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ep125 今後、どうするか

 モニターには、無人の会議室が映されている。しばらく見守るも誰も戻ってくる気配がないのを感じて、蓮がキーボードに何かを打ち込む。するとまたモニターは淡く光った。

「あっ、映像戻ってるじゃん」

 光が消えたあとも、画面には会議室の映像が映し出されている。きっと、能力が解除されたのだろう。

「......能力者誘拐計画」

 ぼそりと天音がつぶやいた。その場にいる誰もが今の盗み聞きで引っかかっていたことだろう。
 蒼は顎に手を当てる。

「本島の奴らが計画してるって言ってたよな。だったら、俺らがやれることはないと思うぜ? 下手に特対と協力しても信頼関係のないうわべだけの協力は破綻しか見えねぇし。特対に任すのが一番だろ」

 そう言いながら、蒼はある程度頭の中で整理する。唯華が本腰を入れて関わっているのはこれだと理解できた。
 唯華にとっての逃げついた先が御影島だ。蒼にとってのブレスレットと帽子お守り、圭哉と唯華依存先と同じ役割のはずだ。それなら唯華が優先的に動くことにも納得ができた。

 ノアズ計画は能力者が勝手に外に逃げるだけ。しかし、能力者誘拐事件は違う。場合により、この島のあり方が変わってしまう可能性すらある。非能力者にとっては変わらないことだが、この島の安寧を自分のためだけに守っている唯華としては溜まったものじゃないはずだ。
 優先順位が納得いくと、もう1つ分かった。

 唯華はこの本島の計画を"サーカス"が知ってることを知っている。
 蒼に関わるなといったのは、実はノアズ計画じゃなくてこっちだったのではないかと仮定できた。
 じゃなかったら、いくら相手の心を折るためとはいえ、関わらせたくない蒼の前であんなにも話すわけがない。
 
 蒼にノアズ計画を追わせて、本島の計画に関わらせないことを前提で動いていたのなら納得がいく。そして、様子観察で対応を蒼に丸投げした可能性が高い。
 シナリオ通りに行かないことを嫌っている唯華は、シナリオを描いていないときは寛容だ。基本それは自分が関わっていないからという理由でもあるのだが。
 
 ずっとどこか引っかかっていたことがわかり、蒼は納得した。しかし、どちらかというと本島の計画の方に関わりたいのが正直なところだ。
 蒼にとっても大切な能力者は多い。でもここまで来た以上、ノアズ計画にも噛んでいたい。

「どうすっかなー」

 気付くと無意識に言葉をこぼしていた。3人が一斉に蒼を見る。
 
「何がだ?」
「あっ、こっちの話! 誘拐事件も気になるけどまだ計画があるかもって話だからさ、いまは確実に進行しているノアズ計画をなんとかするのが先じゃねぇか? 実行されるのは確実じゃん?」
「そやね、実際に船制作しとるからなー」

 蒼の意見に蓮は頷きながら事実を伝える。昴は少し悩んでから室内3人の顔を見回すとまだ悪い顔色ではあるがしっかりとした口調で考えを口にした。

「私は、まずはこの計画を止めたいです。成功、失敗ではなく実行されるのが問題です。気付かれてしまえば、能力者の締め付けが酷くなりますし、これで"サーカス"が確実に特対に目をつけられる可能性があります。そうしたら、きっと迫害の未来しか見えません」
「......」

 全員無言となる。全員が想像できたことを昴が言語化したのもあるが、この計画を止めないと島内の能力者達への扱いがどうなるか具体的に突きつけられたからだろう。

「まぁ、今できることは限られてるからさ」
 
 蒼は笑いながら腕を後ろに回して腕を組む。

「とりあえず、天音さんは神庭会への情報提供。昴さんは......どうやってまた抜け出すかを俺と相談だな。で、RENは決行日がわかったら連絡! よし役割分担もできたし、帰るか!」

