ep.277 湯煙の戦略会議。女将・波留とカオスの宴
猫二が残した「泡」と「レーザー」と「未払いの請求書」の山を前に、
月面拠点の空気は最悪だった。
「......。思考リソースが底をつきました。このままではインフラ改修案を
『全部爆破して作り直す』という非効率な結論で処理してしまいます」
「テラさん、目が座ってるよ! 怖いから! 一回休もう!?」
リオの必死の提案と、咲姫の「美味しいお豆腐が食べたいのです!」という
鶴の一声により、一行は月の裏側の秘湯、和風旅館『十六夜館』を訪れた。
竹林の向こう、しっとりと濡れた打ち水が光る玄関先で、
凛とした着物姿の女性が深く頭を下げた。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりましたわ、皆様」
女将の波留(はる)である。彼女の丁寧な所作と、まるで宇宙の喧騒を
すべて吸い込んだような静かな佇まいに、テラの角ばった肩がふっと下がった。
温泉で猫二の呪い(泡)を流した一行は、波留が用意した大広間へ。
「本日は『インフラ改修戦略会議』とのことで。皆様の英気を養うべく、
アンペリアの源水を磨き上げたお料理をご用意いたしましたわ」
波留が運んでくるのは、テラが思わず二度見するほど精密に盛り付けられた
「銀河イワシの薄造り」と、うさちぁんが鼻をひくつかせる「幻の銘酒」
「......女将さん。この盛り付けの黄金比、計算では導き出せない領域ですわ」
「あら、テラ様。管理も料理も、最後は『おもてなしの心』ですもの」
だが、会議が始まると同時に「真面目」の定義が崩壊し始めた。
「まず、アンペリアの配管が逆流した原因は......ヒック。うさちぁん様の
石鹸投入による粘性変化......いえ、うさちぁん様が可愛すぎるのが
悪いのです。そうに決まっていますわ(ガチ酔い)」
「そうだよぉテラちゃん! 私が可愛いから、水もつい逆流しちゃったんだよぉ!
ね、波留ちゃんもそう思うでしょぉ?」
「あらあら、うさちぁん様。逆流した水でお酒を割ると、
さらに美味しくなるかもしれませんわね(笑顔で毒を流す波留)」
「女将さんまで乗っからないでください! ......っていうか咲姫様!
改修案の図面に醤油で隠し味を書き込まないで!」
「リオ、これはお醤油じゃないのです! 新しい魔法の回路図なのです!」
真面目な顔で「アンペリアの脆弱性を克服するには、配管にマッサージ機能を
付けるべき」と主張し始めるテラと、それに「にゃんにゃんモードも
入れるのです!」と乗っかる咲姫。
カオス極まる宴会場で、波留だけは優雅に徳利を傾けながら、
「皆様、お仕事の話が捗っていらっしゃるようですわね」
と、一ミリも動じない姉御肌な微笑みを浮かべているのであった。
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【空の章:進捗状況 1/6】
・波留:初登場。カオスな面々を「お客様」として完璧にいなす超人女将。
・テラ:酒が入ると「計算の無駄遣い」が始まるタイプだと判明。
・リオ:温泉に来たのに、結局介抱とツッコミで一睡もできない予感。
・会議:現在の決定事項「配管を揉むと、お酒が出る(?)」
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