ホーム›ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―›ep124 盗み聞き
目次前の話 →

ep124 盗み聞き

 蓮は椅子に座ったまま、蒼と天音を見る。

「いろいろとめんどいからさ、今から見たことは墓場まで持って行ってくれると嬉しいんよ。俺も天童さんだっけ?の秘密も隼斗さんの秘密も知っとるけど、今後も黙っているからさ」
「......」

 天音は無言で蓮を見る。強面の天音に凄まれても、蓮は表情一切変えない。

「それは、お前の能力に関係あるのか」
「そっ、この能力実は隼斗さんには偽ってるんよ。本当の使い方を知っとるのはリーダーと姉貴ぐらいだからさ」

 蓮は天音から視線をそらさない。

「......分かった。ただ、絶対は保証できないぜ? お前が俺達の敵に回るときは、俺達の正義のためにバラすからな」
「うん、それぐらいはっきり言ってくれた方が逆に信頼できるわ。アビスもいいよな」
「おう!」

 蓮が蒼に視線を動かしたため、大きく頷いた。必要に駆られなければ、蒼も人には言わないだろう。唯華に関しては身内認定が強すぎて、よく口が滑るがそれでも境界は考えている。

「なら、いいや」

 蓮は体ごとモニターに映すと首にかけていたヘッドホンを装着して、まぶたを閉じる。
 まるで、視覚と聴覚を無理矢理に遮断したみたいだなと蒼は判断する。 
 気分的な問題か、3人も無言になり蓮の一挙手一投足を見守る。

「......あった」

 蓮が突然、つぶやく。そして瞳を開くと、キーボードに何かを打ち込んだ。その瞬間、一番大きなモニターが青白い光を発したと同時に映像が映し出された。
 モニターには先程の会議室と2人が映っている。しかし、先程までは隠しカメラの映像のようであったが、現在映し出されているのはまるで俯瞰しているような映像だった。
 
 蓮がヘッドフォンを耳から外して、首にかける。マウスを動かすと映像の画角が変わる。少し、遅れてスピーカーからも音声が流れてきた。

「過去の映像は見えないんだけど、これリアタイのね。行ったことがあって、とあることをやった場所の映像は現在のみを確認できて、モニターを通して他人にも教えられるんよ。それでモニターを画面録画すれば残すことも可なんよ」

 蓮は説明しながら、キーボードを叩き、画面録画を開始していた。
 使い勝手があるのか、ないのかよくわかんない能力の人本当に多いよなと思いながら、蒼はモニターに集中した。


◇◇◇◇


「おい、本気かそれは!」

 慎吾が珠来の襟首を掴み、怒鳴った。

「本気ですから、聞かれる可能性は潰してから話してるんですよ」

 襟首を捕まれているのに珠来は余裕そうに笑っている。それがさらに珠来の不気味さを後押ししていた。

「もともと私がノアズ計画を思いついたのは、この話を偶然耳にしたからです。きっと、しばらくは特対が大規模に動くことはできないのでこのチャンスは逃したくないのですよ」
「そうだが、お前は戦争でも仕掛けるつもりか?」
「私は、違いますよ。ただ、そういう計画が本島の方であるそうなので、それを利用して島から脱出したいだけです」

 柔らかい微笑みを浮かべながら、自身の襟首を掴んでいる腕を軽く叩く。

「とりあえず離してください。今回この話をあなたにしたのは、失敗したとはいえ、一時的に今の私たちよりも大人数をまとめていた実績があるからです。頭が2つあれば、上手くまとまらない可能性がある。ですが、あなたは前回の責任で強くはでられない。それでも、もしものことがあった時の対応力は買っています。もし分断されることがあれば、後を頼みたいと思いまして」

 慎吾は腕を放しながら胡散臭そうだ。

「それは、もしもの時は自分は離脱するから後は頼んだっていつもの無責任か?」
「それは、ご想像にお任せしますよ」

 慎吾の嫌みも気にしたそぶりもなく珠来は受け入れた。

「とりあえず、7月中に船が完成するのは喜ばしいです。特対のかかりきりになるであろう案件もその周辺のはずですから。我々は、ただ騒ぎに応じればいい」

 楽しそうに顔を歪めながら珠来は一人の観客のために演説を続ける。

「これは、好機なんですよ。この機会を逃せば同じような好条件が現れるか分からない。ある意味最後のチャンスかもしれないんですよ」
「興奮してるのはわかったが、落ち着け。まだ船は完成してないし、1ヶ月も先の話だ」
「ええ、分かっていますよ。とりあえず、今話したことは他言無用でお願いします」
「わかってる。流石にまだ確定ではないとはいえ、それが本当なら俺も少し考えないといけないしな」

 髪をかき混ぜながら慎吾は肯定する。

「それにしても、何をどうしたら、本島の上層部が島の能力者を浚う話になるんだ? そもそも奴らが俺達を島に閉じ込めているのに」
「本当に、それは疑問です。まぁ、連れてこられた方に関しては能力者リストなるものがあるそうなので、利用できるものを引き抜くのかもしれませんが......」
「協力するとは思えないがな」

 ため息交じりの慎吾に、珠来も同意する。

「全くです。結局我々には人権がないのですよ。だから脱出し、外国へ逃げる」
「それは同意だ。吹雪の情報で能力者は日本人の遺伝子に関連して生まれるのか、外国にはほとんどいないと聞いた。日系人でも能力者が生まれる割合は極小だそうだ」
「なるほど。自由ですが、能力の存在を気付かれないように気をつけることは、この島と一緒なのですね」

 愉快そうな珠来に、話はもう終わりだろうと確認し、慎吾は会議室を後にする。

「ええ、私のために動いてくださいね、慎吾さん」

 1人残された室内で歪んだ笑みを浮かべながら、珠来も少し遅れて入口のカメラが仕掛けられている付近を見てから室内を後にした。
シェア
前の話 →
ep123 腹の探り合い
最新話です
目次に戻る
ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません

ep124 盗み聞き

 蓮は椅子に座ったまま、蒼と天音を見る。

「いろいろとめんどいからさ、今から見たことは墓場まで持って行ってくれると嬉しいんよ。俺も天童さんだっけ?の秘密も隼斗さんの秘密も知っとるけど、今後も黙っているからさ」
「......」

 天音は無言で蓮を見る。強面の天音に凄まれても、蓮は表情一切変えない。

「それは、お前の能力に関係あるのか」
「そっ、この能力実は隼斗さんには偽ってるんよ。本当の使い方を知っとるのはリーダーと姉貴ぐらいだからさ」

 蓮は天音から視線をそらさない。

「......分かった。ただ、絶対は保証できないぜ? お前が俺達の敵に回るときは、俺達の正義のためにバラすからな」
「うん、それぐらいはっきり言ってくれた方が逆に信頼できるわ。アビスもいいよな」
「おう!」

 蓮が蒼に視線を動かしたため、大きく頷いた。必要に駆られなければ、蒼も人には言わないだろう。唯華に関しては身内認定が強すぎて、よく口が滑るがそれでも境界は考えている。

「なら、いいや」

 蓮は体ごとモニターに映すと首にかけていたヘッドホンを装着して、まぶたを閉じる。
 まるで、視覚と聴覚を無理矢理に遮断したみたいだなと蒼は判断する。 
 気分的な問題か、3人も無言になり蓮の一挙手一投足を見守る。

「......あった」

 蓮が突然、つぶやく。そして瞳を開くと、キーボードに何かを打ち込んだ。その瞬間、一番大きなモニターが青白い光を発したと同時に映像が映し出された。
 モニターには先程の会議室と2人が映っている。しかし、先程までは隠しカメラの映像のようであったが、現在映し出されているのはまるで俯瞰しているような映像だった。
 
