ホーム›ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―›ep133 映像を確認しよう
← 次の話目次前の話 →

ep133 映像を確認しよう

 階段を2階まで上りきると、道徳は突き当たりの部屋を目指した。突き当たりの部屋の前では既に天音と隼斗が待機していた。

「おう、待っていたのか」
「何回に分けて入るより、まとめての方が良いと思ったので」
「そうか。......琉架、いるか?」

 天音の返答を聞き、道徳は頷いてから扉を叩いて声をかける。
 少し遅れて、内側から扉が開いた。

「......父さん、どうした?」

 部屋の中から、背の高い優男が出てきた。久しぶりに琉架を見たなと蒼は思う。大人数で部屋に押しかけてきたのに驚いたようで、琉架は全員の顔を見回す。
 そして、蒼と目が合うと「あっ」と声を上げた。

「蒼さんだよね、以前は美苑をありがとね。......今も迷惑をかけているみたいで、ごめんね」
「問題ないよ。時と場合によっては全力で撒いてるから」
「そう、それならよかった。でも、父さんに天音、隼斗に蒼さんって不思議な組み合わせ......蒼さんも神庭会に入るの? 美苑が喜びそう」

 ニコニコと笑顔で話す、琉架に蒼と天音は嫌そうな顔をする。

「いや、俺は能力者じゃないからそもそも資格ないからな?」
「おい、琉架、ふざけんな。こいつが入るとか下手な拷問より最悪だ」
「拷問と比べないでくれない?」
「ふふっ、美苑から聞いていたけど、本当に二人は仲が良いんだね」

 口元に手を当てながら楽しそうな琉架に天音と蒼は同時に反論した。

「仲良くはないよ? 天音さんはおもちゃみたいな感じだし」
「誰と誰が仲いいんだ!!......って、おもちゃって何だ!?」
「いや、だって天音さんの反応面白いから、つい?」

 悪びれた様子もなく蒼は煽るように笑う。

「こほん。......仲が良いのは分かったがそろそろ本題に戻ろう。琉架、お前のネット設備使わせてくれ」

 軽く咳払いをして2人の言い争いを諫めると道徳は琉架を押しのけるようにして部屋の中に入っていく。
 天音は蒼をギロリと睨んでから、部屋への空間を空けながら扉を押さえてくれている琉架に軽く礼を言いながら続く。
 少しためらった様子で隼斗も家主に挨拶して部屋へと入る。
 最後に蒼が中に入ると、琉架は扉を閉めた。

 部屋の中は蓮の部屋ほどではなかったが、大量のモニターやデスクトップ型のパソコン、ノートパソコンなどが広い部屋を埋め尽くしていた。
 冷房がガンガンに入っているのか、廊下と比べて肌寒さを感じる。

「それで、何するの?」

 琉架は変わらずニコニコと微笑んでいる。蒼は携帯片手に手を大きく上げた。

「問題ないなら、俺の携帯をパソコンに繋いで動画を再生したい!」
「そうか、僕は問題ないけど、蒼さんはいいの? 知らないパソコンと繋いで不安はない?」
「問題ない! ハッキング対策は万全だ!」
「そうなの? 凄いね。なら、このパソコン使って。やり方は分かる?」
「大丈夫!」

 蒼は頷くと、琉架の示したデスクトップ型のパソコンへ近付くと慣れた手つきで携帯を接続した。パソコンデスクの前に置かれていた椅子に、琉架に断りを入れてから座り、操作する。そして、準備ができると後ろにいる4人を振り返った。

「準備できたけど、流して良い?」
「あっ、待って。その前に僕はいて良いの? 知らない方が良いなら自室に戻るけど......」

 琉架が少し、居心地が悪そうに手を上げる。その発言を聞き、蒼は思わず声を上げた。

「え? ここが自室なんじゃねーの?」
「ううん、ここは趣味部屋かな?」

 趣味用の部屋があるとか、金持ちすげーなと感心する。

「問題ない。これから起きるかもしれない問題だ。お前も知っておけ」

 道徳が少し低い声で琉架に指示すると、わかったと頷いていた。
 パソコンは置いてあるもののそこそこ広い部屋で、内容を知っている天音は少し離れた扉に背中を預けている。パソコンの前に蒼、その両横にそれぞれ道徳と隼斗がスタンバイしている。

「どうせなら、大きいモニターに繋ごうか?」

 琉架は椅子に座っている蒼の肩越しにマウスを触ると、モニターへと画面を切り替える。

「これで、離れてる天音も見やすいと思うな」
「おーじゃぁ再生するな」

 蒼と天音は既に一度映像を見ているんだよなと内心で思いながらも、好意を無碍にするのはよくないと蒼は言葉を飲み込んだ。
 そして再生ボタンを押すと、昼間に見たのと同じ内容の映像がモニターに映し出された。

 蒼は先程見た映像であったが、見終わった後からいろいろな情報が入ったため、珠来の動きを重点的に見ることにする。
 息遣いや目線の取り方、話すときの癖を中心に、時折背中で見えなくなることもあるが見える範囲で確認した。

 蓮がわかりやすいように軽く編集してくれたようで、不必要な会話は全てカットされ、確認した2つの映像も1つとして組み合わさっていた。
 流石だなと思いながら、蒼は珠来だけを観察する。
 広い室内には映像から流れる音声と5人の息遣い、そして、時折入る隼斗の人物説明以外の音は消えていた。

(なんか、この癖どこかで見たことある気がするんだよなぁ)

