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ep118 計画の確認

そこまで広くない会議室内に10人程の”サーカス”の一部では過激派と呼ばれるメンバーが集まっている。
 議長の青年は今までと変わらずにホワイトボードの前に立っている。

「では、まずは前回話が出たタトゥーのデザインですが、皆様ご存知の通り決定してすでに各自に彫られてると思います。何か、発言のある方はいますか?」

 議長の発言に、室内の誰も発言をしない。その様子を確認して、青年は大きく頷いた。

「問題ないですね。なにかありましたらまた個別に教えてください。それでは本題です」

 青年は言葉を切り、1人ずつの顔を見回していく。そして、青年の近くに座っているどこか少し緊張した面持ちの女性をみると笑顔で視線をとめった。

「こちらが、以前話のあった紙から物を作成できる能力を持たれている坂下綾乃さかしたあやのさんが本日より参加されます。”サーカス”の存在を知らなかっただけで、我々と思いは同じです。......よかったら自己紹介しますか?」

 青年は綾乃に確認する。綾乃は少し悩んでからうなずくと椅子から立ち上がった。
 そして、会議室内を見回して一礼をする。

「坂下です。私がただだらだらと生きていた時間、ここにいる人たちは戦っていたと知り、もっと早く知りたかったと思いました。それで気になってると思いますが、私の能力は言葉だけだとわかりづらいので実践します」

 綾乃はそう言うと、ポケットから1枚の紙を取り出した。そして器用に箱を折っていき、折り終わると机の上に置いた。
 紙で出来た箱の前で綾乃は祈る。すると紙が光り出した。

 そして光が消えるとそこには折られた箱ではなく、木製の箱があった。

「材質や色も変更可能です。1度もとに戻せばまた材質を変えることが可能です。紙なので最後は戻して再生や破棄すればばれません。今回はわかりやすく箱を作りましたが、その形を模していたら生き物以外ならばいけます。よく、シャーペンの代用で能力を使用していましたので、問題性はないと自負しています」

 綾乃はもう一度頭を下げると、椅子に座る。何人かの乾いた拍手の音が室内を反響する。
 拍手をした一人である議長の青年はホワイトボードにまとめた内容を書いていた。

「今回の作戦の要である脱出用の船を作成していただきます。ちょうど、この森の裏手に昔、港として使用されていたような場所があります。そこに彼女には船を作っていただこうと思っています」

 青年の言葉に、計画が順調に進んでいるとわかったのか至る所から歓声が上がる。
 
「そして、もう1つの本題です」

 議長は、他の人に背中を向けながら、ホワイトボードに『ミサンガ』と書き込むと、振り返った。

「そして、本日の最大の成果はこちらのミサンガとなります。今から配りますので皆様なくさないように。1人1個ずつしかございません」

 議長の言葉に近くで待機していた短髪の女性が待ってました! とばかりに立ち上がる。
 そのまま、バスケットを持ってひとりひとりに手渡しでバスケットの中に入っているカラフルなミサンガを渡していく。

「ボクの愛がこもってるんだから、なくさないでよね」

 笑顔で渡し終えるとまた、席に戻る。女性の腕にはすでにミサンガがついている。

「これはねぇ、わざと緩く作ったのさ! そしてボクが開発した伸縮性のある紐で作成した優れもの! 着脱自由だから、オシャレに肌身離さずにつけるのもよし! 必要時にのみつけるのもよしの優れもの! ミサンガなのに願掛け? そんなのボクの知ったことではないからね!」
 
 自分がつけているミサンガを自慢げに見せながら女性はそう言うと席に着いた。
 途端に騒がしかった部屋が静かになる。

 議長の青年は緩んだ空気を戻すように、一度咳払いをした。

「このミサンガには、認識阻害の効果があります。すでに実証して、能力を使用しても、ミサンガをつけている能力者以外には認知されないことが確認されています」

 議長の言葉に、先程以上に室内の空気がわく。

「さすがに、島の上層部にいると噂の能力者がわかる能力持ちの前では確認していませんが、これをつけていれば、我々は一般人とほとんど変わりないということになります。計画実行日まで動きやすくなると思いますよ」

 議長は笑いながらいう。

「では、ノアズ計画の確認といきましょうか。坂下さんには軽くしか伝えていませんでしたので」

 言葉を句切ると議長はホワイトボードにペンを置く。

「ノアズ計画は、連絡船を待たずにしてこちらで船を調達できないかという考えから生まれた計画です。ちょうど、この森の奥にある隠れ港跡は使えると前々から思っていましたが、船の当てがありませんでした。ところが、今回は坂下さんのおかげでそれがクリアしました」

 室内にいる全員を見回しながら議長の演説は続いた。誰一人として口を挟もうとはしない。

「ノアズ計画。ノアの箱舟と同じように、この島から選ばれた者だけが脱出する。この島にいる能力者は、島からの脱出を真剣に考えていない。だが、我々は違う。必死にこの島からの脱出を考えている、その時点で選ばれている。この"サーカス"の理念は一部素晴らしい。それでも、我々は搾取される側だ。なぜ、他を気にしないといけない、そうだろう?」

 先ほどまでの落ち着いた様子はなりを潜め、青年は力強く話を続けた。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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ep118 計画の確認

