第七十三話 差異
客観視が全くできていない千佳伊の叫び。
「私は主人公に自己投影してるような、数多のオ〇ニー作家とは一線を画す!」
「うっわ、問題発言! チカチカ、それ絶対ツイートしたらダメだよ?」
「なぜだ? 今ちょうど投稿したところだぞ?」
「「うわぁ......」」
ドン引きする仙と弧見。
千佳伊はそのツイートに留まらず、さらにネットを煽っていく。
「千佳伊! 今や商業作家なんだから少しはオブラートに包めよな!」
「どれのことだ? 〝底辺作家は電気代を節約した方が良いぞ〟辺りか?」
「チカチカほら! 同情するなら星をくれって返信きてるよ!」
「フッ、そのような〝星なき子〟は放っておけ」
あまりの態度の悪さを仙が叱る。
「お前な~。プロになった瞬間に〝これだからアマチュアは〟は無いだろ!?」
「私もプロの厳しさを体感している。住む世界が違うのだ。すまんな」
次々とガソリンを投下するので炎上は止まらない。
アニメ化反対の抗議運動にまで至ってしまう。
だが、そのくらいでは千佳伊も止まらない。
「出版社に、読者に、市場に、選ばれ続けないとプロ作家では居続けられない」
そこで止めれば良いのに、余計な一言を添える。
「どれにも選ばれない者どもよ! 声だけは大きいな!」
かくして大騒動へと発展していく。
収拾がつかない事態に陥り、担当編集から出頭を求められた。
再び千佳伊と仙が出版社へ。
「千佳伊さん。今回の炎上商法はマズいです。ヘタしたらアニメ化が流れるかも」
「そこをどうにかするのがそちらの仕事だろう。私は知らん」
「分かりました。軌道修正をするので、方針をご説明頂けますか?」
担当編集から静かに問われ、千佳伊も少しだけトーンダウン。
「説明は説明警察が湧くから好きではないな」
「では、方針を言葉で描写してください。どのような設定で進めますか?」
「設定も設定警察が湧く。せめて世界と言え」
「ならそれで」
千佳伊のワガママを黙って受け流す担当編集。
その様子に仙は感激していた。
「山元さん! 千佳伊の専属になりませんか!? お金なら出すんで!」
「エンドレス炎上の尻拭いはお断りします」
秒で断られ、仙は泣きながらハンカチを噛んだ。
それから数日で担当編集が騒動をまとめていく。
対立を上手く煽り、アニメ化が流れることだけは阻止した。
ニュース速報を聞いて仙はうなる。
「山元さんすげー! 絶望的な状況から立て直したぜ」
「三つの要素に分けて、どれが一番間違っているかで競わせたのも凄いよね~!」
弧見も褒めちぎる。
担当編集は、観点ごとに千佳伊の作品を分解。
それぞれがどう間違っているかで煽り、それを決着させるアニメ化とした。
議論のすり替えを行ったわけだが、ものの見事にハマる。
「話が横道にそれすぎだ。サイド厨か!」
千佳伊だけが納得していなかった。