第八十一話 亀裂
──世界に激震が走る。
WHOはナーロッパで盛り上がる人々を集団精神疾患に認定した。
病名は「ナーロッパシンドローム」と名付けられている。
そのことに千佳伊は反発し、荒れていた。
「WHOはいったい何を考えている! こんなのは認められんぞ!」
即座に弧見が目を三角にする。
「チカチカうるさい! せっかく寝かしつけたのに起こしちゃうでしょ!」
多伊奈と愛がやっと眠ったところだ。
しゅんとした千佳伊。
「だが......あれはさすがに......」
「精神疾患呼ばわりされて悔しかったんだね。おーヨシヨシ」
「いや、疾患認定は妥当だな。病名が気に入らないのだ」
千佳伊がイミフ理論を語った瞬間、ドアが開いた。
風呂上がりの仙が部屋に入ってくる。
「自分の部屋へ行け。それと、どんな病名なら満足なんだ?」
「そうだな......ナロウパスとかカッコよくないか?」
「意味分かんないし。患部にサロンパスでも貼っとけば?」
語彙力に乏しい弧見には伝わらずじまい。
千佳伊はショックでへたり込み、仙が小さくため息をつく。
「おい、千佳伊。床に這いつくばってないで今後の方針を話すぞ」
「パワポにまとめてある」
ファイルを開いてみると、〝逃避グセの作家について〟と書かれていた。
「参加した作者の逃避グセがひどいのだ」
「ま、そら既存の経済圏ではなく、妄想とも言えるNUに参加するくらいだしな」
「ジャンル別でまとめてあるぞ」
ほとんど水増しだけの掲示板回。
ステータス/スキル/称号の羅列。
詳細なグラム表示もあるレシピの料理回。
「どゆこと?」
「毎日投稿が追い付かないときの、露骨な文字数稼ぎ──〝とりま投稿〟だ」
仙と弧見の「うわぁ~」の声が重なる。
千佳伊が声を荒げた。
「思考停止は逃げだ! さらにひどいのはジャンルから逃げること!」
「どゆことチカチカ?」
「次のページをみろ!」
次は〝妄想家になろう〟のデータ。
推理、ホラー、アクション、SF、純文学......そのすべての一位に輝くもの。
──それは婚約破棄。
「異世界恋愛2軍のヒューマンドラマに飽きたらず、ほぼジャンル網羅だぞ!」
心当たりのある弧見が一人ダンスを踊る。
「アハハ! アハハハハ!」
「大丈夫だよハニー。貴族令嬢が宇宙戦艦に乗ったからジャンル詐欺じゃない」
カオスなまま迎えた夜明け。
朝のニュースでは、WHOからの緊急事態宣言が続く。
ラノベ狩りという社会現象まで生まれ、一般層との亀裂は決定的となった。
「仙よ。抗議文を作っておけ」
「とりま遺憾砲でいいか?」
「ジェミニに任せて逃げちゃおうよダーリン」