ep.291 不垢のパン。清浄なる食卓
咲姫は、先ほど完成した『銀河の洗濯処』を見上げながら、新たなわがままを閃いた。
「テラちゃん! せっかく綺麗になっても、パンを食べて口の周りが汚れたり、うっかり床に落としてパンが汚れたら台無しなのです! だから、最初から『汚れることを拒絶するパン』を作るのです!」 「...。不衛生な汚れを嫌うのは理解できますが、食品に対して『拒絶』の概念を付与するのですか?」
呆れるテラを余所に、咲姫とうさちぁんが再び実験室の釜を回し始めた。
「いくよぉ! 汚れという汚れを弾き飛ばす『清浄』の概念、特盛りでシェイクしちゃうよぉ!」 「点てるのです! どんな不純物も寄せ付けない、純粋なるパンなのです!」
うさちぁんがシェーカーで「撥水・撥油・撥混沌」の理を混ぜ合わせ、咲姫が星の素材を練り上げる。
【生産品:聖域の白パン(サンクチュアリ・ブレッド)】
・絶対清浄:泥の中に落としても、インクをぶっかけても、汚れが「しれっと」回避して通り過ぎる。 ・自己浄化:たとえ細菌が触れようとしても、パンの表面が概念的に「洗いたて」の状態を強制維持するため、永久に腐らない。
・味の純度:雑味という名の汚れすら存在しない、究極の小麦の甘み。
「あらあら、これは素晴らしいですね。これなら掃除の手間が省けますね」 アリシアが緑のポーチから「わざと泥がついたスコップ」を取り出し、パンに触れさせようとする。だが、泥は磁石の同極同士のようにパンを避けて地面に落ち、パンは輝く白さを保ったままだ。
「凄いのです! これでどこでもピカピカのまま食べられるのですー♪」 咲姫が喜んでパンを頬張る。しかし、サヤがその横で静かに「汚れたお皿」を片付けながら呟いた。
「...咲姫様。パンが汚れないのは結構ですが、咲姫様がこぼしたパンくずを片付けるのは私の役目です。パンくずが『汚れない』からといって、床に散らばっていい理由にはなりませんよ?」
サヤの背後に、洗浄機でも洗えなかった「怒りの情熱」が静かに揺らめく。
「ヒッ...! パンは汚れないけど、サヤの逆鱗に触れるのは変わらないのですぅ!」
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【創の章:進捗状況 9/10】
・咲姫:物理・概念的に「汚れ」を拒絶する最強のパンを生産。
・アリシア:パンが汚れを弾く性質を利用して、新たな「防汚コーティング剤」の事務的転用を検討中。
・うさちぁん:パンが汚れを弾く様子が面白くて、わざとお酒をぶっかけて遊んでいる。
・サヤ:パン自体は綺麗でも、散らかった状況を許さない「清掃の鬼」として君臨。
・テラ:パンが汚れないという特異点に対し、衛生管理の基準を書き換える。
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