ep.287 箱庭の創世。秘書アリシアと星の芽生え
地下500メートルの秘密指令所。そこはテラが「論理の外側」を封じ込めるための檻のはずだったが、咲姫にとっては「誰にも邪魔されない最高の遊び場」へと変貌していた。
「サヤ、お洗濯は終わったのですか? 次はあっちの空間のアイロンがけもお願いしたいのですー!」
「はい、咲姫様。ただいま......」
流石のサヤも、掃除、洗濯、料理に加え、咲姫とうさちぁんが攪拌し続ける空間の修復に、少しだけ眉尻を下げていた。そこへ、ふんわりとした茶色の耳を揺らし、一人の女性が「しれっと」現れる。
「あらあら、サヤ様。少しお忙しそうですね。私がお手伝いしましょうか」
たぬき獣人の女性、アリシア。
柔らかな微笑みとは裏腹に、その手には完璧に整理されたバインダーが握られている。
「サヤ様と同じく『しれっと移動』は嗜んでおります。事務作業とスケジュール管理は私、アリシアにお任せください。できる秘書(じむばんのう)ですから」
彼女が書類をひと撫ですれば、テラが頭を抱えていた複雑な資材管理が「できる秘書さん」スキルの恩恵で一瞬にして最適化されていく。サヤの負担が減り、指令所に新たな秩序(と癒やし)がもたらされた。
「アリシア、ナイスタイミングなのです! サヤが暇になったなら、さっそく『世界』を作るのです!」
「......。咲姫様、今、何とおっしゃいました? 世界?」
テラのブリザード混じりの問いかけを無視して、咲姫は指令所の最奥にある広大な「実験室」の扉を開いた。
「外に出られないなら、ここに宇宙を作るのです! うさちぁん、種を蒔くのです!」
「おっけー! 宇宙の種、しっかりシェイクして芽吹かせちゃうよぉ!」
咲姫が茶器で無の空間を「点て」てキャンバスを作り、そこへうさちぁんがシェーカーで凝縮した魔力の粒子を豪快に振り撒く。
――ズガガガガッ!!
真っ暗だった実験室の空間に、光の渦が巻き起こり、数多の星々が瞬き始めた。
「......ッ!? 地下の密室に、独自の銀河系が......物理法則を無視した特異点が生成されていますわ!」
「テラ様、落ち着いてくださいね。こちらの宇宙の納税申告と管理コストは、私が『新規事業』として適切に処理しておきますから」
アリシアがペンを走らせる横で、咲姫は生まれたばかりの小さな星を見つめて不敵に笑う。
「ここから、咲姫だけの凄いもの(生産チート)をたくさん作るのです!」
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【創の章:進捗状況 5/10】
・咲姫:地下実験室に「箱庭宇宙」を創世。一からの生産活動を開始。
・アリシア:初登場。サヤを支える「できる秘書さん」たぬきの尻尾が可愛い。
・うさちぁん:宇宙をシェイクして星を誕生させるという、前人未到の土木作業。
・サヤ:アリシアのおかげで余裕ができ、咲姫への献身がさらに深まる。
・テラ:指令所の地下に銀河が飼われているという事実に、計算回路がオーバーヒート。
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