ホームクラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜ep.339 大道具の盾、愛の障害物競走
← 前の話目次次の話 →

ep.339 大道具の盾、愛の障害物競走

 「逃がしませんよ、騎士さん! 里帰り用の大型馬車の予約、もう済ませちゃいましたから!」 サヨがエルフの脚力を活かし、廊下の壁を縦横無尽に蹴って猛追する。

 「騎士さん、現実を見てください! ローンの審査には本人確認が必要なんです!」 アリスが事務能力を活かした謎の執念で、背後から書類をムチのようにしならせて迫る。

 「ひ、ひいい! 怪獣リーダー、もっと飛ばしてくれ! 愛が...愛が物理的に追いついてくる!」 怪獣リーダーの太い首にしがみつき、騎士は涙目で叫んだ。

 「根性見せろ! 現場の意地でお前を家庭(檻)になんか返さんぞ!」 怪獣リーダーが重戦車のような足取りで、床に亀裂を走らせながら廊下を爆走する。

 「猫二! そこにある大道具を適当に投げろ!」 リーダーの怒号を受け、しんがりを務める猫二が、廊下に山積みされた「かつての興行の遺物」を次々と蹴り飛ばした。

 「食らうニャ! 前回の劇で使った『絶対に脱げない呪いのタキシード(書き割り)』だニャ!」 「きゃあ!? 視界が遮られる...!」 アリスが等身大のタキシードパネルに正面衝突し、一瞬足止めを食らう。

 「次はこれニャ! 『使い道不明の巨大な張りぼてネギ』だニャ!」 「...っ、これは!? 騎士さんの好物...! 粗末にはできません!」 サヨが巨大なネギを反射的に、かつ律儀にキャッチしてしまい、その自重で大きく失速する。

 その様子を、移動式バーと化した怪獣の肩で眺めながら、うさちぁんは虹色のカクテルを一口煽った。 「あはは、いいフォームだねぇ~。でも騎士くん、逃げれば逃げるほど、彼女たちの『捕まえた後の愛のプラン』が過激になるだけだよぉ~」

 「うさちぁん、不吉なこと言わないでくれ! ...おわっ!? 咲姫様、何してるんだ!」 廊下の角で、咲姫が「特攻用スモークマシン」を抱えてニヤリと待ち構えていた。

 「にゃうにゃああ! こうなったら、逃走劇のクライマックスを演出して、無理やり百合エンドに書き換えてやるのですー! 『桃色吐息スモーク』最大出力なのですー!!」

 廊下一面が濃密なピンクの煙に包まれ、一寸先も見えない。視界を奪われた騎士は、煙の中で、誰かにガシッと力強く、それでいて柔らかく手を引かれた。

 「...助かった、怪獣リーダーか?」 「いいえ、騎士さん。...捕まえましたよ(はぁと)」

 霧の向こうから聞こえたのは、サヨとアリスの、完全に同期したステレオ・ボイスだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【転の章:進捗状況 3/8】

咲姫:演出に凝りすぎて、逆に騎士を袋小路へ追い込む「致命的なアシスト」をかます。

うさちぁん:煙の中でも正確にグラスへ酒を注ぎ足す。揺れる怪獣の肩が心地よい。

騎士:ピンクの煙の中で、ついに「左右から腕をロック」される。愛のチェックメイト。

怪獣リーダー:煙で方向を見失い、なぜか新人がネギを焼いている「行き止まり」へと一直線。

猫二:大道具を投げすぎて、自分も書き割りに絡まって転倒中。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あとがきモカルドルラテ
【裏話】 昼ドラってあまり見たことないんですが(そもそもドラマは最近”相棒”ぐらいしかみてない)風の噂で聞く感じでは「愛憎劇」とか「ドロドロした」とか聞くので、それを普通状態と仮定して、その逆を行く『常識(普通)をぶっ壊す』のが咲姫ルールであり、咲姫の章のテーマになっています。 【後書き】 咲姫は一周回って致命的なダメージをくらわせます。 うさちぁんはお酒好きだね~
シェア
← 前の話
ep.338 その結婚、待ったニャ! 監獄の略奪者
次の話 →
ep.340 ネギの福音と、ガテンの咆哮
クラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜作者:モカルドルラテ
目次を見る
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホームクラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜ep.339 大道具の盾、愛の障害物競走
← 前の話目次次の話 →

