
㉜ 巡り逢う者たち⑵
「あなたはだあれ?なんて今さら訊くのも無粋な事よね」 漆黒の制服の雪子さんは言った。「最初から解っていたわ。あんなに私の心に響く、素敵なお手紙を書ける人物なんて、私自身しか居ないものね?」 すると白い制服の雪子さんが口を開いた。「ワタシはアナタ。アナタはワタシ。ワタシたちは表裏一体」 まるで洞窟の中で聞くような、ヘンな響き方をする声だった。「そうよね」 黒い制服の雪子さんが応じた。「いつかこうなる事は、充分予測できたはずだったわ。私としたことが、うかつだった」「ワタシは陰、アナタは陽」「ワタシは虚、アナタは実」「ワタシは影、アナタは光」「ワタシはマイナス、アナタはプラス」 虚ろな目をした白い制服の雪子さんが喋り続ける。「......ワタシはタマゴ、アナタはニワトリ」「いいえ。その見解には、異議あり、よ」 黒い制服の雪子さんが口をはさむ。「私とあなたは、どちらも同時に生まれた。だからどちらも同じニワトリなのよ」「......同じ?」「この時空での、私の数々の行いが、あなたを実体化させた......もともとは、私もあなたも一つの精神体。そうよね?」 問われた白い雪子さんは黙っている。「私と同じ能力を持つあなたにとっては、私と同じように、この時空の過去も未来も、並列に扱える......だから、あなたは赤ん坊の雪村に手を下せた」「......」「でもあなたが私なら、なぜ雪村の命を執拗に狙うの?」 その問いに対して、白い雪子さんが答える。「ブツリ的ボディを消滅させなければ、アカシック・レコードに手が届く高次元のセイシン体にはなれない。......自殺はダメだが、ジコ死やビョウ死なら良い。だからワタシが、早くユキムラのブツリ的ボディを壊して、その精神体をジユウにする」「なるほど。マッド・サイエンティストの私らしい見解だわ」 黒い制服の雪子さんは鼻で笑った。「でもだめ。私は雪村に、物理的ボディの限界まで、生きてもらうって決めたの」「ナゼ?」 白い制服の雪子さんが尋ねる。「それが雪村の幸せだからに、決まっているからじゃないの」 答える黒い制服の雪子さん。「ブツリ的ボディは年齢とともにレッカする。......ゆえにブツリ的ボディは不自由。......ワカラナイ。その意見にはサンドウできない」「どうやら平行線ね?それじゃあ、あなたの希望どおり、決着を着けるしかないようね。......まったく、とんだ deus ex machina だわ」 そう言うと、おもむろに黒い制服の雪子さんは、チカラを溜め始めた。 彼女の周りの、たくさんの瓦礫や小石が、ゆっくりと浮いていく。 それらが、彼女を中心にして、グルグル回りながら、宙を舞い始めた。 そして彼女自身も、二つのお下げ髪を揺らしながら、ゆっくりと空中に浮かび始めた。 すると、まったく同じ事を、白い制服の彼女も始めるのだった。 二人のチカラと意地のぶつかり合いが、今、まさに始まろうとしていた。 気がつくと、春の深夜だというのに、大気が熱くなっていた。 一触即発のその瞬間、ボクの居る場所から見て正面の暗がりから、突然、強い冷気を感じた。そして......。「お姉さま方。茶番は、そこまでにしていただけるかしら?」 冷気の主が言った。 目の前の闇の中から姿を現した第三の人物は、スレンダーな身体に、黄色いワンピースを身に纏った、髪型は前下がりのボブカットの......。 ソレはボクが良く知ってい、るあの少女だった。 そう、彼女は村田京子だ。

㉜ 巡り逢う者たち⑵
「あなたはだあれ?なんて今さら訊くのも無粋な事よね」 漆黒の制服の雪子さんは言った。「最初から解っていたわ。あんなに私の心に響く、素敵なお手紙を書ける人物なんて、私自身しか居ないものね?」 すると白い制服の雪子さんが口を開いた。「ワタシはアナタ。アナタはワタシ。ワタシたちは表裏一体」 まるで洞窟の中で聞くような、ヘンな響き方をする声だった。「そうよね」 黒い制服の雪子さんが応じた。「いつかこうなる事は、充分予測できたはずだったわ。私としたことが、うかつだった」「ワタシは陰、アナタは陽」「ワタシは虚、アナタは実」「ワタシは影、アナタは光」「ワタシはマイナス、アナタはプラス」 虚ろな目をした白い制服の雪子さんが喋り続ける。「......ワタシはタマゴ、アナタはニワトリ」「いいえ。その見解には、異議あり、よ」 黒い制服の雪子さんが口をはさむ。「私とあなたは、どちらも同時に生まれた。だからどちらも同じニワトリなのよ」「......同じ?」「この時空での、私の数々の行いが、あなたを実体化させた......もともとは、私もあなたも一つの精神体。そうよね?」 問われた白い雪子さんは黙っている。「私と同じ能力を持つあなたにとっては、私と同じように、この時空の過去も未来も、並列に扱える......だから、あなたは赤ん坊の雪村に手を下せた」「......」「でもあなたが私なら、なぜ雪村の命を執拗に狙うの?」 その問いに対して、白い雪子さんが答える。「ブツリ的ボディを消滅させなければ、アカシック・レコードに手が届く高次元のセイシン体にはなれない。......自殺はダメだが、ジコ死やビョウ死なら良い。だからワタシが、早くユキムラのブツリ的ボディを壊して、その精神体をジユウにする」「なるほど。マッド・サイエンティストの私らしい見解だわ」 黒い制服の雪子さんは鼻で笑った。「でもだめ。私は雪村に、物理的ボディの限界まで、生きてもらうって決めたの」「ナゼ?」 白い制服の雪子さんが尋ねる。「それが雪村の幸せだからに、決まっているからじゃないの」 答える黒い制服の雪子さん。「ブツリ的ボディは年齢とともにレッカする。......ゆえにブツリ的ボディは不自由。......ワカラナイ。その意見にはサンドウできない」「どうやら平行線ね?それじゃあ、あなたの希望どおり、決着を着けるしかないようね。......まったく、とんだ deus ex machina だわ」 そう言うと、おもむろに黒い制服の雪子さんは、チカラを溜め始めた。 彼女の周りの、たくさんの瓦礫や小石が、ゆっくりと浮いていく。 それらが、彼女を中心にして、グルグル回りながら、宙を舞い始めた。 そして彼女自身も、二つのお下げ髪を揺らしながら、ゆっくりと空中に浮かび始めた。 すると、まったく同じ事を、白い制服の彼女も始めるのだった。 二人のチカラと意地のぶつかり合いが、今、まさに始まろうとしていた。 気がつくと、春の深夜だというのに、大気が熱くなっていた。 一触即発のその瞬間、ボクの居る場所から見て正面の暗がりから、突然、強い冷気を感じた。そして......。「お姉さま方。茶番は、そこまでにしていただけるかしら?」 冷気の主が言った。 目の前の闇の中から姿を現した第三の人物は、スレンダーな身体に、黄色いワンピースを身に纏った、髪型は前下がりのボブカットの......。 ソレはボクが良く知ってい、るあの少女だった。 そう、彼女は村田京子だ。