そこまで広くない会議室内に10人程の”サーカス”の一部では過激派と呼ばれるメンバーが集まっている。
 議長の青年は今までと変わらずにホワイトボードの前に立っている。

「では、まずは前回話が出たタトゥーのデザインですが、皆様ご存知の通り決定してすでに各自に彫られてると思います。何か、発言のある方はいますか?」

 議長の発言に、室内の誰も発言をしない。その様子を確認して、青年は大きく頷いた。

「問題ないですね。なにかありましたらまた個別に教えてください。それでは本題です」

 青年は言葉を切り、1人ずつの顔を見回していく。そして、青年の近くに座っているどこか少し緊張した面持ちの女性をみると笑顔で視線をとめった。

「こちらが、以前話のあった紙から物を作成できる能力を持たれている坂下綾乃さかしたあやのさんが本日より参加されます。”サーカス”の存在を知らなかっただけで、我々と思いは同じです。......よかったら自己紹介しますか?」

 青年は綾乃に確認する。綾乃は少し悩んでからうなずくと椅子から立ち上がった。
 そして、会議室内を見回して一礼をする。

「坂下です。私がただだらだらと生きていた時間、ここにいる人たちは戦っていたと知り、もっと早く知りたかったと思いました。それで気になってると思いますが、私の能力は言葉だけだとわかりづらいので実践します」

 綾乃はそう言うと、ポケットから1枚の紙を取り出した。そして器用に箱を折っていき、折り終わると机の上に置いた。
 紙で出来た箱の前で綾乃は祈る。すると紙が光り出した。

 そして光が消えるとそこには折られた箱ではなく、木製の箱があった。

「材質や色も変更可能です。1度もとに戻せばまた材質を変えることが可能です。紙なので最後は戻して再生や破棄すればばれません。今回はわかりやすく箱を作りましたが、その形を模していたら生き物以外ならばいけます。よく、シャーペンの代用で能力を使用していましたので、問題性はないと自負しています」

 綾乃はもう一度頭を下げると、椅子に座る。何人かの乾いた拍手の音が室内を反響する。
 拍手をした一人である議長の青年はホワイトボードにまとめた内容を書いていた。

「今回の作戦の要である脱出用の船を作成していただきます。ちょうど、この森の裏手に昔、港として使用されていたような場所があります。そこに彼女には船を作っていただこうと思っています」

 青年の言葉に、計画が順調に進んでいるとわかったのか至る所から歓声が上がる。
 
「そして、もう1つの本題です」

 議長は、他の人に背中を向けながら、ホワイトボードに『ミサンガ』と書き込むと、振り返った。

「そして、本日の最大の成果はこちらのミサンガとなります。今から配りますので皆様なくさないように。1人1個ずつしかございません」

 議長の言葉に近くで待機していた短髪の女性が待ってました! とばかりに立ち上がる。
 そのまま、バスケットを持ってひとりひとりに手渡しでバスケットの中に入っているカラフルなミサンガを渡していく。

「ボクの愛がこもってるんだから、なくさないでよね」

 笑顔で渡し終えるとまた、席に戻る。女性の腕にはすでにミサンガがついている。

「これはねぇ、わざと緩く作ったのさ! そしてボクが開発した伸縮性のある紐で作成した優れもの! 着脱自由だから、オシャレに肌身離さずにつけるのもよし! 必要時にのみつけるのもよしの優れもの! ミサンガなのに願掛け? そんなのボクの知ったことではないからね!」
 
 自分がつけているミサンガを自慢げに見せながら女性はそう言うと席に着いた。
 途端に騒がしかった部屋が静かになる。

 議長の青年は緩んだ空気を戻すように、一度咳払いをした。

「このミサンガには、認識阻害の効果があります。すでに実証して、能力を使用しても、ミサンガをつけている能力者以外には認知されないことが確認されています」

 議長の言葉に、先程以上に室内の空気がわく。

「さすがに、島の上層部にいると噂の能力者がわかる能力持ちの前では確認していませんが、これをつけていれば、我々は一般人とほとんど変わりないということになります。計画実行日まで動きやすくなると思いますよ」

 議長は笑いながらいう。

「では、ノアズ計画の確認といきましょうか。坂下さんには軽くしか伝えていませんでしたので」

 言葉を句切ると議長はホワイトボードにペンを置く。

「ノアズ計画は、連絡船を待たずにしてこちらで船を調達できないかという考えから生まれた計画です。ちょうど、この森の奥にある隠れ港跡は使えると前々から思っていましたが、船の当てがありませんでした。ところが、今回は坂下さんのおかげでそれがクリアしました」

 室内にいる全員を見回しながら議長の演説は続いた。誰一人として口を挟もうとはしない。

「ノアズ計画。ノアの箱舟と同じように、この島から選ばれた者だけが脱出する。この島にいる能力者は、島からの脱出を真剣に考えていない。だが、我々は違う。必死にこの島からの脱出を考えている、その時点で選ばれている。この"サーカス"の理念は一部素晴らしい。それでも、我々は搾取される側だ。なぜ、他を気にしないといけない、そうだろう?」

 先ほどまでの落ち着いた様子はなりを潜め、青年は力強く話を続けた。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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