ep.339 大道具の盾、愛の障害物競走

 「逃がしませんよ、騎士さん! 里帰り用の大型馬車の予約、もう済ませちゃいましたから!」 サヨがエルフの脚力を活かし、廊下の壁を縦横無尽に蹴って猛追する。

 「騎士さん、現実を見てください! ローンの審査には本人確認が必要なんです!」 アリスが事務能力を活かした謎の執念で、背後から書類をムチのようにしならせて迫る。

 「ひ、ひいい! 怪獣リーダー、もっと飛ばしてくれ! 愛が...愛が物理的に追いついてくる!」 怪獣リーダーの太い首にしがみつき、騎士は涙目で叫んだ。

 「根性見せろ! 現場の意地でお前を家庭(檻)になんか返さんぞ!」 怪獣リーダーが重戦車のような足取りで、床に亀裂を走らせながら廊下を爆走する。

 「猫二! そこにある大道具を適当に投げろ!」 リーダーの怒号を受け、しんがりを務める猫二が、廊下に山積みされた「かつての興行の遺物」を次々と蹴り飛ばした。

 「食らうニャ! 前回の劇で使った『絶対に脱げない呪いのタキシード(書き割り)』だニャ!」 「きゃあ!? 視界が遮られる...!」 アリスが等身大のタキシードパネルに正面衝突し、一瞬足止めを食らう。

 「次はこれニャ! 『使い道不明の巨大な張りぼてネギ』だニャ!」 「...っ、これは!? 騎士さんの好物...! 粗末にはできません!」 サヨが巨大なネギを反射的に、かつ律儀にキャッチしてしまい、その自重で大きく失速する。

 その様子を、移動式バーと化した怪獣の肩で眺めながら、うさちぁんは虹色のカクテルを一口煽った。 「あはは、いいフォームだねぇ~。でも騎士くん、逃げれば逃げるほど、彼女たちの『捕まえた後の愛のプラン』が過激になるだけだよぉ~」

 「うさちぁん、不吉なこと言わないでくれ! ...おわっ!? 咲姫様、何してるんだ!」 廊下の角で、咲姫が「特攻用スモークマシン」を抱えてニヤリと待ち構えていた。

 「にゃうにゃああ! こうなったら、逃走劇のクライマックスを演出して、無理やり百合エンドに書き換えてやるのですー! 『桃色吐息スモーク』最大出力なのですー!!」

 廊下一面が濃密なピンクの煙に包まれ、一寸先も見えない。視界を奪われた騎士は、煙の中で、誰かにガシッと力強く、それでいて柔らかく手を引かれた。

 「...助かった、怪獣リーダーか?」 「いいえ、騎士さん。...捕まえましたよ(はぁと)」

 霧の向こうから聞こえたのは、サヨとアリスの、完全に同期したステレオ・ボイスだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【転の章:進捗状況 3/8】

咲姫:演出に凝りすぎて、逆に騎士を袋小路へ追い込む「致命的なアシスト」をかます。

うさちぁん:煙の中でも正確にグラスへ酒を注ぎ足す。揺れる怪獣の肩が心地よい。

騎士:ピンクの煙の中で、ついに「左右から腕をロック」される。愛のチェックメイト。

怪獣リーダー:煙で方向を見失い、なぜか新人がネギを焼いている「行き止まり」へと一直線。

猫二:大道具を投げすぎて、自分も書き割りに絡まって転倒中。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あとがきモカルドルラテ
【裏話】 昼ドラってあまり見たことないんですが(そもそもドラマは最近”相棒”ぐらいしかみてない)風の噂で聞く感じでは「愛憎劇」とか「ドロドロした」とか聞くので、それを普通状態と仮定して、その逆を行く『常識(普通)をぶっ壊す』のが咲姫ルールであり、咲姫の章のテーマになっています。 【後書き】 咲姫は一周回って致命的なダメージをくらわせます。 うさちぁんはお酒好きだね~
シェア
← 前の話
ep.338 その結婚、待ったニャ! 監獄の略奪者
次の話 →
ep.340 ネギの福音と、ガテンの咆哮
クラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜作者:モカルドルラテ
目次
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません