください。できなければ、この場でお二人とも、強制終了して差し上げます。私の能力は、半径25m以内の範囲の水分を、瞬時に凍らせるチカラ。因みに、この能力は、対象の体内の血液にも有効です」
「ワカッタ」「わかったわ」
二人の雪子さんはまた同時にそう言うと、まず溜めていたチカラを解放した。
バラバラと音を立てて、瓦礫などがあたりの地面に散らばる。
そして本人たちも、空中からそれぞれの地面に戻った。
次にゆっくりと二人は歩み寄って行った。
ちょうどボクと村田さんの中央あたりで顔を突き合わせた二人。
向かい合ったまま、お互いの両手をつなぎ合わせると、二人は静かに光った。
うん?......ちょっと待てよ?反物質と物質がぶつかると、対消滅するんじゃ......!こりゃヤバイぞ!
......しかし、ありがたいことに、そんなことにはならなかった。
あの白い雪子さんは、反物質では無かった......という事なのかな?
話を元に戻そう。
光った二人は次の瞬間、一人の雪子さんになった。
白でも黒でもない。いつもの紺色のセーラー服だ。
「いや、迷惑をかけてすまない。雪村に関わっているうちに、私としたことが、すっかり冷静さを失っていたようだ」
何だかやけに素直な雪子さんに、ボクはちょっとだけ違和感を感じていた。
「京子くんがそれほどのチカラを持っているなら、今後はキミに、雪村の守護を任せてもよさそうだな」
「ええ、よろしくてよ......」村田さんが応じた。
「......だからあなたは安心して。早く自分の時空に戻って、仕事をなさい。御多忙なんでしょ?」
「言われるまでもない」
雪子さんは少し寂しそうに笑った。
くるりと回れ右をして、東に向かって歩き出した雪子さんだったが、ふと立ち止まった。
そして「でも、やっぱり、たまには覗きに来るかも」と言って舌をペロリと出した。
何年後かに流行る「テヘペロ」ってこんな感じかな?
そしてそのまま今夜も煙のように消えて行った。
「......さてと」
そう言うと、村田さんは真っすぐこちらに向かって歩いてきた。
「全部そこで見ていたのでしょう?雪村君」
月明りの下で見る、村田さんの妖艶な笑顔は、ちょっと怖くて、まるで何だかアレみたいだった。
......アレだよ、アレ。 雪女!
そう、彼女こそが、ホンモノの雪女だったのだ。