第二話 死
本当に不意の出来事だった。
内々定先である江川さんとの飲み会を終え、暗い夜道を歩いていた。何十何百年という遥かな時間をかけてやってきた星の光だけが辺りを照らしていた頃、唐突にやってきた何かと身体がぶつかった。
数トンもの衝撃が僕を一瞬にして貫き、一拍遅れて筆舌にし難い痛みが身体に響く。車だ、身体に伝わるものが車に轢かれたのだと如実に物語っている。今そんなことを悟っても何の意味もないのに。
「あがっ......」
空気を切り裂く感覚と耳を斬るような鋭い痛みが絶え間なく身体に刻まれる。何かが粉砕した音を、耳ではなく骨で聞き取ってしまった。
無灯火の車に轢かれた。僕の理性を司る部分がそう判断したが、そんなことを気にしている場合ではないと、身体が慟哭をあげていた。
まずは、感覚が無いという感覚が全身を蝕み始めた。十全に働いていたはずの神経たちが二度と醒めない眠りについていくことが分かる。
「............」
不味い、不味い、不味い、不味い、不味い。
眼鏡が飛んでしまったのか前がよく見えない。助けを求めようとしても声が出ない、肺を潰されてしまったのか、いやそんなわけがない.........
「あっ......」
前が見えない。星の光は何処に行った?
音も良く聞こえなくなってきた。だが口内に鉄さびのような味が広がり、肌と骨に痛苦が広がっていく。
「............」
マジかよ......マジなのかよ......
意識が何か大きくて黒いものに溶けていっているようだ。必死に溶けていくのを防ごうとするが、水をざるで掬おうとしているかのように無為なことだと実感してしまう。
ああくそ......くそ......くそ......
......ドロリ......
何か、決定的なものが、僕の中から、溶けだしていったと、魂が感じてしまった。