ホーム›間違った創作論を語る作家の話›第五十三話 騒音
← 次の話目次前の話 →

第五十三話 騒音

 生放送でとんでもない爆弾発言がでた。
 千佳伊ちかいのイメージは、ド変態作家で定着してしまう。
 仙せんの部屋を訪れ、ノックもせずにドアを開け放つ千佳伊。

「やったぞ仙! 私の作品がついに100万PVの域に!」
「千佳伊のはⓇ⑱作品だけじゃねーか! リワードになんねーぞ!」

 仙が声を荒げると、弧見こみも泣きついてきた。

「ウチの作品に荒らしが湧いた~! ダーリン、駆除してきて~!」
「おぅ。弧見のためなら片っ端から社会的に抹殺してやんよ。弁護士なめんな」
「......私のときと態度が違いすぎないか?」

 妄想家になろうのアダルトサイトに掲載している千佳伊の作品。
 愛する夫に睡眠薬と媚薬を盛り、寝ている間にあれこれする内容だ。
 リアリティが凄いと一気に人気が跳ねた。

「しっかし、フィクションなのに、こいつら騒ぎすぎだよなぁ?」

 視線を逸らして押し黙る二人。
 それを不思議に思いながらも仙は話題を変える。

「自宅に突撃してくる記者や一般人も増えて困るよな」
「コメント欄に作品と関係ないことを書き込む輩の方が困るが?」
「隣の住民のはさすがにそろそろ訴訟を起こすか?」

 話題にしたそばから、隣の家から騒音が聞こえだした。
 カーテンを開けてみると、お隣さんがラジカセを片手に布団を叩いている。

「ハイ! ハイ! ハイ! お引っ越し! お引っ越し!」
「たしかにうるさいな。これでは昼寝ができん」
「お前らが先にうるさくしてんだろーが! お引っ越し! ハイ、お引っ越し!」

 威嚇してくるお隣さんを無視し、カーテンを閉める。
 千佳伊が親指で首を切るジェスチャーをし、仙も頷いた。

「83㏈デシベルもあったし、確実に勝てるな」
「きっちり測れるのいいよね~。空き家になったら買い取って建て直す?」

 外のおばさんの歌よりも、甘ったるい弧見の声に顔をしかめる千佳伊。

「騒音は測れるかもしれんが、作品の価値は数値では測れない」
「まーた始まったよ」
「PVや星の数で測れるじゃん。チカチカのも伸びてるよ?」

 二人の間を千佳伊の手刀が切り裂く。

「あぶな!」
「何すんのチカチカ!?」

 割り込んだ千佳伊が二人を交互に睨む。

「数値よりも大切なことがある! どれだけ魂を震わせられたかが重要だ!」
「星で充分わかんだろ?」
「何度も繰り返し読み、その重厚さに惹きこむ作品を愛するべきだ!」
「それってPVじゃないの?」

 千佳伊の中の戦闘力が膨れ上がる。

「私は『面白い≒とは分かりやすい』の構図が気に入らないのだ!」
「いやだって所詮は娯楽だしな」
「分かりにくい娯楽って存在価値なくない?」

 怒髪天をつく千佳伊の怒りが、金色の輝きを放つ。

「お前ら! いま、全世界80億人の作家を敵に回したぞーー!」
シェア
前の話 →
第五十二話 誘導
← 次の話
第五十四話 時代
間違った創作論を語る作家の話作者:元毛玉(もとけだま)
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません

第五十三話 騒音

 生放送でとんでもない爆弾発言がでた。
 千佳伊ちかいのイメージは、ド変態作家で定着してしまう。
 仙せんの部屋を訪れ、ノックもせずにドアを開け放つ千佳伊。

「やったぞ仙! 私の作品がついに100万PVの域に!」
「千佳伊のはⓇ⑱作品だけじゃねーか! リワードになんねーぞ!」

 仙が声を荒げると、弧見こみも泣きついてきた。

「ウチの作品に荒らしが湧いた~! ダーリン、駆除してきて~!」
「おぅ。弧見のためなら片っ端から社会的に抹殺してやんよ。弁護士なめんな」
「......私のときと態度が違いすぎないか?」

 妄想家になろうのアダルトサイトに掲載している千佳伊の作品。
 愛する夫に睡眠薬と媚薬を盛り、寝ている間にあれこれする内容だ。
 リアリティが凄いと一気に人気が跳ねた。

「しっかし、フィクションなのに、こいつら騒ぎすぎだよなぁ?」

 視線を逸らして押し黙る二人。
 それを不思議に思いながらも仙は話題を変える。

「自宅に突撃してくる記者や一般人も増えて困るよな」
「コメント欄に作品と関係ないことを書き込む輩の方が困るが?」
「隣の住民のはさすがにそろそろ訴訟を起こすか?」

 話題にしたそばから、隣の家から騒音が聞こえだした。
 カーテンを開けてみると、お隣さんがラジカセを片手に布団を叩いている。

「ハイ! ハイ! ハイ! お引っ越し! お引っ越し!」
「たしかにうるさいな。これでは昼寝ができん」
「お前らが先にうるさくしてんだろーが! お引っ越し! ハイ、お引っ越し!」

 威嚇してくるお隣さんを無視し、カーテンを閉める。
 千佳伊が親指で首を切るジェスチャーをし、仙も頷いた。

「83㏈デシベルもあったし、確実に勝てるな」
「きっちり測れるのいいよね~。空き家になったら買い取って建て直す?」

 外のおばさんの歌よりも、甘ったるい弧見の声に顔をしかめる千佳伊。

「騒音は測れるかもしれんが、作品の価値は数値では測れない」
「まーた始まったよ」
「PVや星の数で測れるじゃん。チカチカのも伸びてるよ?」

 二人の間を千佳伊の手刀が切り裂く。

「あぶな!」
「何すんのチカチカ!?」

 割り込んだ千佳伊が二人を交互に睨む。

「数値よりも大切なことがある! どれだけ魂を震わせられたかが重要だ!」
「星で充分わかんだろ?」
「何度も繰り返し読み、その重厚さに惹きこむ作品を愛するべきだ!」
「それってPVじゃないの?」

 千佳伊の中の戦闘力が膨れ上がる。

「私は『面白い≒とは分かりやすい』の構図が気に入らないのだ!」
「いやだって所詮は娯楽だしな」
「分かりにくい娯楽って存在価値なくない?」

 怒髪天をつく千佳伊の怒りが、金色の輝きを放つ。

「お前ら! いま、全世界80億人の作家を敵に回したぞーー!」
シェア
次の話第五十四話 時代
間違った創作論を語る作家の話作者:元毛玉(もとけだま)
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません