ホーム›ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―›ep119 Xデー
← 次の話目次前の話 →

ep119 Xデー

議長の青年の演説は続く。

「そもそも、能力者だからと我々の意見は無視されて、この島に強制連行されるのがおかしい。まるで犯罪者扱いではないか。いや、犯罪者でももっとましな扱いを受けている気さえする。日陰で生きてきた我々だが、日の目を見てもいい。そうですよね?」

 その言葉に何人かが、そうだと頷く。その様子に同意を得られたと青年は満面の笑みを浮かべる。

「と、話がそれましたね。ノアズ計画についてでした」

 少し冷静になったのか青年は、咳払いをして少し恥ずかしそうにする。

「様々な情報や協力のおかげで、坂下さんという味方と船の入手をすることが出来ました。また、能力仕様を阻害できるミサンガの存在から、船に使用する紙には認識阻害の能力を紙自体が能力者以外には見えないという縛りで付与してもらっています。坂下さんにはこれから、船の捜索作業に入っていただきますが、かなり時間を要しますか?」
「そうですね、大きいものは自転車ぐらいなので、かなりの時間かかります。数ヶ月はいただければと」

 綾乃の発言に、少年が手を上げた。

「さっきの能力はすごかったけど、自転車や船は本当に折れるの?みんなが乗れるやつだけど」
「その不安はわかります。紙といっても様々な種類があります。ペーパークラフトで作成する予定なんです」
「おお! ペーパークラフトはボク興味ある! 作ってるのみたい! いい?」

 短髪の女性が楽しそうに口を挟む。

「問題ないですよ、見ていて楽しいかはわかりませんが......」
「大丈夫! 興味のあることに関してはボクはなんだって楽しめるから!」

 笑顔の女性に、青年は呆れたように声をかける。

「立華りっか、あまり坂下さんを困らせないでくださいよ?」
「別にいいじゃん、珠来じゅらい」

 短髪の女性――白鷺立華しらさぎりっかに青年――春宮珠来はるみやじゅらいは呆れたようにいうが、すぐに言い換えされる。

「全く、珠来がつまらない水を差してきたよ。ね、綾乃ちゃん」
「えっ......と?」
「坂下さん、そこの立華バカは無視してくださって問題ありません。話が進まなくなりますので」
「あっ、はい」

 綾乃は少し考えてから、あからさまに立華から視線をずらす。立華も、特に気にした様子もなく珠来を見た。

「では、続けますね」

 珠来も立華から視線をそらすと話を戻した。室内の人々はいつものことかというように気にしていない。話が戻ると気付いた面々が、そらしていた視線を珠来に戻した。

 珠来は1度咳払いをすると続ける。

「先程、話にありましたが、数ヶ月後が計画実行の期限です。現在は4月末。11月頃を目標と定めています。大丈夫そうですか?」
「そこまで、じゃなくても大丈夫です。遅くても7月には出来ると思います」

「そうですか! では、Xデーは7月といたしましょう」

 嬉しそうに珠来はホワイトボードに7月と書き込む。

「そーいえばさ、ここ外部とネットが繋がってないから、特待に漏れる心配はないけど、ここの引きこもりにこの話を聞かれる可能性は?」

 座っていた、30代ぐらいの青年が思い出したかのようにつぶやいた。

「今更ですね。大丈夫ですよ。蓮君は興味ないと思います。たとえ、聞いていたとしても誰にも言わないでしょう。リーダー......昴さんがいれば、また変わったかもしれませんが」
「確かに、レンレンも、ランランも藤澤姉弟は創始メンバーな事もあってすー君には絶対服従だもんね!」
「話がそれるので、立華は黙っていてください」
「はいはい」

 青年の疑問に、珠来が問題ないですよと安心させるように話す。それを聞き、立華がはいはいと手を大きく上げながら、補足をする。
 また横道にそれる可能性を考えたのか、珠来がすぐに釘を刺した。

「蓮君は、引き入れなくていいと思います。多分、興味もないと思いますから。それよりも、問題なのは吹雪ですね。あの情報屋がこの計画を察知できないはずがありません」

 吹雪の名前が出た瞬間に、室内は静まりかえった。

「確かに、あの情報屋なら知ってもおかしくないな。まさか仲間に入れろとくるか?」
「それはないと思います。なんだかんだで、ここでの仕事を気に入っている様子がありました。それに、ここでやりたいことがあると話していたのを聞いたことがあります。それに、吹雪なら自力で脱出できそうなイメージが勝手にあるんですよね」
 
 珠来の言葉に、催眠能力の青年が頷く。

「話した感じ、本島の方に行きたくないように思えました。なので、計画に対してどういうスタンスで来るかが怖いですね」

 青年の言葉に珠来も頷く。

「そこが一番の懸念材料ですね。前回のシージャックは他のものに邪魔されましたが、吹雪が裏で手を回していた可能性も出てきていますしね。しかし、どこにいるか分からない者に気を回すのもよくないです。とりあえずは、計画はこのまま進めます」

 珠来は少し考えてから自分の考えを口にした。

「とりあえず、今はきたる7月のXデーに向けた計画の続きといきましょう。といっても、あとは船が完成後の話になりますので、また完成しましたら集まりましょう」

 珠来のこの言葉が合図となり、その場は解散となった。

 
 ◇◇◇◇


 そして、映像は停止された。

「引きこもりってREN?」
「ごめん、この流れで第一声がそれなん、おかしない?」

 蒼がまず最初に思った感想を伝えると、蓮が呆れたようにつぶやいた。
シェア
前の話 →
ep118 計画の確認
← 次の話
ep120 話し合いは必要か?
ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム›ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―›ep119 Xデー
← 前の話目次次の話 →

ep119 Xデー

議長の青年の演説は続く。

「そもそも、能力者だからと我々の意見は無視されて、この島に強制連行されるのがおかしい。まるで犯罪者扱いではないか。いや、犯罪者でももっとましな扱いを受けている気さえする。日陰で生きてきた我々だが、日の目を見てもいい。そうですよね?」

 その言葉に何人かが、そうだと頷く。その様子に同意を得られたと青年は満面の笑みを浮かべる。

「と、話がそれましたね。ノアズ計画についてでした」

 少し冷静になったのか青年は、咳払いをして少し恥ずかしそうにする。

「様々な情報や協力のおかげで、坂下さんという味方と船の入手をすることが出来ました。また、能力仕様を阻害できるミサンガの存在から、船に使用する紙には認識阻害の能力を紙自体が能力者以外には見えないという縛りで付与してもらっています。坂下さんにはこれから、船の捜索作業に入っていただきますが、かなり時間を要しますか?」
「そうですね、大きいものは自転車ぐらいなので、かなりの時間かかります。数ヶ月はいただければと」

 綾乃の発言に、少年が手を上げた。

「さっきの能力はすごかったけど、自転車や船は本当に折れるの?みんなが乗れるやつだけど」
「その不安はわかります。紙といっても様々な種類があります。ペーパークラフトで作成する予定なんです」
「おお! ペーパークラフトはボク興味ある! 作ってるのみたい! いい?」

 短髪の女性が楽しそうに口を挟む。

「問題ないですよ、見ていて楽しいかはわかりませんが......」
「大丈夫! 興味のあることに関してはボクはなんだって楽しめるから!」

 笑顔の女性に、青年は呆れたように声をかける。

「立華りっか、あまり坂下さんを困らせないでくださいよ?」
「別にいいじゃん、珠来じゅらい」

 短髪の女性――白鷺立華しらさぎりっかに青年――春宮珠来はるみやじゅらいは呆れたようにいうが、すぐに言い換えされる。

「全く、珠来がつまらない水を差してきたよ。ね、綾乃ちゃん」
「えっ......と?」
「坂下さん、そこの立華バカは無視してくださって問題ありません。話が進まなくなりますので」
「あっ、はい」

 綾乃は少し考えてから、あからさまに立華から視線をずらす。立華も、特に気にした様子もなく珠来を見た。

「では、続けますね」

 珠来も立華から視線をそらすと話を戻した。室内の人々はいつものことかというように気にしていない。話が戻ると気付いた面々が、そらしていた視線を珠来に戻した。

 珠来は1度咳払いをすると続ける。

「先程、話にありましたが、数ヶ月後が計画実行の期限です。現在は4月末。11月頃を目標と定めています。大丈夫そうですか?」
「そこまで、じゃなくても大丈夫です。遅くても7月には出来ると思います」

「そうですか! では、Xデーは7月といたしましょう」

 嬉しそうに珠来はホワイトボードに7月と書き込む。

「そーいえばさ、ここ外部とネットが繋がってないから、特待に漏れる心配はないけど、ここの引きこもりにこの話を聞かれる可能性は?」

 座っていた、30代ぐらいの青年が思い出したかのようにつぶやいた。

「今更ですね。大丈夫ですよ。蓮君は興味ないと思います。たとえ、聞いていたとしても誰にも言わないでしょう。リーダー......昴さんがいれば、また変わったかもしれませんが」
「確かに、レンレンも、ランランも藤澤姉弟は創始メンバーな事もあってすー君には絶対服従だもんね!」
「話がそれるので、立華は黙っていてください」
「はいはい」

 青年の疑問に、珠来が問題ないですよと安心させるように話す。それを聞き、立華がはいはいと手を大きく上げながら、補足をする。
 また横道にそれる可能性を考えたのか、珠来がすぐに釘を刺した。

「蓮君は、引き入れなくていいと思います。多分、興味もないと思いますから。それよりも、問題なのは吹雪ですね。あの情報屋がこの計画を察知できないはずがありません」

 吹雪の名前が出た瞬間に、室内は静まりかえった。

「確かに、あの情報屋なら知ってもおかしくないな。まさか仲間に入れろとくるか?」
「それはないと思います。なんだかんだで、ここでの仕事を気に入っている様子がありました。それに、ここでやりたいことがあると話していたのを聞いたことがあります。それに、吹雪なら自力で脱出できそうなイメージが勝手にあるんですよね」
 
 珠来の言葉に、催眠能力の青年が頷く。

「話した感じ、本島の方に行きたくないように思えました。なので、計画に対してどういうスタンスで来るかが怖いですね」

 青年の言葉に珠来も頷く。

「そこが一番の懸念材料ですね。前回のシージャックは他のものに邪魔されましたが、吹雪が裏で手を回していた可能性も出てきていますしね。しかし、どこにいるか分からない者に気を回すのもよくないです。とりあえずは、計画はこのまま進めます」

 珠来は少し考えてから自分の考えを口にした。

「とりあえず、今はきたる7月のXデーに向けた計画の続きといきましょう。といっても、あとは船が完成後の話になりますので、また完成しましたら集まりましょう」

 珠来のこの言葉が合図となり、その場は解散となった。

 
 ◇◇◇◇


 そして、映像は停止された。

「引きこもりってREN?」
「ごめん、この流れで第一声がそれなん、おかしない?」

 蒼がまず最初に思った感想を伝えると、蓮が呆れたようにつぶやいた。
シェア
← 前の話
ep118 計画の確認
次の話 →
ep120 話し合いは必要か?
ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません