ホーム›荘周夢蝶の魔術師達›第三幕 魔女
← 前の話目次次の話 →

第三幕 魔女

◇◇◇
今まで、あの想いも、あの光景も、...あの眼差しも忘れようとしたことはない。
憐れむような、そんな眼を忘れはしなかった。
その眼が憎かった。
その眼が許せなかった。

 
 でもそんな眼が今、大義名分を宿してこちらをみてる。
 私も復讐に取り憑かれて、目の前が見えなくなるほど幼くはない。
 そのせいで、彼女の大義名分が私が憎んでない無関係な人を沢山幸せにできることが分かってしまう。
 
...だから心の片隅で許してしまう。
そんな中途半端な自分が許せなかった。
魔女に成りきれない私が憎かった。

◇◇◇
彼女はライアを見つめながら言った。
「私はステラ
ステラ・カマルと申します」
その名を聞きライアは尋ねた。
「で、あんたの目的は...考えなくても分かるわね」
ライアはそっけなく返す、けれどその顔には深刻な驚きの表情が写ってるように見えた。
「はい、できれば穏便に事を済ませたいので大人しく降参してくれれば嬉しいですが...」
ステラと名乗る女性は呟いた。
「へぇ、どこの誰にそれを聞いてると思ってるの?」
ライアの少し苛立っているのが言葉の節々から感じ取れた。
「ですよね...」
ため息混じりにステラは答える。
ステラは改めて見据える。
瞬間、お互い構える。
瞬きの間に接近する。
五秒もの間に二十回ほど金属がぶつかる音がした。ガントレットが鎌を弾く。
ステラの足が半歩下がる。
また一撃。今度は二歩。
鎌を振る暇すら与えられない。
ステラは数回、攻撃を防いだのち、体を翻し後ろへ引く。
「さっきまでの強気はどこいったのよ、ほとんどの攻撃に力を感じ取れなかったわ」
ライアはそう挑発する。
「ええ、近接での戦闘はあまり得意な分野ではないので」
ステラは返す。
そのステラが答えたあと、間髪入れずにライアのガントレットの攻撃が炸裂する。
その攻撃をステラは宙に舞う布のようにかわしていく。
劣勢ではあるがステラの顔には焦りは無かった。
「ハァ!!」
ライアは一瞬の隙を見つけて回し蹴りを入れる。
ステラは鎌で攻撃をいなしつつ大きく後ろへ下がった。
ふぅステラは一息つく。
「やはり近接だと貴女に武がありますね」
「分かりきってることじゃない」
堂々とライアは答える。
ステラは鎌を地面に突き刺して立てる。
「でも、中距離、遠距離ならこちらに武があります」
そう言いながら手袋をはずす。
思わず自分の目を凝らす。
はっきりと魔力がステラの手に流れるのを認識する。
禍々しいほどに規則正しい流れを。
咄嗟に叫ぶ。
「ライアさん!!
それを使わせたらまずい!!」
ライアはこちらを振り返ったあとステラを睨む。
ステラは微笑んだあと、反対の人差し指を唇にかざす。
「お静かに」
体が寒気を認識する。
ライアは距離を一気に詰める。
けれどその瞬間にも、術式は発生していた。
僕を含めた三人の胸元に一つ星が浮かぶ。
ライアを含め、体が動かなくなる。
その星に呼応するように次々と星が浮かぶ。
そして、動かない体をなぞるように星が繋がる。
まるでヘラクレス座のように。
ステラは続ける。
「そもそも、私は武人などではなく...魔女なので」
「これは!!?」
ライアは焦りが混じった困惑の質問をする。
「僕も、聞いたことしかないです
星に関する魔術は南西の方々しか刻印を持っていないはずです」
矛盾を感じたせいで言葉が詰まる。
「星座に関する血脈は...数年前に戦争で絶たれたと聞いています...」
「ってことは、アイツは占星術師ってことね」
ライアは理解する。
「ほら言ったじゃないですか、私は魔女だって」
ステラが動けなくなったライアに近づく。
「ずいぶん古い卑下の方法を使うのね」
ライアは挑発をやめない。
「そろそろ自分の立場を理解したらどうです?」
ステラはライアを蹴り飛ばす。
ライアは拠点の壁を貫通して柱に当たる。
「ライアさん!!」

◇◇◇
叫ぶ。
「落ち着け、ライアはあんな攻撃で死にはしない」
レイルが口を開く。そして続けて言う。
「それとすまないが、今刻印が破損していて君が期待するような働きはできない」
「そんな...!!」
「安心したまえ、私に魔術の心得はないが魔術には必ず綻びがあるはずだ
今、君の魔術を使う時だ」
戦闘になって頭が混乱していたけれどその言葉で冷静になった。
「分かりました」
一息
星座に流れる魔術を確認する。
ごくわずか魔力が縺れている星がある。
そこに目一杯の魔力を注ぐ。
星が正常じゃない魔力に耐えきれずショートする。
「解けた...!!」
「成功体験に酔うのはいいがライアの元へ向かってくれ」
「はい!!」
そう言いながらライアの元へ走って向かう。
ステラは歩いていたおかげで、ライアの元へ先に向かうことができた。
「ライアさん、大丈夫ですか」
「ごめんあと一分時間が欲しい」
ライアは苦しそうに言う。
「あらもう解けちゃったんですか
少し貴方の事を侮っていました」
ステラが口を開く。
今まで感じたことのない悪寒がする。
「ええお陰様で」
そう、余裕がないのに言ってしまった。
「そういえば貴方の口からまだ戦争に参加すると聞いていませんでしたね」
ステラが聞き返す。
「僕は参加します、誰が何と言おうと」
そう答える。
やはりステラは悲しそうな顔をする。
「そうですか、これで明確に私の敵になってしまいましたね
でも、私も未来ある人から命を奪うのは好きではありません、大人しくしといてくれませんか?」
「僕は頑固者でね、他人からとやかく言われたって僕は変わらない」
そうとだけステラはリアクションを取る。
「僕は自分が選んだ道で自分が不幸になっても、この願いは貫き通す
例え...誰かが不幸になろうとも...」
虚勢丸出しのアンサーをした。
でも彼女の目を逸らさない。
そしたら虚勢ですら負けてしまいそうだから。

◇◇◇
ああ、古い鏡を見させられて同情してしまう。 
でも、私はこの子が嫌いだ。
この眼差しが嫌いだ。
思い返せば眩しくて、目を背けたくなるような日々の記憶をを思い出させる。
ああ、あなたならなんて言うんだろう。
この今を。
あなたと同じようなことを言うこの子を。

...まだ私も未熟だ
あなたとこの子は似ているけど異なっている。
いつもこんな自分が揺らぐときあなたに助けを求めてしまう、間違ってないかって。
まだ私は何をすべきか分からずにいる。


◇◇◇
ステラの動きが止まった。
こちらの動きを伺っているのだろうか、それとも別のことを考えているのか。
分からない。
とりあえず、左手を背中に隠して、魔力を込める。
今や簡単な術式すら気が動転してうまく作れない。
ステラが口を開く。
「まぁいい、こんなことをしといて申し訳ないが
できれば君たちとは敵対せず仲良くしてもらいたい」
口調がやや崩れている。
「では今宵はここまでとしましょう」
そう残しステラは闇夜に消える。
それと同時に術式も消える。
腰に力が入らなくて、その場に座り込む。
ため息をつく。
後ろから肩をポンとたたかれる。
「よく言ったじゃない
あの場でよく自分を保っていられたわね」
ライアがいつもの調子で言う。
「ありがとうございます
てか大丈夫なんですか?」
「ああーへーきへーき
あんな攻撃でへこたれやしないよ」
「でもさっきまで苦しそうにしてたじゃないですか?」
「いやーちょっと試させてもらっただけさ、君がどれっくらいへっぴり腰なのか知りたくてね」
「それで本当に死んじゃったらどうするんですか!!?」
「いやそもそも彼女から殺気が感じられなかったし、大丈夫だと思って」
「先に言っといてくださいよ」
レイルが間に割って入る。
「ライア、良い加減年下をおちょくるのはよしたまえ、あの攻撃は少し響いてはいだろう
そして、レノンに対しての気配は少なからず安全なものでは無かった
よくやったなレノン」
シェア
← 前の話
第二幕 林檎
次の話 →
番外編 ライア•ヴァレジア
荘周夢蝶の魔術師達作者:ハッピースプリング
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません

第三幕 魔女

◇◇◇
今まで、あの想いも、あの光景も、...あの眼差しも忘れようとしたことはない。
憐れむような、そんな眼を忘れはしなかった。
その眼が憎かった。
その眼が許せなかった。

 
 でもそんな眼が今、大義名分を宿してこちらをみてる。
 私も復讐に取り憑かれて、目の前が見えなくなるほど幼くはない。
 そのせいで、彼女の大義名分が私が憎んでない無関係な人を沢山幸せにできることが分かってしまう。
 
...だから心の片隅で許してしまう。
そんな中途半端な自分が許せなかった。
魔女に成りきれない私が憎かった。

◇◇◇
彼女はライアを見つめながら言った。
「私はステラ
ステラ・カマルと申します」
その名を聞きライアは尋ねた。
「で、あんたの目的は...考えなくても分かるわね」
ライアはそっけなく返す、けれどその顔には深刻な驚きの表情が写ってるように見えた。
「はい、できれば穏便に事を済ませたいので大人しく降参してくれれば嬉しいですが...」
ステラと名乗る女性は呟いた。
「へぇ、どこの誰にそれを聞いてると思ってるの?」
ライアの少し苛立っているのが言葉の節々から感じ取れた。
「ですよね...」
ため息混じりにステラは答える。
ステラは改めて見据える。
瞬間、お互い構える。
瞬きの間に接近する。
五秒もの間に二十回ほど金属がぶつかる音がした。ガントレットが鎌を弾く。
ステラの足が半歩下がる。
また一撃。今度は二歩。
鎌を振る暇すら与えられない。
ステラは数回、攻撃を防いだのち、体を翻し後ろへ引く。
「さっきまでの強気はどこいったのよ、ほとんどの攻撃に力を感じ取れなかったわ」
ライアはそう挑発する。
「ええ、近接での戦闘はあまり得意な分野ではないので」
ステラは返す。
そのステラが答えたあと、間髪入れずにライアのガントレットの攻撃が炸裂する。
その攻撃をステラは宙に舞う布のようにかわしていく。
劣勢ではあるがステラの顔には焦りは無かった。
「ハァ!!」
ライアは一瞬の隙を見つけて回し蹴りを入れる。
ステラは鎌で攻撃をいなしつつ大きく後ろへ下がった。
ふぅステラは一息つく。
「やはり近接だと貴女に武がありますね」
「分かりきってることじゃない」
堂々とライアは答える。
ステラは鎌を地面に突き刺して立てる。
「でも、中距離、遠距離ならこちらに武があります」
そう言いながら手袋をはずす。
思わず自分の目を凝らす。
はっきりと魔力がステラの手に流れるのを認識する。
禍々しいほどに規則正しい流れを。
咄嗟に叫ぶ。
「ライアさん!!
それを使わせたらまずい!!」
ライアはこちらを振り返ったあとステラを睨む。
ステラは微笑んだあと、反対の人差し指を唇にかざす。
「お静かに」
体が寒気を認識する。
ライアは距離を一気に詰める。
けれどその瞬間にも、術式は発生していた。
僕を含めた三人の胸元に一つ星が浮かぶ。
ライアを含め、体が動かなくなる。
その星に呼応するように次々と星が浮かぶ。
そして、動かない体をなぞるように星が繋がる。
まるでヘラクレス座のように。
ステラは続ける。
「そもそも、私は武人などではなく...魔女なので」
「これは!!?」
ライアは焦りが混じった困惑の質問をする。
「僕も、聞いたことしかないです
星に関する魔術は南西の方々しか刻印を持っていないはずです」
矛盾を感じたせいで言葉が詰まる。
「星座に関する血脈は...数年前に戦争で絶たれたと聞いています...」
「ってことは、アイツは占星術師ってことね」
ライアは理解する。
「ほら言ったじゃないですか、私は魔女だって」
ステラが動けなくなったライアに近づく。
「ずいぶん古い卑下の方法を使うのね」
ライアは挑発をやめない。
「そろそろ自分の立場を理解したらどうです?」
ステラはライアを蹴り飛ばす。
ライアは拠点の壁を貫通して柱に当たる。
「ライアさん!!」

