ep.356 悲劇のハーフエルフ、究極の二択(地獄)
「にゃうにゃあ...。ルネちゃん、そんなに震えていては『絶望の美』がボヤけてしまうのです。もっと、こう...魂から汁が溢れるような、凛とした悲劇を見せてほしいのですー!!」
咲姫の指し示す先には、前作で築き上げられた「オムライスの丘(巨大な半熟卵の成層圏突破跡地)」が、今や冷え固まって不気味な黄色い絶壁となってそびえ立っていた。
「...あ、あの、咲姫監督...。このドレス、重いし、何より...臭うんです。目が、目が開かないどころか、全身の毛穴がツーンとするんですぅ...」 ルネが身にまとっているのは、咲姫特製の「玉葱の皮100%・ウェディングドレス」。動くたびに乾燥した皮が擦れ、濃厚な催涙成分が粉塵となって彼女を包み込む。財布を落としたどころではない、人生最大の不条理が彼女を襲っていた。
「嫌なのです? ならば、ルネちゃんには別の役どころを用意してあげてもいいのですよ?」 咲姫が不敵な笑みを浮かべ、メガホンで足元を指した。そこには、ドワーフのバッシュが毒酒を求めて掘り返した、深さ10mの巨大な縦穴が、口を広げて待っていた。
「...この穴の底で、玉葱の根っこに抱かれながら『地獄の生者』として祈るのです。ちなみに壁面はすべて剥き立ての玉葱でコーティング済み。逃げ場のない、純度100%の涙の部屋なのですー!」
「...ひ、ひぃぃ! どっちに行っても地獄じゃないですかぁぁ!! お母さん、私、やっぱりお財布なんて探さなきゃよかったですぅー!!」 ルネの悲鳴が、玉葱惑星の空に虚しく響く。
「これなのです! その、自分の人生を呪うような叫び! これこそが全銀河が求めている『究極の幸薄』なのですー!! ...ピジョンさん、今の表情を真上から! 彼女の絶望を、一滴残らず記録するのですー!!」
「無理ですぅ! 穴から上がってくる玉葱の熱気で、私の羽が蒸し鳥になりそうなのですー!!」 上空でピジョンが錐揉み状態になりながらも、カメラのシャッターだけは意地で切り続ける。
「あはは、ルネちゃん、どっちにするか決まったぁ? 迷ってるなら、私が背中を押してあげようかぁ~。定価の500倍の『勇気が出るお酒』を飲めば、10mの穴もトランポリンに見えるよぉ~」 うさちぁんが、穴の縁に腰掛けて、ルネに毒々しい色のグラスを差し出した。
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【見の章:進捗状況 4/8】
咲姫(総監督):ルネに「玉葱ドレスで絶壁」か「玉葱の穴で幽閉」かの二択を迫り、最高の「泣き顔」を抽出中。
ルネ(主演):財布を失くした程度の不幸が「前世のボーナスタイム」に思えるほどの極限状態へ。
ピジョン:上昇気流(玉葱臭)により、空中で燻製状態になりつつある。
騎士:穴の底で、ルネを迎えるための「玉葱のクッション(みじん切り)」を黙々と作成中。
うさちぁん:極限状態のルネに、さらに幻覚作用の強い酒を売りつけようと画策。
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次回、ep.357「メイキング本編:地獄の生者、穴の底からの合唱」