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第20話 私の生きる意味

【碁羅秀美】

 人生全部を懸けても良いと思えるもの、それは私が小さい頃から一番欲しかったものです。

 熱意がない、努力が足りない、心がこもっていない。親も先生も、誰も彼もが私を追い込む打ち合わせでもしたかのように同じようなことを繰り返します。

 言葉の最後に、貴方の為と付け加え、自分の意見を正当化するような人間たちが嫌いで嫌いで仕方ありませんでした。どうして私は人として産まれたのか、他の動物や植物に産まれていれば何か変わったのか、考えない日はありませんでした。

 だけどもそれと同時に熱い想いと言うものに焦がれていたのも分かっています。しょせんは私も人。ない物ねだりが大好きだったのです。ねだるだけで何もしなかったのも私が一山いくらの人間に過ぎなかったからでしょう。

 なるべく人と会いたくない、人と会話せずに仕事をしたい。そう考えていると学者になろうと思っていました。昔から興味のあった数少ない植物と言うものを誰にも口出しされずに黙々と研究していけばいい、偶に論文でも書いて、少しだけ人と関わるだけ。それなら我慢できるはず、そう考えたのです。

 ただ、現実は私の想像通りにはいきませんでした。植物や本とだけ向き合えばいいと思っていたのに目の前に現れるのは人ばかり。やれ研究費用だの、機材だの、研究の許可だのと誰かと接しなければならないのです。

 大した結果も出していない女だからと無碍にされたことは数知れず。それでも自分の力が足りないと認めざるを得ないことばかり。

 全部捨てたい。でも、命は捨てたくない。

 そう考えて辿り着いたのが斗鬼和島です。江川さんからもたらされた情報を元に、斗鬼和花と言う不可思議な植物を調べるというのが表向きの理由でしたが、実際はそんなものあるわけがないと確信していました。ただ、誰もこない場所で静かにひっそりと暮らしたかった。誰の記憶にも残らずに、誰にも悲しまれずに、ただ天寿を全うする。
「あんたが碁羅さんか! 頼む!! 公子を蘇らせてくれ!!!」

 後ろ向きな想いだけを胸に秘めていた私に対し、江川さんは出会って早々深く頭を下げてきました。

「俺にとっては公子が全てなんだ。あいつの為なら何でもする!! もうあんたしか頼れる人がいないんだ!!」

 江川卓一さんは節操なく学者や医者に片っ端からメールを送り、斗鬼和花を見つけてくれと勝手に頼んでくる厚顔無恥な男だと噂になっていました。感情で動く、私の苦手な人種。その想いはほんの数秒でコンクリートより固くなりました。ただ、私はにわかに湧いた熱さに驚いてもいました。

 ああそう言えば私ってこんな風に頼られたことなかったな。そう気づいた時には彼の手を固く握りしめていたのです。 

「分かりました。全力を尽くして貴方の娘さんを蘇らせてみせます」

 その後、安置室で眠っている公子さんを見て私の想いは完全に固まり、そして確信しました。

 私がこの世に産まれたのは江川公子さんを生き返らせるためなんだということに。その為ならば私の人生全部を惜しみなく使いましょう。必要ならば如何なる犠牲も払いましょう。どうせ無価値と決めつけた人生、惜しいことは何もありません。

 真砂さんをじっくりと観察していると、頬がぐにゅりと歪んでいくのが分かりました。それを戻して誤魔化すように笑います。

 全ては私の生きる意味の為に。
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輪廻の罪と嗤う花作者:曇りの夜空
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第20話 私の生きる意味

【碁羅秀美】

 人生全部を懸けても良いと思えるもの、それは私が小さい頃から一番欲しかったものです。

 熱意がない、努力が足りない、心がこもっていない。親も先生も、誰も彼もが私を追い込む打ち合わせでもしたかのように同じようなことを繰り返します。

 言葉の最後に、貴方の為と付け加え、自分の意見を正当化するような人間たちが嫌いで嫌いで仕方ありませんでした。どうして私は人として産まれたのか、他の動物や植物に産まれていれば何か変わったのか、考えない日はありませんでした。

 だけどもそれと同時に熱い想いと言うものに焦がれていたのも分かっています。しょせんは私も人。ない物ねだりが大好きだったのです。ねだるだけで何もしなかったのも私が一山いくらの人間に過ぎなかったからでしょう。

 なるべく人と会いたくない、人と会話せずに仕事をしたい。そう考えていると学者になろうと思っていました。昔から興味のあった数少ない植物と言うものを誰にも口出しされずに黙々と研究していけばいい、偶に論文でも書いて、少しだけ人と関わるだけ。それなら我慢できるはず、そう考えたのです。

 ただ、現実は私の想像通りにはいきませんでした。植物や本とだけ向き合えばいいと思っていたのに目の前に現れるのは人ばかり。やれ研究費用だの、機材だの、研究の許可だのと誰かと接しなければならないのです。

 大した結果も出していない女だからと無碍にされたことは数知れず。それでも自分の力が足りないと認めざるを得ないことばかり。

 全部捨てたい。でも、命は捨てたくない。

 そう考えて辿り着いたのが斗鬼和島です。江川さんからもたらされた情報を元に、斗鬼和花と言う不可思議な植物を調べるというのが表向きの理由でしたが、実際はそんなものあるわけがないと確信していました。ただ、誰もこない場所で静かにひっそりと暮らしたかった。誰の記憶にも残らずに、誰にも悲しまれずに、ただ天寿を全うする。
「あんたが碁羅さんか! 頼む!! 公子を蘇らせてくれ!!!」

 後ろ向きな想いだけを胸に秘めていた私に対し、江川さんは出会って早々深く頭を下げてきました。

「俺にとっては公子が全てなんだ。あいつの為なら何でもする!! もうあんたしか頼れる人がいないんだ!!」

 江川卓一さんは節操なく学者や医者に片っ端からメールを送り、斗鬼和花を見つけてくれと勝手に頼んでくる厚顔無恥な男だと噂になっていました。感情で動く、私の苦手な人種。その想いはほんの数秒でコンクリートより固くなりました。ただ、私はにわかに湧いた熱さに驚いてもいました。

 ああそう言えば私ってこんな風に頼られたことなかったな。そう気づいた時には彼の手を固く握りしめていたのです。 

「分かりました。全力を尽くして貴方の娘さんを蘇らせてみせます」

 その後、安置室で眠っている公子さんを見て私の想いは完全に固まり、そして確信しました。

 私がこの世に産まれたのは江川公子さんを生き返らせるためなんだということに。その為ならば私の人生全部を惜しみなく使いましょう。必要ならば如何なる犠牲も払いましょう。どうせ無価値と決めつけた人生、惜しいことは何もありません。

 真砂さんをじっくりと観察していると、頬がぐにゅりと歪んでいくのが分かりました。それを戻して誤魔化すように笑います。

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