◇◇◇
叫ぶ。
「落ち着け、ライアはあんな攻撃で死にはしない」
レイルが口を開く。そして続けて言う。
「それとすまないが、今刻印が破損していて君が期待するような働きはできない」
「そんな...!!」
「安心したまえ、私に魔術の心得はないが魔術には必ず綻びがあるはずだ
今、君の魔術を使う時だ」
戦闘になって頭が混乱していたけれどその言葉で冷静になった。
「分かりました」
一息
星座に流れる魔術を確認する。
ごくわずか魔力が縺れている星がある。
そこに目一杯の魔力を注ぐ。
星が正常じゃない魔力に耐えきれずショートする。
「解けた...!!」
「成功体験に酔うのはいいがライアの元へ向かってくれ」
「はい!!」
そう言いながらライアの元へ走って向かう。
ステラは歩いていたおかげで、ライアの元へ先に向かうことができた。
「ライアさん、大丈夫ですか」
「ごめんあと一分時間が欲しい」
ライアは苦しそうに言う。
「あらもう解けちゃったんですか
少し貴方の事を侮っていました」
ステラが口を開く。
今まで感じたことのない悪寒がする。
「ええお陰様で」
そう、余裕がないのに言ってしまった。
「そういえば貴方の口からまだ戦争に参加すると聞いていませんでしたね」
ステラが聞き返す。
「僕は参加します、誰が何と言おうと」
そう答える。
やはりステラは悲しそうな顔をする。
「そうですか、これで明確に私の敵になってしまいましたね
でも、私も未来ある人から命を奪うのは好きではありません、大人しくしといてくれませんか?」
「僕は頑固者でね、他人からとやかく言われたって僕は変わらない」
そうとだけステラはリアクションを取る。
「僕は自分が選んだ道で自分が不幸になっても、この願いは貫き通す
例え...誰かが不幸になろうとも...」
虚勢丸出しのアンサーをした。
でも彼女の目を逸らさない。
そしたら虚勢ですら負けてしまいそうだから。

◇◇◇
ああ、古い鏡を見させられて同情してしまう。 
でも、私はこの子が嫌いだ。
この眼差しが嫌いだ。
思い返せば眩しくて、目を背けたくなるような日々の記憶をを思い出させる。
ああ、あなたならなんて言うんだろう。
この今を。
あなたと同じようなことを言うこの子を。

...まだ私も未熟だ
あなたとこの子は似ているけど異なっている。
いつもこんな自分が揺らぐときあなたに助けを求めてしまう、間違ってないかって。
まだ私は何をすべきか分からずにいる。


◇◇◇
ステラの動きが止まった。
こちらの動きを伺っているのだろうか、それとも別のことを考えているのか。
分からない。
とりあえず、左手を背中に隠して、魔力を込める。
今や簡単な術式すら気が動転してうまく作れない。
ステラが口を開く。
「まぁいい、こんなことをしといて申し訳ないが
できれば君たちとは敵対せず仲良くしてもらいたい」
口調がやや崩れている。
「では今宵はここまでとしましょう」
そう残しステラは闇夜に消える。
それと同時に術式も消える。
腰に力が入らなくて、その場に座り込む。
ため息をつく。
後ろから肩をポンとたたかれる。
「よく言ったじゃない
あの場でよく自分を保っていられたわね」
ライアがいつもの調子で言う。
「ありがとうございます
てか大丈夫なんですか?」
「ああーへーきへーき
あんな攻撃でへこたれやしないよ」
「でもさっきまで苦しそうにしてたじゃないですか?」
「いやーちょっと試させてもらっただけさ、君がどれっくらいへっぴり腰なのか知りたくてね」
「それで本当に死んじゃったらどうするんですか!!?」
「いやそもそも彼女から殺気が感じられなかったし、大丈夫だと思って」
「先に言っといてくださいよ」
レイルが間に割って入る。
「ライア、良い加減年下をおちょくるのはよしたまえ、あの攻撃は少し響いてはいだろう
そして、レノンに対しての気配は少なからず安全なものでは無かった
よくやったなレノン」
シェア
次の話番外編 ライア•ヴァレジア
荘周夢蝶の魔術師達作者:ハッピースプリング
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません