ホーム›ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―›ep112 神庭会
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ep112 神庭会

車内は少しの沈黙の後、天音が車のエンジン音により、音が戻ってきた。

「とりあえず、言われたとこまで走らせるぞ」
「よろしく!」
 
 蒼は天音が見えてないのをわかったうえで、親指を前に突き出した。
 車は静かに発進する。
 蒼は背もたれにもたれると、隣に座る昴を盗み見た。
 固い表情で窓の外を眺めている昴は、先ほどとは別の理由で緊張している様子がある。

 一瞬、考えたが蒼は声をかけるのをやめた。それよりも、この後の潜入をどうするか考える。
 確かに、天音が加わるのは選択肢が増えて楽に動ける。
 天音の能力は侵入や隠蔽にちょうどいい。侵入経路を探さずに正面突破も可能だ。

 しかし天音の力を借りるとなると、何かあった場合はその上である神庭会かんばかいが黙っていないだろう。
 神庭会と蒼の関係は比較的、良好だ。誘拐されかけていた神庭会の娘を、偶然通りかかった蒼が助けて以来の付き合いだ。

 それもあり、恩義を感じている神庭会の面々は蒼に甘い。それでも、身内に何かあった場合は牙を向くだろう。
 それが蒼だけの場合は問題なく、跳ね除けられる。しかし、師崎家や駿河家にまで手が及んだら、蒼1人ではどうすることもできない。
 駿河家に関しては唯華が手を打つだろう。だが師崎家や他の人達は蒼が守らないといけない。

 どうするかなと蒼は視線を窓の外へと移す。外の街並みはすぐに移り変わる。微かに窓ガラスに映る自分の顔をぼんやりと見ながら、考えて耽ていると横から視線を感じた。
 蒼は昴を見ると、いつも通りの笑顔で尋ねる。

「すーさん、どーした?」
「いえ、あの......」

 昴は車に乗った時からどこか居心地の悪そうな様子だったが、さらに顔色が悪くなっている。
 体調ではなくメンタル面だとわかっているから特に触れはしなかった。
 しかし、戸惑いながら何かを言おうとしている昴に少し興味を持ち、体ごと昴の方を向く。

「いえ、私はそんなにわかりやすいのでしょうか......」
「ん? あー、"サーカス"創始者だって話? それなら気にしなくていいって。普通は気づかれないからさ」
「そーそー、昴クン。ウチが能力者特化の組織だから知ってるだけ」
 
 運転席から天音がニヤニヤと笑いながら会話に入ってくる。その様子に思わず蒼は呆れてしまう。

「ってか、どうせ内通者モグラがいるんだろ?」
「ヒュー。流石、蒼。よくわかったな」

 口笛を鳴らす天音の後姿に呆れた視線を向けると、隣からゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。昴の顔色はさらに悪くなっている。

「......組織が大きくなるとそんなリスクまであったんですね」
「あはは。そのリスクに気付かない時点で、昴クン素人さんだねぇ」
「......」
「あっ、別に馬鹿にしてるわけじゃねぇぞ? あんたがそんなんだから、俺たちに潰されずに済んでるだからよぉ」
「えっ......?」

 昴が目を見開きながら前の座席に座る天音を見ている。その様子に、やっぱり昴は善人だなと改めて蒼は思った。
 少し考えれば分かることだ。能力者にとっての監獄であるこの島では能力者同士のコミュニティは重要だ。そして、島で生きると決めた能力者達はこれ以上の差別や締め付けが強くならないように見張る役割が必要となった。
 そこで出来たのが神庭会だ。

 長い年月を経て、神庭会をトップとした能力者のコミュニティは上手く回っていた。それが突如できた"サーカス"という能力者集団を野放しにするわけがない。
 きっと、創設されてすぐに内通者は送り込まれたのだろう。そして、今も"サーカス"内に潜伏してる。

 こりゃ、天音が噛ませろと言ったのも伝えてないが目的がバレてる感じかと蒼は小さく笑った。

「要は、昴クンが過激派を必死に抑えていたから、俺たちも"サーカス"はまだ敵ではないって思ってるからなぁ」
「......そうですか。私がしていたことは、無駄ではなかったんですね」

 昴の顔色はまだ悪い。それでも少し安心したような緊張感の抜けた笑みだった。
 これまで昴の中にあった蟠りが少し解消されたような表情を横目で見ながら、蒼はここを繋げてよかったなと静かに思う。
 
 神庭会は、指定暴力団であるがその実態は能力者の居場所の保持だ。警察と揉めることを見越して極道の形をとっているに過ぎない。
 "サーカス"と神庭会の根本は似ている。きっと上手くやるだろう。

「そうだな。まあ、今の状況からは今後はどうなるかはわからねぇがな」
「だから、今から計画を突き止めて、破滅させるために行くんだよな!」
「というかよお、蒼。お前は能力者じゃないし、関係ないんじゃねぇのかぁ?」
「能力者の知り合いは多いから、俺も無関係じゃないし、何かあったら矢面に立つ覚悟はある」
「へぇー、そりゃ心強い」

 天音はケラケラと笑う。

「......やはり、過激派は切るしかないのでしょうか」

 どこか、諦めきれない様子の昴にお人よしだなと蒼は笑う。

「別にまだ諦めなくてもいいんじゃね? まだ計画は実行されていない。その間に止めさえすればまだ、道はあると思うよ。まっ、ゆいは結構直前で止めて、破滅を狙ってるだろうけどさ」
「......そうですね」

 昴は苦虫を噛み潰したような苦しげな表情だ。こりゃ、何か唯華に言われているなと蒼は当たりをつける。

「まあ、話はここで一旦中止だ。目的地付近に着いたぜ」

 天音の笑い声と共に、車が停まった。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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車内は少しの沈黙の後、天音が車のエンジン音により、音が戻ってきた。

「とりあえず、言われたとこまで走らせるぞ」
「よろしく!」
 
 蒼は天音が見えてないのをわかったうえで、親指を前に突き出した。
 車は静かに発進する。
 蒼は背もたれにもたれると、隣に座る昴を盗み見た。
 固い表情で窓の外を眺めている昴は、先ほどとは別の理由で緊張している様子がある。

 一瞬、考えたが蒼は声をかけるのをやめた。それよりも、この後の潜入をどうするか考える。
 確かに、天音が加わるのは選択肢が増えて楽に動ける。
 天音の能力は侵入や隠蔽にちょうどいい。侵入経路を探さずに正面突破も可能だ。

 しかし天音の力を借りるとなると、何かあった場合はその上である神庭会かんばかいが黙っていないだろう。
 神庭会と蒼の関係は比較的、良好だ。誘拐されかけていた神庭会の娘を、偶然通りかかった蒼が助けて以来の付き合いだ。

 それもあり、恩義を感じている神庭会の面々は蒼に甘い。それでも、身内に何かあった場合は牙を向くだろう。
 それが蒼だけの場合は問題なく、跳ね除けられる。しかし、師崎家や駿河家にまで手が及んだら、蒼1人ではどうすることもできない。
 駿河家に関しては唯華が手を打つだろう。だが師崎家や他の人達は蒼が守らないといけない。

 どうするかなと蒼は視線を窓の外へと移す。外の街並みはすぐに移り変わる。微かに窓ガラスに映る自分の顔をぼんやりと見ながら、考えて耽ていると横から視線を感じた。
 蒼は昴を見ると、いつも通りの笑顔で尋ねる。

「すーさん、どーした?」
「いえ、あの......」

 昴は車に乗った時からどこか居心地の悪そうな様子だったが、さらに顔色が悪くなっている。
 体調ではなくメンタル面だとわかっているから特に触れはしなかった。
 しかし、戸惑いながら何かを言おうとしている昴に少し興味を持ち、体ごと昴の方を向く。

「いえ、私はそんなにわかりやすいのでしょうか......」
「ん? あー、"サーカス"創始者だって話? それなら気にしなくていいって。普通は気づかれないからさ」
「そーそー、昴クン。ウチが能力者特化の組織だから知ってるだけ」
 
 運転席から天音がニヤニヤと笑いながら会話に入ってくる。その様子に思わず蒼は呆れてしまう。

「ってか、どうせ内通者モグラがいるんだろ?」
「ヒュー。流石、蒼。よくわかったな」

 口笛を鳴らす天音の後姿に呆れた視線を向けると、隣からゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。昴の顔色はさらに悪くなっている。

「......組織が大きくなるとそんなリスクまであったんですね」
「あはは。そのリスクに気付かない時点で、昴クン素人さんだねぇ」
「......」
「あっ、別に馬鹿にしてるわけじゃねぇぞ? あんたがそんなんだから、俺たちに潰されずに済んでるだからよぉ」
「えっ......?」

 昴が目を見開きながら前の座席に座る天音を見ている。その様子に、やっぱり昴は善人だなと改めて蒼は思った。
 少し考えれば分かることだ。能力者にとっての監獄であるこの島では能力者同士のコミュニティは重要だ。そして、島で生きると決めた能力者達はこれ以上の差別や締め付けが強くならないように見張る役割が必要となった。
 そこで出来たのが神庭会だ。

 長い年月を経て、神庭会をトップとした能力者のコミュニティは上手く回っていた。それが突如できた"サーカス"という能力者集団を野放しにするわけがない。
 きっと、創設されてすぐに内通者は送り込まれたのだろう。そして、今も"サーカス"内に潜伏してる。

 こりゃ、天音が噛ませろと言ったのも伝えてないが目的がバレてる感じかと蒼は小さく笑った。

「要は、昴クンが過激派を必死に抑えていたから、俺たちも"サーカス"はまだ敵ではないって思ってるからなぁ」
「......そうですか。私がしていたことは、無駄ではなかったんですね」

 昴の顔色はまだ悪い。それでも少し安心したような緊張感の抜けた笑みだった。
 これまで昴の中にあった蟠りが少し解消されたような表情を横目で見ながら、蒼はここを繋げてよかったなと静かに思う。
 
 神庭会は、指定暴力団であるがその実態は能力者の居場所の保持だ。警察と揉めることを見越して極道の形をとっているに過ぎない。
 "サーカス"と神庭会の根本は似ている。きっと上手くやるだろう。

「そうだな。まあ、今の状況からは今後はどうなるかはわからねぇがな」
「だから、今から計画を突き止めて、破滅させるために行くんだよな!」
「というかよお、蒼。お前は能力者じゃないし、関係ないんじゃねぇのかぁ?」
「能力者の知り合いは多いから、俺も無関係じゃないし、何かあったら矢面に立つ覚悟はある」
「へぇー、そりゃ心強い」

 天音はケラケラと笑う。

「......やはり、過激派は切るしかないのでしょうか」

 どこか、諦めきれない様子の昴にお人よしだなと蒼は笑う。

「別にまだ諦めなくてもいいんじゃね? まだ計画は実行されていない。その間に止めさえすればまだ、道はあると思うよ。まっ、ゆいは結構直前で止めて、破滅を狙ってるだろうけどさ」
「......そうですね」

 昴は苦虫を噛み潰したような苦しげな表情だ。こりゃ、何か唯華に言われているなと蒼は当たりをつける。

「まあ、話はここで一旦中止だ。目的地付近に着いたぜ」

 天音の笑い声と共に、車が停まった。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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