ep.322 格差の崩壊と、1000エトスの相棒(バディ)
黄金の丘に、咲姫の怒鳴り声(という名の歓喜)が響き渡った。
「にゃうにゃ!ダメなのです!贅沢に慣れきったヒーローなんて、ちっとも萌えないのです!」
原因は、うさちぁんだった。伝説の酒を飲んでご機嫌になったうさちぁんは、管理パネルを勝手に操作して新人の時給を「55,000エトス」に設定したが、酒が切れた瞬間に「あ、これやりすぎると私の取り分が減るじゃん」と気づいてしまったのだ。
「う~ん、やっぱり55,000はナシ!ついでに、あのお酒もう飲み終わっちゃったから、ご褒美期間終了だよぉ」
うさちぁんが管理パネルのレバーを「適当」に引き下げると、新人の給与口座の数字が、音を立てて削り取られていった。
「えっ...10,000...5,000...1,000!?う、うそだろ!?」
新人が絶叫する横で、サヤが「ささっと」左遷命令書を叩きつける。
「不当利得の返還と、身の丈に合わない生活による『精神的弛緩』への罰よ。...行きなさい。惑星の裏側、時給1,000エトスの『カビ臭い遺跡掃除』へ」
こうして、高級酒一本で掴んだ「バグの栄光」は泡と消えた。
新人が送り込まれたのは、エトスフェリアの惑星を貫いた反対側にある、咲姫が魔法で「わざわざ古めかしく作った」遺跡。そこで彼は、一人の男と出会う。
「...嘆くな。俺は時給300エトスで24時間、無限ゴブリンを1万体斬り続けてきた男だ」
ボロボロの鎧を纏った、元・極限社畜の騎士。彼もまた、地道な労働によって「時給1,500エトス」という、この地獄のギルドにおける中堅クラスまで這い上がってきたばかりだった。
その様子を、咲姫はモニター越しに頬を染めて眺めていた。
「にゃうにゃ!これなのです!成功の絶頂からどん底に落ちたエリートと、地道に積み上げた実力派...。この二人がボロボロになりながら友情を育み、這い上がっていく姿...ああ、興奮して脳が溶けそうなのですー!」
一方、月の裏にある小惑星の「怪獣基地」
そこでは、咲姫のマッチポンプにいい加減キレた怪獣たちが、猫二に詰め寄っていた。
「猫二!俺たちは『ラジオ体操』の伴奏をするために生まれてきたんじゃない!」
「俺たちは壊したいんだ!戦わせろ!あそこの遺跡で掃除してる軟弱なヒーローどもを、今すぐ血祭りに上げさせろ!」
「ひえぇぇ!咲姫様ー!怪獣たちが言うことを聞かないニャーー!」
猫二を小脇に抱えた怪獣軍団が、月の裏から遺跡へと猛スピードで飛来する。
【進捗状況6/12】
咲姫:
新人と騎士が「時給差」でギスギスしながらも、共通の敵を前に背中を預ける展開を期待して鼻血が出そうになる。
うさちぁん:
時給をバグらせた張本人だが、今は遺跡の隅で、新人に「1,000エトスでも買える泥水味の栄養剤」を売りつける準備をしている。
サヤ:
「ささっと」怪獣が壊した遺跡の修繕費を、新人と騎士の給料から「連帯責任」として天引きする準備を完了。
アリシア:
「さらっと」時給55,000から1,000への減額を「規約第99条:酒の効力が切れた場合」として法的に正当化。
わんわん:
「さくっと」二人が戦いやすい(かつ、ボロボロになりやすい)ように、遺跡の床をワックスでツルツルに磨き上げる。
果林:
「くいっと」逃げ出してきた猫二が持っていた酒を奪い、「命拾いしたわね」と一言。
猫二:
怪獣たちに担ぎ上げられ、意図せず「侵攻軍の総大将」に。泣きながら「非効率に攻めるニャ!」と叫ぶ。