 いろいろと分かりすっきりした蒼は、扉へと後ろ向きで歩きながら、昴と天音を見る。

「あっ......」

 見送ろうとした蓮だったが、机の下にある小型冷蔵庫の中身を確認して間抜けな声を上げる。

「どうしたんですか?」
「いや、たいしたことじゃないんよ、エナドリ切らしとるな思って」
「それは一大事じゃん! エナドリ切れのRENは目も当てられない」

 蒼は扉から離れて、ケラケラと笑う。

「別に、切れても1日は問題ないかんな」
「1日だけ!? 依存症だろ、それ」

 天音が驚いて、蓮を上から下へと舐めるように見る。

「今はまだ若さでなんとかなってるかもしれないが、そのうち体を壊すぞ」
「あっ、心配どうも。でも大丈夫なんで」

 蓮は軽く天音に頭を下げると、棚にぶら下がっていたボディバックを取った。

「どのみち能力で外にでるんやろ? 俺が隠れ蓑になるわ」
「いいんですか?」
「いいとか悪いじゃなくて、俺が困るんよ」

 遠慮がちに言う昴に蓮は笑う。

「よし、そうと決まれば出るぞ」

 天音の合図でそれぞれ蒼と昴は天音の手を取る。

「うわっ、手繋ぐん?」
「触れてないと相手にまで効果が出ないからな」

 若干引いた様子の蓮に天音は言い慣れているようにため息をつく。

「で、これから俺らは姿を消す。お前が出て10秒以内には扉をくぐるからそれまでは開けておいてくれ」
「わかった。じゃ、3人が消えたら部屋を出るよ」
「助かる」

 そして天音が能力を発動したようで、キョロキョロと周りを見てから蓮は扉を開ける。3人は慌てて外に出た。ゆっくりと10秒を数えてくれたようで扉を出てからも少し余裕があった。
 蓮は取り出した鍵で部屋の施錠を行うと、そのまま歩き出す。蒼達もその後ろに続いた。

 長い廊下を無言で歩き、正面玄関までたどり着く。先程と同様に蓮は扉をゆっくりと開ける。そして蓮が出てから蒼達も外に出る。
 建物外から出ると新鮮な空気が入ってくる。車を止めた駐車場までまだ距離があるので離れはしないが、3人とも蓮の背中を見送った。

 蓮は少し離れたコンビニで大量にいつも買っているらしい。普段なら、姉といっしょに行き、テレポートで戻ってくるのだが、最近は姉がいないため、大量買いができないと部屋を出る前にぼやいていた。
 3人は蓮の背中が遠くなるのを確認すると、誰からともなく駐車場に向かい歩き出した。
 まぁ、手を繋いでいたため、無言で進まれればついていくしかなかったともいえるのだが、蒼はそこは考えないことにした。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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ep125 今後、どうするか

 モニターには、無人の会議室が映されている。しばらく見守るも誰も戻ってくる気配がないのを感じて、蓮がキーボードに何かを打ち込む。するとまたモニターは淡く光った。

「あっ、映像戻ってるじゃん」

 光が消えたあとも、画面には会議室の映像が映し出されている。きっと、能力が解除されたのだろう。

「......能力者誘拐計画」

 ぼそりと天音がつぶやいた。その場にいる誰もが今の盗み聞きで引っかかっていたことだろう。
 蒼は顎に手を当てる。

「本島の奴らが計画してるって言ってたよな。だったら、俺らがやれることはないと思うぜ? 下手に特対と協力しても信頼関係のないうわべだけの協力は破綻しか見えねぇし。特対に任すのが一番だろ」

 そう言いながら、蒼はある程度頭の中で整理する。唯華が本腰を入れて関わっているのはこれだと理解できた。
 唯華にとっての逃げついた先が御影島だ。蒼にとってのブレスレットと帽子お守り、圭哉と唯華依存先と同じ役割のはずだ。それなら唯華が優先的に動くことにも納得ができた。

 ノアズ計画は能力者が勝手に外に逃げるだけ。しかし、能力者誘拐事件は違う。場合により、この島のあり方が変わってしまう可能性すらある。非能力者にとっては変わらないことだが、この島の安寧を自分のためだけに守っている唯華としては溜まったものじゃないはずだ。
 優先順位が納得いくと、もう1つ分かった。

 唯華はこの本島の計画を"サーカス"が知ってることを知っている。
 蒼に関わるなといったのは、実はノアズ計画じゃなくてこっちだったのではないかと仮定できた。
 じゃなかったら、いくら相手の心を折るためとはいえ、関わらせたくない蒼の前であんなにも話すわけがない。
 
 蒼にノアズ計画を追わせて、本島の計画に関わらせないことを前提で動いていたのなら納得がいく。そして、様子観察で対応を蒼に丸投げした可能性が高い。
 シナリオ通りに行かないことを嫌っている唯華は、シナリオを描いていないときは寛容だ。基本それは自分が関わっていないからという理由でもあるのだが。
 
