第六十七話 数字
怒涛の撮影スケジュール。
休憩の合間を縫って仙が尋ねた。
「で、数字はとれてんのか?」
台本を閉じた千佳伊。
持ち運びの椅子から、勢いよく立ち上がる。
「ふむ。数字警察か?」
「なんでそーなるんだよ!」
「ウチ、漢数字警察きらい~」
お腹が目立つようになってきた弧見。
今日はエキストラとしての参加だ。
「何が何でも漢数字派、算用数字使い分け派、だが、肯定派も一枚岩ではない」
「え? んな細かいっけ?」
「ほんっっと細かいの! ダーリン聞いて!」
一桁は全角、二桁以上は半角派。
算用数字は認めるが、「1つ」表記はNGの漢数字派。
日付は漢数字、時間は算用数字派。
「なんじゃそら? 訳わかんねー」
引きぎみの仙に、千佳伊が言葉をかぶせてくる。
「もはや派閥とすらも呼べんな。そういえば頭おかしい大臣も数字に疎かったな」
「あー、あの〝売るほどある〟の問題発言か」
衛藤宅文部科学大臣。
過去、〝小説を買ったことがない〟や〝書斎には売るほどある〟と言い炎上。
千佳伊も当時はかなり敵視していた。
「ああいった〝本を読んだことはないけど本は書きたい〟系のバカが増えた」
「アニメからの流入組だよね。ウチも気持ちは同じ」
千佳伊と弧見が頷く中、仙だけが首を傾げる。
「何がいけないんだ?」
二人は目を剥く。
「ダーリン、本気!?」
「忙しすぎて正気ではなくなったか......少しは休暇をやろう」
「俺は正気だ。エンタメが知識マウントとるようになったらオワコンだぞ?」
親を殺されたような顔をした千佳伊。
「あ゛? どこがマウント? 最低条件だぞ?」
「ぶっちゃけ、多くの読者にとってはどーでもいい」
仙の語るオワコン理論。
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入口に立った初心者に対し「何も分かってない」とマウント。
あくまで娯楽の一形態なのに、小説だけを特別視しすぎ。
ついでに他の媒体を小バカにする傾向がある。
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「ま、『何も分かってない』と言うヤツが一番分かってないんだよな」
「私もいつの間にか警察の思想に洗脳されていたと言うのか......」
千佳伊は大地にひれ伏した。
仙が追い打ちをかける。
「セマユキも〝すべてのジャンルはマニアが潰す〟って言ってたぜ」
「ダーリン、そこで他人の言葉を借りるのは締まらないよ~」
「自分の言葉で言えんのか?」
勝ち誇ったドヤ顔の仙。
「それってあなたの感想ですよね?」