ep.357 地獄の生者、穴の底のヘブンズ・コーラス
絶望のどん底(物理)へ落ちたはずのルネが目撃した、あまりにもシュールで「尊い」光景。咲姫のカメラが、ついにこの惑星の「核」にある異常な癒やしを捉えます。
【本文】
「...あ、あはは。もう、お財布なんて、どうでもいいですぅ...。お空が...玉葱色に輝いて見えますぅ...」 究極の二択を迫られた末、ルネはうさちぁんから手渡された「勇気が出るお酒(幻覚成分マシマシ)」を一気に煽った。
視界がぐにゃりと歪み、多幸感に包まれた彼女は、玉葱ドレスを翻しながら、ふらふらと10mの縦穴へとダイブした。 「にゃうにゃあ! 決定的瞬間なのです! 悲劇のヒロインが、自ら地獄の底へと身を投じたのですー!! ピジョンさん、追いかけるのですー!!」
「ひぎぃぃ! 一緒に墜落するのですー!!」 咲姫の絶叫を受け、ピジョンも羽を畳んで急降下。カメラのレンズが、穴の底で待ち受ける「光」を捉えた。
ドサッ、とルネが着地したのは、騎士が用意した山のような「玉葱のみじん切り」の上だった。 しかし、そこは涙の枯れ果てた地獄ではなかった。
「...さあ、皆さん。もっと心を一つに。16エトスの輝きを歌声に乗せるのです」 穴の底には、指揮棒を振る新人と、彼を取り囲むように整列した数百体の「玉葱の精霊」たちがいた。
『♪オニオ~ン...涙を~拭いて~...炒めれば~甘く~...煮込めば~溶ける~...♪』
精霊たちの透き通るようなソプラノと、新人の凛としたバリトンが重なり合い、10mの穴の底は、神聖な大聖堂のような響きに包まれていた。玉葱の汁による反射で、壁面は黄金色に輝いている。
「な、なんなのですか...これ。...地獄の底だと思ったら、ここは...天国(ヘヴン)だったのですかー!!」 咲姫は自らも穴に飛び降り、着地の衝撃も忘れてシャッターを切る。
「...あら、ルネさん。ちょうどいいところに。あなたも合唱のソプラノパートを担当してください。この玉葱ドレス、音の反響が素晴らしく計算されています」 新人が真顔でルネに楽譜(玉葱の皮)を差し出す。
「...え、あ、はい。...♪オニオ~ン...幸せは~...皮の数だけ~...あるのですぅ...♪」 お酒でキマったままのルネが、ドレスをシャカシャカ鳴らしながら歌い始める。
「これなのです! 絶望の底で、怨敵(ネギ)と玉葱が奏でる奇跡の和音! メイキング映像の尺が足りないどころか、全銀河の音楽チャートを独占できるのですー!!」
「あはは、良い歌だねぇ~。特等席の鑑賞料は、定価の800倍の『魂の契約書』でいいかなぁ~?」 穴の縁からうさちぁんが身を乗り出し、黄金色の地下聖堂を眺めて愉快そうに笑った。
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【見の章:進捗状況 5/8】
咲姫(総監督):地獄を撮るつもりが、新人が勝手に構築していた「玉葱合唱団」という超展開に遭遇。大興奮で録音を開始。
ルネ(主演):お酒と歌声の癒やし(?)により、一時的に不幸を忘れて聖歌隊の一員に。
新人(指揮者):魔王の座を捨て、16エトスの時給に見合う「心の教育」として精霊たちを育成中。
玉葱の精霊:新人の指揮により、殺意を忘れて美しいハーモニーを奏でる。
ピジョン:穴の底の澄んだ空気(?)に救われ、ようやく墜落せずに空撮を完遂。
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次回、ep.358「メイキング本編:爆掘!ドワーフの狂宴と、餡子熊王の覚醒」