 ずっとどこか引っかかっていたことがわかり、蒼は納得した。しかし、どちらかというと本島の計画の方に関わりたいのが正直なところだ。
 蒼にとっても大切な能力者は多い。でもここまで来た以上、ノアズ計画にも噛んでいたい。

「どうすっかなー」

 気付くと無意識に言葉をこぼしていた。3人が一斉に蒼を見る。
 
「何がだ?」
「あっ、こっちの話! 誘拐事件も気になるけどまだ計画があるかもって話だからさ、いまは確実に進行しているノアズ計画をなんとかするのが先じゃねぇか? 実行されるのは確実じゃん?」
「そやね、実際に船制作しとるからなー」

 蒼の意見に蓮は頷きながら事実を伝える。昴は少し悩んでから室内3人の顔を見回すとまだ悪い顔色ではあるがしっかりとした口調で考えを口にした。

「私は、まずはこの計画を止めたいです。成功、失敗ではなく実行されるのが問題です。気付かれてしまえば、能力者の締め付けが酷くなりますし、これで"サーカス"が確実に特対に目をつけられる可能性があります。そうしたら、きっと迫害の未来しか見えません」
「......」

 全員無言となる。全員が想像できたことを昴が言語化したのもあるが、この計画を止めないと島内の能力者達への扱いがどうなるか具体的に突きつけられたからだろう。

「まぁ、今できることは限られてるからさ」
 
 蒼は笑いながら腕を後ろに回して腕を組む。

「とりあえず、天音さんは神庭会への情報提供。昴さんは......どうやってまた抜け出すかを俺と相談だな。で、RENは決行日がわかったら連絡! よし役割分担もできたし、帰るか!」

 いろいろと分かりすっきりした蒼は、扉へと後ろ向きで歩きながら、昴と天音を見る。

「あっ......」

 見送ろうとした蓮だったが、机の下にある小型冷蔵庫の中身を確認して間抜けな声を上げる。

「どうしたんですか?」
「いや、たいしたことじゃないんよ、エナドリ切らしとるな思って」
「それは一大事じゃん! エナドリ切れのRENは目も当てられない」

 蒼は扉から離れて、ケラケラと笑う。

「別に、切れても1日は問題ないかんな」
「1日だけ!? 依存症だろ、それ」

 天音が驚いて、蓮を上から下へと舐めるように見る。

「今はまだ若さでなんとかなってるかもしれないが、そのうち体を壊すぞ」
「あっ、心配どうも。でも大丈夫なんで」

 蓮は軽く天音に頭を下げると、棚にぶら下がっていたボディバックを取った。

「どのみち能力で外にでるんやろ? 俺が隠れ蓑になるわ」
「いいんですか?」
「いいとか悪いじゃなくて、俺が困るんよ」

 遠慮がちに言う昴に蓮は笑う。

「よし、そうと決まれば出るぞ」

 天音の合図でそれぞれ蒼と昴は天音の手を取る。

「うわっ、手繋ぐん?」
「触れてないと相手にまで効果が出ないからな」

 若干引いた様子の蓮に天音は言い慣れているようにため息をつく。

「で、これから俺らは姿を消す。お前が出て10秒以内には扉をくぐるからそれまでは開けておいてくれ」
「わかった。じゃ、3人が消えたら部屋を出るよ」
「助かる」

 そして天音が能力を発動したようで、キョロキョロと周りを見てから蓮は扉を開ける。3人は慌てて外に出た。ゆっくりと10秒を数えてくれたようで扉を出てからも少し余裕があった。
 蓮は取り出した鍵で部屋の施錠を行うと、そのまま歩き出す。蒼達もその後ろに続いた。

 長い廊下を無言で歩き、正面玄関までたどり着く。先程と同様に蓮は扉をゆっくりと開ける。そして蓮が出てから蒼達も外に出る。
 建物外から出ると新鮮な空気が入ってくる。車を止めた駐車場までまだ距離があるので離れはしないが、3人とも蓮の背中を見送った。

 蓮は少し離れたコンビニで大量にいつも買っているらしい。普段なら、姉といっしょに行き、テレポートで戻ってくるのだが、最近は姉がいないため、大量買いができないと部屋を出る前にぼやいていた。
 3人は蓮の背中が遠くなるのを確認すると、誰からともなく駐車場に向かい歩き出した。
 まぁ、手を繋いでいたため、無言で進まれればついていくしかなかったともいえるのだが、蒼はそこは考えないことにした。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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