第八十五話 祭事
高層ビルの最上階フロア。
イーロン・フェイスと千佳伊がWEB会議をしていた。
『NUでのAI問題の騒動も続いているね』
「すべてをAIに任せる作家。AIの修正指示に振り回される作家。色々だ」
『規制は設けるべきかな?』
頷き合って会議を終え、各所へメールを送る。
秒で千佳伊のスマホが鳴った。
かけてきたのは仙だ。
『AI作家の月の投稿上限を決めるって本気か!?』
「リワード狙いが横行しているからな。他の出版社にも圧をかけておけ」
『で、千佳伊はいつ帰ってくるんだ?』
仙の問いには答えず、電話を切る千佳伊。
そのまま革張りのソファーへ体を預ける。
「少しは妬いてくれているのか?」
呟きと同時にドアが開かれる。
バスローブ姿の古室が入室し、入口近くの壁に背中を預けた。
「千佳伊、もう夜も遅いよ。そろそろ眠らないか?」
「まだ仕事が残っている。アメリカ時間で仕事をしなければならんしな」
「僕は仙くんに負けない。ちゃんと堕としてみせるから」
そう言葉を残し、古室は部屋を出て行った。
千佳伊が小さく息を吐く。
「そろそろ潮時か......弧見の言う通りかもしれんな」
◆◇◆
その日を境に、WEB投稿サイトのAIルールが刷新された。
全文をAIに書かせた作品はNG。
一日の投稿文字数は五千文字まで。
様々な騒動と炎上へ。
深夜の寝室。
仙のスマホの管理画面にも、大量の苦情や通報が並ぶ。
「禁止したら複垢だらけになってやってらんねー」
仙がキーボードとマウスを投げ捨てた。
「門河社のカケヨメバン祭りに俺らも便乗すっか」
「ダーリン、ウチも垢バンに巻き込まれたんだけど」
「いや、ハニー。複垢は規約違反だからやめろよな」
複垢にあわせ、AI感想も再燃している。
犯人と思われるツイートを見つけ、レスバを眺める仙。
「唯一無二を連呼してたコイツ、ハニーのところにも湧いたよな?」
弧見の涙のアーチがミニサイズの虹を生む。
「うわぁぁんん! あんな甘い言葉、ロマンス感想だよぉぉお~!」
「おいおい、褒め感想が全て詐欺に聞こえる言い方はやめろよな」
──ガチャ。
寝室の扉がいきなり開かれ、仙は警戒をマックスにした。
薄暗さの中で見えるのは、美しいストレートロングの黒髪。
「......千佳伊か?」
「うむ。こっそり聞き耳を立てようと思っていたが、どうしても言いたくて」
「創作論だな?」
千佳伊が頷き、部屋の電気をつけてノートパソコンを取りだす。
「作家とは──好意的な感想に対し、全員がチョロインである!」