 蓮がヘッドフォンを耳から外して、首にかける。マウスを動かすと映像の画角が変わる。少し、遅れてスピーカーからも音声が流れてきた。

「過去の映像は見えないんだけど、これリアタイのね。行ったことがあって、とあることをやった場所の映像は現在のみを確認できて、モニターを通して他人にも教えられるんよ。それでモニターを画面録画すれば残すことも可なんよ」

 蓮は説明しながら、キーボードを叩き、画面録画を開始していた。
 使い勝手があるのか、ないのかよくわかんない能力の人本当に多いよなと思いながら、蒼はモニターに集中した。


◇◇◇◇


「おい、本気かそれは!」

 慎吾が珠来の襟首を掴み、怒鳴った。

「本気ですから、聞かれる可能性は潰してから話してるんですよ」

 襟首を捕まれているのに珠来は余裕そうに笑っている。それがさらに珠来の不気味さを後押ししていた。

「もともと私がノアズ計画を思いついたのは、この話を偶然耳にしたからです。きっと、しばらくは特対が大規模に動くことはできないのでこのチャンスは逃したくないのですよ」
「そうだが、お前は戦争でも仕掛けるつもりか?」
「私は、違いますよ。ただ、そういう計画が本島の方であるそうなので、それを利用して島から脱出したいだけです」

 柔らかい微笑みを浮かべながら、自身の襟首を掴んでいる腕を軽く叩く。

「とりあえず離してください。今回この話をあなたにしたのは、失敗したとはいえ、一時的に今の私たちよりも大人数をまとめていた実績があるからです。頭が2つあれば、上手くまとまらない可能性がある。ですが、あなたは前回の責任で強くはでられない。それでも、もしものことがあった時の対応力は買っています。もし分断されることがあれば、後を頼みたいと思いまして」

 慎吾は腕を放しながら胡散臭そうだ。

「それは、もしもの時は自分は離脱するから後は頼んだっていつもの無責任か?」
「それは、ご想像にお任せしますよ」

 慎吾の嫌みも気にしたそぶりもなく珠来は受け入れた。

「とりあえず、7月中に船が完成するのは喜ばしいです。特対のかかりきりになるであろう案件もその周辺のはずですから。我々は、ただ騒ぎに応じればいい」

 楽しそうに顔を歪めながら珠来は一人の観客のために演説を続ける。

「これは、好機なんですよ。この機会を逃せば同じような好条件が現れるか分からない。ある意味最後のチャンスかもしれないんですよ」
「興奮してるのはわかったが、落ち着け。まだ船は完成してないし、1ヶ月も先の話だ」
「ええ、分かっていますよ。とりあえず、今話したことは他言無用でお願いします」
「わかってる。流石にまだ確定ではないとはいえ、それが本当なら俺も少し考えないといけないしな」

 髪をかき混ぜながら慎吾は肯定する。

「それにしても、何をどうしたら、本島の上層部が島の能力者を浚う話になるんだ? そもそも奴らが俺達を島に閉じ込めているのに」
「本当に、それは疑問です。まぁ、連れてこられた方に関しては能力者リストなるものがあるそうなので、利用できるものを引き抜くのかもしれませんが......」
「協力するとは思えないがな」

 ため息交じりの慎吾に、珠来も同意する。

「全くです。結局我々には人権がないのですよ。だから脱出し、外国へ逃げる」
「それは同意だ。吹雪の情報で能力者は日本人の遺伝子に関連して生まれるのか、外国にはほとんどいないと聞いた。日系人でも能力者が生まれる割合は極小だそうだ」
「なるほど。自由ですが、能力の存在を気付かれないように気をつけることは、この島と一緒なのですね」

 愉快そうな珠来に、話はもう終わりだろうと確認し、慎吾は会議室を後にする。

「ええ、私のために動いてくださいね、慎吾さん」

 1人残された室内で歪んだ笑みを浮かべながら、珠来も少し遅れて入口のカメラが仕掛けられている付近を見てから室内を後にした。
シェア
最新話です
目次に戻る
ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません