ep.385 湿地の埋没屋敷、あるいは超新人の「独立」
「にゃうにゃあ! 水上、水中と来れば、次は地中......いえ、『泥中』なのです! この星系の地質を最大限に活かした、湿地帯埋没型社宅を建設するのですー!!」
咲姫が指揮棒を振るった先には、餡子熊王の浮島や猫二の沈島が浮かぶ湖へと泥水が流れ込む、広大な湿地帯が広がっていた。そこは、一歩足を踏み入れれば膝まで埋まる底なしの泥濘(でいねい)である。
「......さらっと。超新人様の社宅兼、撮影用セット『泥濘の檻』の建設を開始します
構造:湿地帯に巨大な穴を掘り、そのまま建物を埋める「埋設型」
天然設計:湖へ繋がる水路の途中に位置するため、増水時には天然の泥流が室内に流れ込むスリルを完備。
運用:20時の日没後に建設作業を行い、22時の日付変更までに「居住可能な状態」に整えていただきます」
「な、なんで私だけ泥の中なんですかー!? せめて、せめて水のない乾いた地面を掘らせてくださいよぉぉ!!」 超新人が泣きながらスコップを振るうが、掘れば掘るほど周囲から茶褐色の泥水が溢れ出し、せっかく掘った穴を埋めていく。
「あはは、いい泥だねぇ~。はい、これ現場専用の『超強力泥落とし石鹸』さぁ 。特別価格で 石貨50NkQ(初心者依頼報酬分)でいいよぉ~ 。君の時給は 木貨3NkQ だから、だいたい17時間くらい働けば1個買える計算だねぇ~ 」 うさちぁんが、パン1個が1NkQ という物価を無視した暴利価格で、泥まみれの超新人に微笑みかける。
「17時間労働して石鹸1個!? 身体を洗ったらパンも食べられないじゃないですかー!!」
「......ふむ。泥に塗れた新人。これまた演出的に『極(Kiwami)』だ。......ズズッ」 餡子熊王は、遠くの浮島から望遠鏡で超新人の苦行を眺め、満足そうに餡子を啜っている。
「やぁやぁ超新人さん!泥は肌に良いと言いますからね!最高の泥パック三昧じゃないですか!」ポジティブ兎のぽぷらんが、西洋区画から運んできたレンガを泥の中に放り込むたび、超新人の顔面に茶色の飛沫が舞い上がる。その横では、天然の鷲獣人が「あ、そこにお洗濯物を干すと泥染めになりますよ?」と的外れなアドバイスを送っていた。
「にゃうにゃあ! 泣いている暇はないのです!22時までに屋根を付けないと、今夜の寝床はただの沼なのですー!!」
「......さらっと。超新人様、安心してください。泥水で流された場合の救助費用は、銅貨100NkQ(中級依頼報酬分)のツケで承ります」「助けてもらうだけで中級魔法(100NkQ)を覚えるのと同額の借金が重なるニャーー!!」猫二総務部長の叫びが、湿地帯の泥を震わせ、超新人の絶望をより深く埋めていった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
咲姫(総監修):湿地帯に家を埋めるという狂気のデザインを強行。超新人の生活を「TRANSFORM」する。
超新人:時給3NkQ(酒1杯分)で自らの「沼の家」を掘る。石鹸1個を買うために、ほぼ2日分の不眠不休労働を強いられる。
うさちぁん:初心者依頼報酬(50NkQ)と同額の石鹸を売りつけ、経済的な死へ追い込む。
猫二(総務部長):自分の沈島も大概だが、超新人の「沼」を見て、白金貨(100,000NkQ)の負債を抱えた仲間意識を感じ始める。
鷲獣人の女性:天然ゆえに、超新人の泥沼生活を「風流な染色工房」と勘違いしている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━