ep.283 地下500メートルの革命。メイド・サヤの丁寧なる攪拌
エトスフェリア、0番倉庫・地下500メートル。
超硬度の防壁に囲まれた「特一級・機密指令所」に、テラの氷点下の声が響き渡る。
「...非効率の極致。論理的崩壊。咲姫様、ここを『隔離施設』として
提供した私の厚意を、砂粒一つ分でも理解していらっしゃいますか?」
コンソールを操作するテラの周囲には、怒りのあまり物理的な吹雪(ブリザード)
が舞っている。だが、その極寒の空間へ、温かな湯気を纏った一人のエルフが
「しれっと」現れた。扉を開ける音も、気配すらもなく。
「テラ様、お部屋の温度が下がりすぎておりますね。
精密機器が結露してしまいますので、怒りはこのあたりになさってください」
咲姫専属メイド、サヤ。
揺れるエルフの耳と、隙のないメイド服。彼女は今さっきまで数百キロ離れた
茶葉の保管庫にいたはずだが、何食わぬ顔で咲姫の傍らに控えている。
「咲姫様。広い拠点を歩くのがお嫌いでしたら、いっそ『世界をこちらへ呼ぶ』
のはいかがでしょうか。空間を丁寧に馴染ませれば、可能ですわ」
「サヤ、それなのです! さすが私のサヤなのです!」
「ありがとうございます。では、うさちぁん様。準備をお願いしますね」
サヤが手渡したのは、隕石を極限まで圧縮して作られた特製シェーカー。
うさちぁんがそれを剛腕で握りしめ、咲姫が伝説の茶器を構える。
「いくよぉ咲姫ちゃん! 宇宙の果てまで、しっかりシェイクしちゃうよぉ!」
「混ぜるのです! 世界を美味しく点てるのです!」
――ズガガガガガッ!!
咲姫の「茶器点て」と、うさちぁんの「音速シェイク」が炸裂した瞬間、
指令所のアンティーク調の飾り棚が、衝撃で粉々に砕け散った。
サヤの瞳が、一瞬だけ鋭く細められる。
「...あらあら。うさちぁん様、元気があってよろしいですね。
後でお掃除、しておきますね」
微笑むサヤ。だがその内側では、3年に一度の「大爆発」に向けた
カウントダウンが静かに、確実に進んでいた。
「...ッ!? 空間位相が液状化していますわ! 座標が...因果律が...!
サヤ! あなた、しれっと水源地から戻ってこないでください!
メイドの特殊能力で物理法則をショートカットするのは規約違反ですわよ!」
絶叫するテラを横目に、サヤは空間の裂け目をハンカチでサッと拭う。
「まあ、少し散らかってしまいましたね。
テラ様、計算は私が引き受けますので。咲姫様が転ばないよう、
この『空間のシワ』を今すぐアイロンがけして整えてしまいますね」
サヤの指先が虚空をなぞるたび、ぐちゃぐちゃだった空間が、
整然とした「どこへでも通じる回廊」へと強制的に整頓されていく。
それは、テラの論理さえも超越した、メイドとしての「至高の整理整頓」であった。
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【創の章:進捗状況 1/10】
・サヤ:咲姫専属メイド。一度見た場所なら「しれっと」移動できるチート持ち。
・テラ:サヤの非論理的な移動に激怒するが、メイドの気遣いで煙に巻かれる。
・うさちぁん:シェイクの余波でサヤの私物を壊し、生存フラグが危うくなる。
・サヤの怒りゲージ:[■□□□□□□□□□](10%:まだ微笑みの範囲)
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