ep.331 お粥の匂いと、泥だらけの誓い
「立て! 15エトスの価値しかないお前らに、地面を這っている暇などない!」 騎士の怒号が、夕暮れの遺跡に響き渡る。 新人、サヨ、アリスの三人は、怪獣たちが演出のために「わざと」ヌルヌルに磨き上げた泥の床で、何度も転倒しながら立ち上がっていた。
「はぁ...はぁ...。騎士さん、これ...本当にヒーローの訓練なんですか...?」 芯の強いアリスが、泥に汚れた顔を拭いながら問う。その横で、クールなはずのサヨも耳を垂らし、荒い息をついていた。
「そうだ。怪獣に叩きのめされ、泥水を啜り、それでも最後に『守るべきもの』のために立ち上がる...。その姿こそが、咲姫様が最も高値を付ける【絶望の逆転劇】の序盤(プロローグ)だ」
怪獣リーダーが、腕を組んで頷く。 「いいか。お前らの時給は、咲姫様が『エモい!』と思った瞬間にしか跳ね上がらねえ。そのためには、一人のピンチを他の一人が支える『友情の絵面』が必要なんだよ!」
その時、サヨの足が泥に滑り、倒れそうになる。 「あっ...」 「サヨちゃん!」 アリスが咄嗟にその手を掴み、自分も泥まみれになりながらサヨを支えた。二人の距離が重なり、互いの体温と、泥の冷たさが混ざり合う。
「...ありがとうございます、アリスさん。...少し、温かいですね」 「うん...。でも、お互い泥だらけだね」 二人が少しだけ微笑み合った瞬間、騎士が非情なストップウォッチを鳴らした。
「今のだ! その『泥だらけの抱擁』をキープしろ! サヤ、撮影だ! 咲姫様に送信しろ!」 「ささっと。...送信完了。ボーナス査定、12エトス加算されました。...ささっと」
「12エトス...! これで、今日はお粥に『ネギ』を入れられるわ!」 新人が歓喜の声を上げる中、モニターの向こうで咲姫が鼻血を抑えながら悶絶していた。
「にゃうにゃあああ! これなのです! 苦難の中で芽生える少女たちのぬくもり...! 怪獣くん、グッジョブなのです! 次は...次はもっと、顔を近づけて励まし合うシーンが欲しいのですー!」
うさちぁんは、三人の健気な姿を肴に、サヨが隠し持っていた「エルフの保存食(ドライフルーツ)」をつまみ食いしていた。 「あはは、友情って美味しいねぇ~。ねぇ、次はもっとこう...『切なさ』をトッピングしてみない?」
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【興の章:進捗状況 3/8】
咲姫:私財が尽きたショックを「百合の栄養」で補完し始め、自家発電(妄想)モードに突入。
うさちぁん:三人の絆が深まるほど酒が美味くなると確信。サヨのクールな表情が崩れる瞬間を虎視眈々と狙う。
サヤ:「ささっと」友情シーンに広告を挟み込み、さらなる収益化を狙う。
アリシア:「さらっと」アリスとサヨの共同生活を「経費削減のための相部屋(ただし一部屋一畳)」として承認。
わんわん:「さくっと」二人が寄り添いやすいよう、遺跡の気温を少しだけ下げる「お節介な空調管理」を実施。
果林:「くいっと」サヨの泥まみれの姿に、「...エルフの誇りはどこへ行ったのかしら」と呟きつつ、風呂の準備をしてあげる。
猫二:常務取締役として、「もっと照明を落として、エモい影を作るニャ!」と怪獣たちに演出指示。
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