ep.343 新婚旅行(強制)あるいはネギの黙示録
「...さらっと決定事項です。騎士様、およびその『ご家族』の皆様。本日より一週間の新婚旅行...もとい、福利厚生という名の過酷な外貨稼ぎツアーへ出発していただきます」 アリシアが、冷徹な事務作業のスピードで航空券(片道)を騎士の胸元に叩き込んだ。
「にゃうにゃああ! 脳が、脳がもう限界なのですー! 甘酸っぱい百合が見たかったのに、現実は脂ぎった家族経営なのですー!!」 咲姫は脳みそがショートし、焦点の合わない目で叫んだ。「サヤ! アリシア! 砂糖! 砂糖を持ってくるのです! 甘いお菓子を作って、この現実をコーティングするのですー!!」
その命を受け、サヤとアリシアが「ささっと」大量のクッキーとケーキを焼き上げる。しかし、それをタダで配るほどNUCは甘くない。
「さあさあ、新婚さんいらっしゃい! 門出を祝う『ハネムーン・スイートセット』だよ! 騎士、家族が増えたんだから奮発しなさいよ!」 果林が、いつの間にやらわんわんを従え、焼き立ての菓子を騎士の前に積み上げた。 「はい、新婚旅行セールで4.3倍価格ね! 払えないなら出世払い、金利は28%よ!」
「あはは、お菓子にはやっぱりお酒だよねぇ~。これは特別に、定価の2.1倍という『お得意様価格』で出しちゃうよぉ。安いねぇ~」 うさちぁんが、ここぞとばかりに「安さ(錯覚)」を強調して、騎士の膝元に酒瓶を並べていく。売上はすべて、アリシアの手によってギルドの回転資金へと吸い込まれていった。
「...騎士さん、あーんしてください。新婚旅行、楽しみですね」 「...騎士さん、ローンの返済計画、旅行中に詰めましょうね」 サヨとアリスの重圧に挟まれ、騎士は4.3倍の価格がついたクッキーを砂のような味で噛み締めた。
一方その頃。 家族の輪からも、高額なセールからも完全に忘れ去られた新人は、廊下の隅で一本のネギと対峙していた。
あまりにもネギを齧りすぎ、ネギのことだけを考え続けた結果、彼の脳内に「声」が響き始めた。 『...聞こえるか、16エトスの若き戦士よ...。お前が掴んだのは、ただの野菜ではない...』
「...え? ネギが...喋った?」 新人の瞳からハイライトが消え、代わりに青々としたネギのような光が宿る。 「...そうか。家族も、愛も、4.3倍のクッキーも、すべては『偽り』真実は、この泥の中から立ち上がる一筋の繊維にこそあるんだ...」
新人が静かに立ち上がった瞬間、その背後にネギの形をしたオーラ(精霊)が揺らめいた。 誰もいない廊下で、史上最強の「ネギ特攻隊長」が誕生した瞬間であった。
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【転の章:進捗状況 7/8】
咲姫:糖分を摂取しすぎて一時的に落ち着くが、高額な菓子代が自社買い(経費)にならないことに気づき、再び発狂。
うさちぁん:2.1倍価格で「安い」と思わせる高度な心理戦を展開。騎士の財布を最後の一滴まで絞り取る。
騎士:4.3倍のケーキを無理やり食べさせられ、30年ローンを抱えながら、家族(物理的な重圧)と共に未知の惑星へ飛ばされる準備が整う。
新人:ついに「ネギの精霊」と交信。家族枠から外された孤独が、彼を未知の覚醒へと導く。
果林 & わんわん:新婚旅行セールで大儲け。売上をアリシアに献上し、ギルドの黒字を盤石にする。
アリシア:「さらっと」騎士の旅行先を、最も過酷な紛争地帯に設定。旅費を浮かせつつ、戦利品を狙う。
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