ep.289 名刺サイズの宇宙門。アリシアの事務的発見
五色の「五神の虚空ポーチ」を手に入れ、鼻息荒く実験室の箱庭宇宙へ乗り出した咲姫。だが、目の前に浮かぶ巨大な「わたあめ惑星」を前にして、彼女はポーチの入り口と星のサイズを交互に見比べ、ピタリと止まった。
「......テラちゃん。これ、入らないのです。私のわがままが名刺サイズに拒絶されているのです!」
「当然ですわ。容量は無限でも、搬入口は物理的な名刺サイズ。惑星をそのまま飲み込めるはずがありませんわ」
テラが「これで作中の物理崩壊が食い止められる」と、今日一番の安堵の溜息をついた。しかし、その横で緑のポーチを弄っていたアリシアが、たぬき耳をピコピコと動かしながら「あらあら?」と声を上げる。
「咲姫様、これ、物理的な形にこだわる必要はないみたいですね。例えばこの分厚い報告書ですが......」
アリシアが、本来なら折り畳まなければ入らない数百枚の書類束をポーチの口に近づける。すると書類が口に触れた瞬間、まるで次元が「折り畳まれたと認識」したかのように、シュルリと吸い込まれていった。
「『折り畳めるもの』『圧縮できるもの』だとポーチが自動選別(オートソート)で認識すれば、わざわざ畳まなくてもそのまま吸い込んでくれるようですね。さすが、できる秘書(じむばんのう)仕様です」
「じゃあさ、惑星も私が空間ごとシェイクして、マシュマロみたいにフニャフニャに折り畳んじゃう?」
うさちぁんが凶悪な笑顔でシェーカーを構えるが、咲姫が慌ててそれを止めた。
「ダメなのです! よく見たらこの星、ドクトクと鼓動が聞こえるのです。惑星も生きてるのに、無理やり畳んでポーチに閉じ込めるのは可哀想なのです!」
咲姫の「命へのわがまま」により、惑星そのものの収納は即座に禁止された。
「......咲姫様。では、私が『ささっと』星の実りだけを摘んでまいりましょうか」
「あら、サヤ様。それなら私のポーチの設定を書き換えますね。星本体はそのままに、熟した果実や希少な鉱石だけを『折り畳み対象』として自動回収するようにいたします」
アリシアがペンを走らせると、緑のポーチが掃除機のように、星を傷つけることなく「余剰資源」だけを名刺サイズの門から吸い込み始めた。
「......。......。物理的制約という私の最後の希望を、アリシア、あなたの事務能力が粉砕しましたわ」
絶望するテラを余所に、金色のポーチには最高純度の「星の素材」が山のように積み上がっていく。
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【創の章:進捗状況 7/10】
・咲姫:惑星を「生き物」と認め、まるごと収納を禁止。素材だけを集める慈愛の創造主。
・アリシア:ポーチの「自動選別(オートソート)」機能を発見。事務効率が神の領域へ。
・うさちぁん:惑星をシェイクする気満々だったが、咲姫に止められ少し残念そう。
・サヤ:アリシアと連携し、星を傷つけない「精密お取り寄せ」を完遂。
・テラ:アリシアの有能さが、自分の論理的障壁を次々と突破していくことに戦慄。
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