ホーム›ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―›ep114 潜入
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ep114 潜入

目的地へと向かう途中にあるカーブミラーで確認すると確かに本来映るはずの位置にいても蒼達の姿は見えなかった。
 本当に能力がこれで発動しているんだと蒼は少し面白くなる。目的地まではもう少し距離があった。
 少し実験したいなと蒼の好奇心がウズウズする。

「天音さん、一回手放していい?」
「あ? ......あー、なるほどな。まぁ周りに人いないからいいぜ?」

 付き合いの長さから、蒼のしたいことを理解した天音が蒼の手を離す。その瞬間、カーブミラーに蒼の姿だけが映る。近くにいるはずの天音達は見えず、ただ道だけが続いている。
 瞳を閉じて聴覚を研ぎ澄ませながら、気配を辿るも見つからない。能力ってすげぇーなと蒼は少し感心した。

 その瞬間、腕が掴まれた。それと同時に天音達の姿が蒼の瞳に映り、代わりにミラーから姿が消えた。

「満足したか?」
「うん、サンキューな!」

 蒼は笑いながら天音を見る。そして、思わず吹き出した。先程までは能力の検証することしか考えてなかったが、冷静に見ると、強面の金髪天音に腕を掴まれている中性的な男昴の絵面が面白い。
 さらに反対側では蒼と手を繋いでいる。なんでこんな面白い状態を今まで気づかなかったんだと少し悔しくなる。

「いきなり、なんだよ蒼」
「いや、天音さん、両手塞がっていてもしもの時、どうすんのかと思ってさ」

 笑いながらも蒼はもう一つ浮かんだ疑問を口にする。

「はっ、そんときゃ、お前を放出するよ。戦力にならなそうな昴クンと隠れてるから、荒事は任せた」
「あー、なるなる。了解!」

 役割分担はすぐに決まった。確かにそれが1番手っ取り早いと蒼もすぐに納得する。
 緊張しているのか昴は進み始めてから一言も喋らない。ただ、歩幅を合わせて歩いているだけだ。

 蒼はチラリと天音越しに昴を盗み見る。強張った表情に少し浅い呼吸。見るからに緊張しているのがわかる。
 そのままの方がいいのか、緊張を解いた方がいいのか蒼は考える。

「あっ、そういえばすーさん」
「......なんですか?」
「建物の入口って扉どうなってる?」
「扉ですか? 普通に手動ですが......」

 いつもより少し声も固い。しかし、蒼の中で目的は侵入経路の確認に移っているため、昴の緊張は気にしないことにしていた。
 だから、迷わずに言葉を続ける。

「ってことは、姿消した状態で扉が開くと不自然だよな? 入口の近くに監視とかっている? あと外部ネットに繋がってないカメラとか」
「えっと......、すみません。防犯面は他の信頼できる方に任せていたので」
「おっ、それなら問題ないぜ? こっちのモンに頼んである」

 昴が申し訳なさそうに視線を逸らしていると、天音が豪快に笑った。いつの間にと少し蒼も驚く。
 前を向くと、目的の建物が見えて来た。この坂を下り切ったら到着だ。
 流石にこれからの行動を思い出して、蒼は少しだけ気持ちを引き締めた。

 建物の前に着くと、天音は時計を確認した。神庭会の内通者と時間で打ち合わせしているんだろうと当たりをつける。
 少しすると、アロハシャツを羽織り、サングラスをかけた優男が鼻歌を口ずさみながら歩いて来た。

「来たな」
「えっ――!?」

 優男を見て、天音はニヤリと笑う。反対に、昴の瞳は大きく見開かれている。
 結構な知り合いが内通者だったかとそれだけで蒼は察した。
 チラリと優男を見るが、蒼には見に覚えがない。神庭会も巨大な組織だなと母数の多さに少しだけ驚いた。

 優男はキョロキョロと周りを見回すと扉を開けた。1人が通るには不自然なほど、扉を大きく開けている。

「行くぞ」

 天音の声を合図に建物の中へと入る。建物の中は外見に比べてかなり清潔感があった。
 扉は少しすると閉められ、優男は奥へと消えていった。

「すーさん、ここは居住区?」
「いえ、ここは共同施設みたいなものです。居住区は森の中にいくつもの建物があり、そちらになります」
「へぇー。なら、ここは砦みたいなものか。森の中の城を守るための」
「......そうかもしれませんね」

 昴はどこか儚い笑顔を浮かべている。久しぶりの帰還に思うところでもあるんだろうなとあたりをつけながら、蒼は今後の動きを考える。

「とりあえず、あいつから聞いた過激派の作戦室候補に行くか」
「あっ、そこはわかってんだ」
「まあな、仕切ってるやつだけで、見分け方は知らん」
「へぇー。逆に俺は見分け方は知ってるぞ?」
「マジか?」
「おう。2人捕まえたから多分違いない。テントとライオンモチーフのタトゥーと、ミサンガだ」
「......」

 昴は蒼と天音の会話を聞いているだけで、入ろうとはせずに、無言で歩く。
 蒼も天音も気にせずに話しながら、天音の先導で目的の部屋を目指す。

「吹雪情報だから、確実だぜ?」
「そうか。なら今後外で見かけたら、片していいんだな」
「程々にだけどな」

 天音の能力で声が漏れないのは分かっているため、蒼も天音も特に気を使わずに情報交換をしていく。

「というか、天音さんの頭で場所覚えてるわけ?」
「蒼、お前は俺を舐めすぎてるぞ? 2階の右突き当たり、間違えようがない」
「それなら、問題ない」

 少し歩くと、階段が現れた。3人は顔を見合わせて階段を登る。優男以外の誰ともすれ違っていないことに蒼は微かな違和感を覚えながらも天音の腕を掴んでついていった。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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目的地へと向かう途中にあるカーブミラーで確認すると確かに本来映るはずの位置にいても蒼達の姿は見えなかった。
 本当に能力がこれで発動しているんだと蒼は少し面白くなる。目的地まではもう少し距離があった。
 少し実験したいなと蒼の好奇心がウズウズする。

「天音さん、一回手放していい?」
「あ? ......あー、なるほどな。まぁ周りに人いないからいいぜ?」

 付き合いの長さから、蒼のしたいことを理解した天音が蒼の手を離す。その瞬間、カーブミラーに蒼の姿だけが映る。近くにいるはずの天音達は見えず、ただ道だけが続いている。
 瞳を閉じて聴覚を研ぎ澄ませながら、気配を辿るも見つからない。能力ってすげぇーなと蒼は少し感心した。

 その瞬間、腕が掴まれた。それと同時に天音達の姿が蒼の瞳に映り、代わりにミラーから姿が消えた。

「満足したか?」
「うん、サンキューな!」

 蒼は笑いながら天音を見る。そして、思わず吹き出した。先程までは能力の検証することしか考えてなかったが、冷静に見ると、強面の金髪天音に腕を掴まれている中性的な男昴の絵面が面白い。
 さらに反対側では蒼と手を繋いでいる。なんでこんな面白い状態を今まで気づかなかったんだと少し悔しくなる。

「いきなり、なんだよ蒼」
「いや、天音さん、両手塞がっていてもしもの時、どうすんのかと思ってさ」

 笑いながらも蒼はもう一つ浮かんだ疑問を口にする。

「はっ、そんときゃ、お前を放出するよ。戦力にならなそうな昴クンと隠れてるから、荒事は任せた」
「あー、なるなる。了解!」

 役割分担はすぐに決まった。確かにそれが1番手っ取り早いと蒼もすぐに納得する。
 緊張しているのか昴は進み始めてから一言も喋らない。ただ、歩幅を合わせて歩いているだけだ。

 蒼はチラリと天音越しに昴を盗み見る。強張った表情に少し浅い呼吸。見るからに緊張しているのがわかる。
 そのままの方がいいのか、緊張を解いた方がいいのか蒼は考える。

「あっ、そういえばすーさん」
「......なんですか?」
「建物の入口って扉どうなってる?」
「扉ですか? 普通に手動ですが......」

 いつもより少し声も固い。しかし、蒼の中で目的は侵入経路の確認に移っているため、昴の緊張は気にしないことにしていた。
 だから、迷わずに言葉を続ける。

「ってことは、姿消した状態で扉が開くと不自然だよな? 入口の近くに監視とかっている? あと外部ネットに繋がってないカメラとか」
「えっと......、すみません。防犯面は他の信頼できる方に任せていたので」
「おっ、それなら問題ないぜ? こっちのモンに頼んである」

 昴が申し訳なさそうに視線を逸らしていると、天音が豪快に笑った。いつの間にと少し蒼も驚く。
 前を向くと、目的の建物が見えて来た。この坂を下り切ったら到着だ。
 流石にこれからの行動を思い出して、蒼は少しだけ気持ちを引き締めた。

 建物の前に着くと、天音は時計を確認した。神庭会の内通者と時間で打ち合わせしているんだろうと当たりをつける。
 少しすると、アロハシャツを羽織り、サングラスをかけた優男が鼻歌を口ずさみながら歩いて来た。

「来たな」
「えっ――!?」

 優男を見て、天音はニヤリと笑う。反対に、昴の瞳は大きく見開かれている。
 結構な知り合いが内通者だったかとそれだけで蒼は察した。
 チラリと優男を見るが、蒼には見に覚えがない。神庭会も巨大な組織だなと母数の多さに少しだけ驚いた。

 優男はキョロキョロと周りを見回すと扉を開けた。1人が通るには不自然なほど、扉を大きく開けている。

「行くぞ」

 天音の声を合図に建物の中へと入る。建物の中は外見に比べてかなり清潔感があった。
 扉は少しすると閉められ、優男は奥へと消えていった。

「すーさん、ここは居住区?」
「いえ、ここは共同施設みたいなものです。居住区は森の中にいくつもの建物があり、そちらになります」
「へぇー。なら、ここは砦みたいなものか。森の中の城を守るための」
「......そうかもしれませんね」

 昴はどこか儚い笑顔を浮かべている。久しぶりの帰還に思うところでもあるんだろうなとあたりをつけながら、蒼は今後の動きを考える。

「とりあえず、あいつから聞いた過激派の作戦室候補に行くか」
「あっ、そこはわかってんだ」
「まあな、仕切ってるやつだけで、見分け方は知らん」
「へぇー。逆に俺は見分け方は知ってるぞ?」
「マジか?」
「おう。2人捕まえたから多分違いない。テントとライオンモチーフのタトゥーと、ミサンガだ」
「......」

 昴は蒼と天音の会話を聞いているだけで、入ろうとはせずに、無言で歩く。
 蒼も天音も気にせずに話しながら、天音の先導で目的の部屋を目指す。

「吹雪情報だから、確実だぜ?」
「そうか。なら今後外で見かけたら、片していいんだな」
「程々にだけどな」

 天音の能力で声が漏れないのは分かっているため、蒼も天音も特に気を使わずに情報交換をしていく。

「というか、天音さんの頭で場所覚えてるわけ?」
「蒼、お前は俺を舐めすぎてるぞ? 2階の右突き当たり、間違えようがない」
「それなら、問題ない」

 少し歩くと、階段が現れた。3人は顔を見合わせて階段を登る。優男以外の誰ともすれ違っていないことに蒼は微かな違和感を覚えながらも天音の腕を掴んでついていった。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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