ep117 過去の映像
会議室のような部屋に男や女が10人程いる。年齢は10代後半〜50代ぐらいまでと幅広そうに見える。
一見、共通点のなさそうに思える面子が机を囲んで座っていた。
30代ぐらいの男性がホワイトボードの前に立っている。ホワイトボード上部には
目標:島からの脱出! 自由を手に入れろ
とデカデカと書かれていた。
「それでは、記念すべき第1回目の話し合いを始めましょうか」
1人だけ立っている青年は穏やかな笑顔で室内にいる他の人々を見回す。
「前回は、シージャックという単純な作戦で失敗しました。なので、今回は念入りに作戦を練りましょう」
青年はホワイトボードに《シージャック》と書き、大きくバツ印をつける。
「では何かいい案がある方は、挙手をお願いします」
青年の提案に待ってましたと言うように20代ぐらいの女性が手を上げた。
「皆様、ご存知の通り、私の能力は他者の能力がわかります。たまたまなのですが、一般人に扮した使える能力者を見かけました」
女性は一度言葉を切る。そして、書記であり議長である青年を真っ直ぐに見た。
「一つが物に能力を付与できる者。そしてもう一つが認識阻害の能力者です。この2人に協力して頂ければ島の上層部や特対の目を欺けるのではないでしょうか?」
女性の提案に室内は歓声が上がる。そして、また別の場所から手が上がった。議長の青年が、手を上げた10代後半の少年に発言を許可する。
「それなら、オレ、紙で物が作れる能力者を知ってる。そいつを"サーカス"に引き入れて、この森の裏手にある港に船を作ってもらうのはどう?」
「なるほど。確かにその3人の協力が得られれば、わざわざシージャックをしなくても島からの脱出の可能性は高くなりますね」
少年の言葉に青年は大きく頷き、ホワイトボードに記していく。
その後も会議は進んでいく。
そこで、映像は停止した。
◇◇◇◇
マウスを使用して、映像を止めた蓮を蒼は見た。
「こっから先は特に重要な会話してないからさ。次行ってよい?」
「おう!」
蒼が頷くと、蓮はカーソルを他の映像に動かして、クリックした。
また先程と同じ会議室の様子が映し出される。
◇◇◇◇
議長の青年が、ホワイトボードに『ノアズ計画』と記載していた。
「前回の話し合いで、計画名は決まりました。そして、本日は仲間の証を決めようと思います」
「仲間の証だァ?」
50代ぐらいの男性が机に肘をつきながら、怪訝そうに言う。
「はい。ここは沢山の能力者がいます。なりすましの防止です。ここにいる誰一人、欠けることなく脱出するために。......私は必要だと思います」
青年の発言に、会議室は沈黙する。
少しすると、20代ぐらいの前髪で目が隠れている青年が手を上げた。
「自分、能力を応用したら、偽造不可な刺青を入れることが可能ですぞ」
「刺青は嫌よ。消えないじゃない」
10代後半ぐらいの少女が、髪の毛を指に巻き付けて遊びながら言う。
青年はふははと笑うとすぐに反論した。
「ふふふ、それが大丈夫なのですぞ。自分の能力を使えば消すことも可能。無事に脱出できたら消すと言うのはどうですか」
「それなら、私達は問題ないわ」
少女の隣にいた20代ほどの女性も頷く。
「そうですか、ではデザインは次の会議までにそれぞれ持ち寄って、決めましょうか」
青年はホワイトボードに刺青、デザインは未定と書き込む。
「では、次に野良の能力者である2人をどうするか、ですね」
議長の青年の話に、椅子に座り黙り込んでいる30代程の茶髪の青年に視線が集中した。
「アンタ、洗脳だったよね。それで協力させればいいんじゃないか?」
「......」
黙る茶髪の男に、横に座っていた20代ぐらいの金髪の男が凄んだ。
「シージャックはアンタの計画で失敗したんだ。責任とって、人より働かないといけなくね?」
「......先に協力を要請するのは?」
「船を作成する奴は、まあいいだろう。命をかけるから信頼もできる。でも残りの2人はダメだ。"サーカス"の仲間ですらねぇ、裏切って情報を売られたらたまったもんじゃねぇからな」
金髪の男は忌々しそうに吐き捨てた。何人かは同意するように頷く。4月のシージャックの後に"サーカス"内のしかも島からの脱出を目指す一部から過激派と呼ばれている派閥内に裏切り者がいたことが判明したためだ。
議長の青年も頷いた。
「そうですね。洗脳して必要な紙にだけ、能力を使用していただきましょう。それと、もし認識阻害の能力をアクセサリーに付与して頂き、他を欺けるのか実験も必要ですね。それが成功したら、ここにいるメンバーにそのアクセサリーを配りましょう」
「アクセサリーなら、なんでもいいの? 趣味でボク、ミサンガ大量に作ったのがあるんだけど」
「なんでも大丈夫ですので、それを使用しましょうか」
20代程の短髪の女性が大きく手を挙げ提案をすると、それが通った。
◇◇◇◇
映像がまた、停止する。蓮は慣れた手つきで映像を切り替えた。
「次が1番核心について話しとるやつ。......リーダー大丈夫?」
何を思ったのか、蓮は昴を見る。蒼もつられて視線を向けると昴の顔色は明らかに悪い。
「大丈夫です。続けてください。私は知らなければならないと思いますので」
顔色は悪いが覚悟のこもった声で昴は頷いた。
「わかった。じゃ、流すな?」
そう宣言すると蓮は映像を再生させた。