第七十四話 偏向
「ついに放送日だね~。ウチ、楽しみ~」
「あぁ、ここまでこれたのは仙と弧見のおかげだ」
深夜。
家族全員で、リビングのテレビの前にいる。
「千佳伊、そろそろ放送時間だぜ」
アニメ第一話は最高と呼べる出来だった。
作画、音楽、声優、すべての完成度が高く、大絶賛の嵐が続く。
......作者の自作自演で。
「おい、千佳伊。なんでツイ速報となんjを同時にやってる?」
「うるさい! いま忙しいのだ!」
「チ、チカチカ? そんなことしなくても良いアニメだよ?」
一般ユーザーからのパクリレッテルやネガティブ発言。
そのすべてに噛みつき、訂正していく。
「なんだコイツらは! 〝感動ポルノ〟だの、〝おっさんホイホイ〟だの!」
「まー、そら仕方ねーだろ。そういう内容だしな」
声オタの弧見は目を輝かせる。
「ウチは最高のアニメだと思ったよ! 声優さんの演技も凄かったし!」
「それはドパガキの資質のある弧見だけだ!」
千佳伊がノートパソコンを取りだし、パワポを表示した。
ドパガキの資質は、ニトロ加速で物語にのめり込めるタイプとある。
「それが無ければ〝最初からクライマックス〟なんぞまさに置いてけぼり」
「なんで自分のアニメをディスってるし!?」
「話数の構成順をいじられたのまだ根に持ってんのか?」
原作の内容は変えない。
その条件は守りつつ、〝売るために〟と構成順の変更を提案された。
仙と担当編集が結託し、千佳伊の許可を待たずにOKした流れ。
「悪かった!」
すぐに土下座をする仙。
即座に千佳伊の足が頭に置かれた。
「責任は取ってもらう。いずれ体でな」
それから三ヶ月。
アニメ化は大成功を収める。
成功が千佳伊の魔王化を促進させ、炎上は新境地へと突入。
「今どきの作品は同じ物の繰り返しばかり。良いと思えんし、理解できんな」
流行りの人気作を見下し、他を下げることで自分の作品が上だと言いだした。
当然、反発はえげつないものとなっていく。
「私のような作品が埋もれないよう、ランキングシステムは見直すべきだ!」
純文学、一般文芸、ライト文芸、ライトノベル、児童文学......。
ジャンルとは別に文学区分を用意し、完全に分けるべきだと騒ぎだした。
「千佳伊、出版社からも苦情が来てるぞ!」
「なぜだ?」
「サイト運営側にとって旨味がないからだな」
WEB投稿サイトに一般文芸を求めている読者は少ない。
作者の読み合いが多いから錯覚しがちだが、全体の割合としては誤差レベル。
「基本システムに入れろと言われても、運営側が困るだけだ!」
「私が楽しくない。私の好むランキングにしろ!」
変に発信力をもっているだけに、事態はあらぬ方向へ肥大化していった。