ep.290 業の浄化。銀河の洗濯処と消えない火種
箱庭宇宙から収穫された「星のハーブ」と「結晶の涙」それらを前に、咲姫は当初考えていた『全自動・運命浄化槽』の仕様を「わがまま」で書き換えた。
「テラちゃん、嫌な記憶まで消すのはやりすぎなのです! 悲しいことも、サヤに怒られたことも、大事な思い出なのです!」
「...。咲姫様にしては、随分と哲学的な配慮ですわね。論理的にも、個人のアイデンティティを損なう洗浄は推奨されませんわ」
そこで創造されたのは、対象の「不浄」だけを狙い撃つ究極の概念装置だった。
「いくよぉ! 汚れだけを次元の彼方にシェイクして、魂の輝きはそのままに残しちゃうからねぇ!」
うさちぁんがシェーカーを激しく振り、咲姫が茶器から溢れる光で空間を「洗濯板」へと変質させる。
【生産品:銀河の洗濯処(ぎんがのせんたくじょ)】
・仕様:物理的な汚れ、疲労、病原菌のみを完璧に分解。
・記憶維持:嫌な記憶も後悔も、本人が望む限り「経験」としてそのまま保持される。
・副次効果:あまりの心地よさに、一時的に全ステータスが向上する。
「あらあら、これは素晴らしいですね。サヤ様、さっそく試してみましょうか」
アリシアが「できる秘書」らしく、疲労困憊のテラと、多忙なサヤを装置へと促す。
まばゆい光を通り抜けた瞬間、サヤのメイド服は新品以上の輝きを取り戻し、テラの隈は一瞬で消失した。しかし――。
「...ふふ。身体はとても軽やかです。ですが...うさちぁん様。鉢植えを割られた時のあの『感覚』は、今も鮮明に私の中に刻まれていますよ?」
サヤが、ピカピカの笑顔のまま「どす黒いナニカ」を背負って微笑む。
「ヒィィ! 汚れは落ちてるのに、怒りゲージだけが全く減ってないよぉ!!」
うさちぁんの悲鳴が響く。アリシアがバインダーにさらさらと追記する。
「メモ:サヤ様の怒りは『汚れ』ではなく『魂の情熱』に分類されるため、洗浄不可...ですね」
「...。私のキャッシュは掃除されましたが、サヤ様の殺気で結局計算が狂いますわ...」
テラが再び真っ白になる中、咲姫だけが「みんなピカピカなのですー♪」と無邪気に喜んでいた。
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【創の章:進捗状況 8/10】
・咲姫:「汚れ」と「記憶」を分ける高度な生産チートを成功させる。
・サヤ:全身ピカピカになるも、怒りゲージ(20%)は概念的に固着しており洗浄不能。
・うさちぁん:装置の性能に感動するが、サヤの怒りが消えないことに絶望。
・アリシア:サヤの怒りを「情熱」と定義し、事務的に処理する。
・テラ:身体の疲れは取れたが、精神的苦労は洗濯できないことを悟る。
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