ep.279 暴走する慈愛!よしよし配管 vs 鉄腕女将
「よしよしなのですー! 全宇宙を抱っこしてあげるのですー!」
十六夜館の地下魔力炉から、うねうねとのたうつ銀色の影が飛び出した。
テラと咲姫が酔った勢いで完成させた『よしよし配管・試作1号』である。
うさちぁんが動力源に注ぎ込んだ「度数96%の燃料酒」のせいで、
配管は完全に泥酔。寂しそうな者を見つけては、触手のようなダクトで
無理やりホールドし、高速で背中を叩くという恐怖の抱擁マシンと化していた。
「テラさん、止めて! リオが...リオが配管に絞め殺される!」
「...。問題ありませんわ、リオ様。これもまた、次世代インフラによる
『物理的な親愛の情』の表れですわ...。ヒック、効率的ですわね...」
テラは真っ赤な顔で千鳥足。全く役に立たない。
その時、客室の隅で事態を眺めていた咲姫が、不敵に微笑んだ。
「みんな、落ち着くのです! 殺気立っているから配管ちゃんも興奮するのです。
こういう時は、甘いものを食べて『ほわわん』とするのが一番なのです!」
咲姫は床の間にあった高級な青磁の茶器をひったくると、あろうことか
その中に「月光の魔力」と「アンペリアの聖水」を注ぎ込んだ。
「秘技! 茶器でコネコネ団子作りなのです!」
咲姫が茶器をシャカシャカと振るたびに、中からパチパチと魔法の火花が散り、
次の瞬間には、月のように白く輝くモチモチの団子が次々と溢れ出してきた。
「さあ配管ちゃん、これを食べて大人しくなるのです!」
咲姫が団子を配管の吸気口に放り込む。だが、甘い団子でさらにテンションが
上がった配管は、勢いを増して女将・波留のいる玄関先へと突進した。
「あらあら、廊下が粉糖で汚れてしまいますわね」
波留が静かに、だが揺るぎない足取りで前に出た。彼女は袖をサッと
タスキでまとめると、手近にあった掃除用のハタキを逆手に持つ。
「お客様。当館の静寂を乱す振る舞い...この波留が、お仕置き(おもてなし)
させていただきますわ」
ドゴォォォン!
波留の一撃が、暴走する配管の接合部を正確に貫いた。
笑顔のまま放たれたその打撃は、絶対零度のテラさえも震え上がるほどの
重圧(プレッシャー)を孕んでいた。
「にゃ、にゃーっ!?(※配管が猫二のプログラムを一部継承していた音)」
配管は一瞬で沈黙し、波留の足元に力なく横たわった。
「テラ様、咲姫様。愛もインフラも、まずは『土台』を締め直さなくては。
この接続部がガタガタだから、魔力が漏れて暴走するのですわ」
波留はバラバラになった配管を片手で軽々と持ち上げると、
「さあ、お団子が冷めないうちに、改修の『本番』を始めましょうか」
と、プロの顔で微笑むのだった。
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【空の章:進捗状況 3/6】
・波留:物理・魔法ともにエトスフェリア最強クラスの「姉御」と判明。
・咲姫:茶器を調理器具にする暴挙に出るが、団子の味は宇宙一。
・テラ:波留の「一撃」を見て、酔いが一気に覚めた。
・リオ:配管から解放されたが、団子を喉に詰まらせて死にかけている。
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