ep.227 風を追い越す味、エトス・デリバリー
炭酸と温泉、そして絶品グルメ。もはや「村」というより「超高級リゾート」化してきたエトスフェリア。 この贅沢な暮らしを維持するためには、より多くの物資と情報が必要です。
咲姫は「この美味しいソーセージとソーダを、もっと遠くの人にも届けて、代わりに珍しい食材を持ってきてもらうのです!」と、『エトス・デリバリー(郵便)』を立ち上げます。
そこで活躍するのは、ミナが手懐けた「風に乗る鳥たち」か、あるいはレンが作った「滑走する地下トロッコ」か......。
【本文】
炭酸ソーダと焼酎、そして揚げたてポテチの味を知ってしまった来訪者たちは、村へ帰るなりその感動を触れ回りました。結果、エトスフェリアには注文が殺到。
「咲姫さん、もう限界です! 表の道だけじゃ、ポテチを運ぶ馬車が渋滞して、届く頃には湿気っちゃいます!」 測量士のレンが悲鳴を上げました。
「それは一大事なのです! ポテチの『パリッ』を失うのは、エトスフェリアの敗北なのです!」 咲姫は0番倉庫の真ん中で、うさちぁんと一緒にポテチを頬張りながら立ち上がりました。
【エトスフェリア・超速流通システム】
ミナの「もやい空路」: ミナが丈夫な麻糸とテトの防水布を使い、丘から麓の村々まで、空中に巨大な「ロープウェイ(滑走線)」を張り巡らせました。
ガラムの「石の弾丸カプセル」: ガラムは、中が真空で保温・保冷に優れた「石製カプセル」を開発。これにソーセージやソーダを詰め込みます。
咲姫の「炭酸ブースター」: 咲姫は地下の「炭酸貯水庫」に溜まった圧力を利用し、カプセルを空中のロープウェイへ向かって大砲のように射出するシステムを作りました。
「いいですか、炭酸のシュワシュワは、飲み物だけじゃないのです。カプセルを飛ばす『背中の押し役(加速装置)』にもなるのです!」
ドォォォォン!! 炭酸の圧力で打ち出されたカプセルは、ミナのロープウェイを滑走し、わずか数分で麓の村へ。 受け取った村人たちは、まだ熱々のソーセージと、炭酸の抜けていないキンキンのソーダに驚愕しました。
「届いたのです! これがエトスフェリアの『風の便り(物理)』なのです!」
この流通網により、エトスフェリアには代金代わりの「各地の珍味」や「魔法の鉱石」が、カプセルの帰還便として続々と集まるようになりました。 しかし、あまりに効率よく「美味しい」が拡散したせいで、その評判はついに、この地方を治める「王国の食糧管理官」の耳にまで届いてしまいます。
「......許可なくこんな美味いものを作り、独自の流通網を築くとは。一体、どんな恐ろしい軍事拠点が築かれているのだ?」
そんな誤解を招いているとは露知らず、咲姫は「次はカプセルの中にうさちぁんを乗せて、お酒の出前に行かせるのです!」と、さらなるカオスを計画していました。
本道、地下道、そして空を翔ける炭酸ブースター。三つの道が完成しても、咲姫の「運びたい欲」は止まりませんでした。
「甘いのです! 空も地表も地下も、まだまだ余裕があるのです! 美味しいものは、どんなルートからも攻めてくるべきなのです!」
「レンさん、空路(もやい空路)を滑るだけじゃ、遅すぎてアイスが溶けちゃうのです! 必要なのは、お尻をペンッ!と叩くような、爆発的な『一押し』なのです!」
咲姫の視線の先には、先ほど完成したばかりの「炭酸貯水庫」地下から吸い上げられた天然炭酸の圧力が、タンクの中で「出してくれー!」と暴れています。
【第三の道:炭酸ブースター・カタパルト】
炭酸の圧力加速: ガラムが作った「石の弾丸カプセル」を、ミナのロープウェイの起点にある「射出筒(カタパルト)」にセット。そこに、地下の貯水庫から引いた高圧炭酸ガスを一気に流し込みます。
咲姫の「追い風魔法」: 「うさちぁん、カプセルさんの背中を押してほしいのです!」 咲姫が祈りを捧げると同時に、カプセル後部から炭酸が爆発。シュパァァァン!!という小気味よい音と共に、カプセルはロープウェイを摩擦ゼロで滑走し、目にも留まらぬ速さで空を翔け抜けていきました。
炭酸ミストの雨: カプセルが通った後の空路には、微細な炭酸の霧が残り、エトスフェリアの空には常にキラキラした「虹」がかかるようになりました。
「これで、どんなに遠くの村でも、キンキンに冷えたトマソーダと熱々のソーセージが、最短3分で届くのです!」
カプセルが時速100キロを超えて飛んでいく様子を見て、レンは「......あれ、人が乗ったら気絶しますよね?」と震えていましたが、咲姫は意に介しません。
「次は、カプセルに『炭酸の香り』をつけて、届いた瞬間にパカッと開いて『いい匂い!』ってなる演出をつけるのです!」
【第四の道:精霊トロッコ「エトス・エクスプレス」】
咲姫は地下道のさらに深層に、輝く魔力のレールを敷き詰めました。 「火の魔法で爆発させて、水の魔法で滑らせて、風の魔法で追い風を吹かせるのです!」 ガラムが作った頑丈な鉄の箱(トロッコ)に、咲姫が召喚した小さな精霊たちが乗り込みます。 「出発進行なのです!」 ボォォォン!という推進音と共に、トロッコは上り坂も下り坂も関係なく、物理法則を無視した超スピードで地下を駆け抜け、各施設(0番倉庫から温泉、居住区まで)を数秒で繋ぎました。 「......嬢ちゃん、これ、運転手の精霊たちが楽しんじまってるぞ」とガラムも呆れるほどの爆走っぷりです。
【第五の道:大樽流し「リバー・バイパス」】
さらに咲姫は、かつて魚を獲ったあの川に目を向けました。 「お船を出すのは面倒なのです! お酒もお野菜も、樽に詰めて川にポイッなのです!」
ハクの育てた野菜やうさちぁん用の焼酎を、ガラム特製の「完全防水・耐衝撃大樽」にパイルダーオン。 それを川に流すと、咲姫の魔法で水流が意志を持ったように樽を運び、下流の村の受け取りポイントへ正確に届けられる仕組みです。 「受け取り損ねたら、お魚さんが食べてくれるから無駄がないのです!」 「......無駄しかないだろ!」というリオのツッコミも、川のせせらぎに消えていきました。