  "サーカス"のアジトで見た時も思った疑問を蒼はまた感じる。

 微かな流し目、思考時の手遊び。

 蒼は確かに知っている気がして、記憶の海へと深く潜った。
シェア
前の話 →
ep132 神庭会トップ2
← 次の話
ep134 今、できること
ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません

ep133 映像を確認しよう

 階段を2階まで上りきると、道徳は突き当たりの部屋を目指した。突き当たりの部屋の前では既に天音と隼斗が待機していた。

「おう、待っていたのか」
「何回に分けて入るより、まとめての方が良いと思ったので」
「そうか。......琉架、いるか?」

 天音の返答を聞き、道徳は頷いてから扉を叩いて声をかける。
 少し遅れて、内側から扉が開いた。

「......父さん、どうした?」

 部屋の中から、背の高い優男が出てきた。久しぶりに琉架を見たなと蒼は思う。大人数で部屋に押しかけてきたのに驚いたようで、琉架は全員の顔を見回す。
 そして、蒼と目が合うと「あっ」と声を上げた。

「蒼さんだよね、以前は美苑をありがとね。......今も迷惑をかけているみたいで、ごめんね」
「問題ないよ。時と場合によっては全力で撒いてるから」
「そう、それならよかった。でも、父さんに天音、隼斗に蒼さんって不思議な組み合わせ......蒼さんも神庭会に入るの? 美苑が喜びそう」

 ニコニコと笑顔で話す、琉架に蒼と天音は嫌そうな顔をする。

「いや、俺は能力者じゃないからそもそも資格ないからな?」
「おい、琉架、ふざけんな。こいつが入るとか下手な拷問より最悪だ」
「拷問と比べないでくれない?」
「ふふっ、美苑から聞いていたけど、本当に二人は仲が良いんだね」

 口元に手を当てながら楽しそうな琉架に天音と蒼は同時に反論した。

「仲良くはないよ? 天音さんはおもちゃみたいな感じだし」
「誰と誰が仲いいんだ!!......って、おもちゃって何だ!?」
「いや、だって天音さんの反応面白いから、つい?」

 悪びれた様子もなく蒼は煽るように笑う。

「こほん。......仲が良いのは分かったがそろそろ本題に戻ろう。琉架、お前のネット設備使わせてくれ」

 軽く咳払いをして2人の言い争いを諫めると道徳は琉架を押しのけるようにして部屋の中に入っていく。
 天音は蒼をギロリと睨んでから、部屋への空間を空けながら扉を押さえてくれている琉架に軽く礼を言いながら続く。
 少しためらった様子で隼斗も家主に挨拶して部屋へと入る。
 最後に蒼が中に入ると、琉架は扉を閉めた。

 部屋の中は蓮の部屋ほどではなかったが、大量のモニターやデスクトップ型のパソコン、ノートパソコンなどが広い部屋を埋め尽くしていた。
 冷房がガンガンに入っているのか、廊下と比べて肌寒さを感じる。

「それで、何するの?」

 琉架は変わらずニコニコと微笑んでいる。蒼は携帯片手に手を大きく上げた。

「問題ないなら、俺の携帯をパソコンに繋いで動画を再生したい!」
「そうか、僕は問題ないけど、蒼さんはいいの? 知らないパソコンと繋いで不安はない?」
「問題ない! ハッキング対策は万全だ!」
「そうなの? 凄いね。なら、このパソコン使って。やり方は分かる?」
「大丈夫!」

 蒼は頷くと、琉架の示したデスクトップ型のパソコンへ近付くと慣れた手つきで携帯を接続した。パソコンデスクの前に置かれていた椅子に、琉架に断りを入れてから座り、操作する。そして、準備ができると後ろにいる4人を振り返った。

「準備できたけど、流して良い?」
「あっ、待って。その前に僕はいて良いの? 知らない方が良いなら自室に戻るけど......」

 琉架が少し、居心地が悪そうに手を上げる。その発言を聞き、蒼は思わず声を上げた。

「え? ここが自室なんじゃねーの?」
「ううん、ここは趣味部屋かな?」

 趣味用の部屋があるとか、金持ちすげーなと感心する。

「問題ない。これから起きるかもしれない問題だ。お前も知っておけ」

 道徳が少し低い声で琉架に指示すると、わかったと頷いていた。
 パソコンは置いてあるもののそこそこ広い部屋で、内容を知っている天音は少し離れた扉に背中を預けている。パソコンの前に蒼、その両横にそれぞれ道徳と隼斗がスタンバイしている。

「どうせなら、大きいモニターに繋ごうか?」

 琉架は椅子に座っている蒼の肩越しにマウスを触ると、モニターへと画面を切り替える。

「これで、離れてる天音も見やすいと思うな」
「おーじゃぁ再生するな」

 蒼と天音は既に一度映像を見ているんだよなと内心で思いながらも、好意を無碍にするのはよくないと蒼は言葉を飲み込んだ。
 そして再生ボタンを押すと、昼間に見たのと同じ内容の映像がモニターに映し出された。

 蒼は先程見た映像であったが、見終わった後からいろいろな情報が入ったため、珠来の動きを重点的に見ることにする。
 息遣いや目線の取り方、話すときの癖を中心に、時折背中で見えなくなることもあるが見える範囲で確認した。

 蓮がわかりやすいように軽く編集してくれたようで、不必要な会話は全てカットされ、確認した2つの映像も1つとして組み合わさっていた。
 流石だなと思いながら、蒼は珠来だけを観察する。
 広い室内には映像から流れる音声と5人の息遣い、そして、時折入る隼斗の人物説明以外の音は消えていた。

(なんか、この癖どこかで見たことある気がするんだよなぁ)

  "サーカス"のアジトで見た時も思った疑問を蒼はまた感じる。

 微かな流し目、思考時の手遊び。

 蒼は確かに知っている気がして、記憶の海へと深く潜った。
シェア
次の話ep134 今、できること
ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません