第七十九話 愛娘
外務大臣をはじめ、日本政府から叱責を受けた。
ネットは世界規模で大炎上。
記者会見も避けられない事態に。
そうして何故か一人で記者会見を開く。
......黄泉 仙が。
「黄泉さん! 元妻の発言についてご説明をお願いします!」
「千佳伊からは説明ではなく描写をしろと常々言われており......すみません」
「黄泉さん! 二人の妻と毎晩愛し合っているという噂については!?」
「いえ、そういうプライベートな話はお答えできません」
10時間半にも及ぶ会見を、仙はやり遂げた。
日本への帰りのフライト。
一足先に帰国した千佳伊とライン通話で話す。
「なんで俺はお前の謝罪会見に出ているのに、お前は出てこないんだよ!」
『ふむ。〝なんで小説を読んでいるのに、お前は読みに来ないのか〟理論だな』
千佳伊の返しに、怒りで仙の表情がバグる。
「ふざっ──!!」
『いわゆる〝返報性の法則〟をぶっちされたパターンだ』
「っけんなぁぁああぁあ!!」
仙の大声に客室乗務員が心配してギャレーから出てきた。
「Sir, is there something wrong?」
「It's okay. No problem.」
『そこは〝一番良いのを頼む〟と言わなければ、装備が弱くないか?』
古いネットミームを持ち出して茶々をいれる千佳伊。
仙の額には青筋が浮かぶ。
「殺してやる」
『ベッドの上でなら喜んで』
頬を染める千佳伊。
訂正する気力もない仙。
無気力な中年おじさんのような目をしながら、煽りの方向性を変えた。
「小説家ってやつは、自己って銘柄の酒に酔っている連中ばかりだよな」
『当然だ。狂気という酒に酔わねばならん。小説なぞシラフでは書けんからな』
何を言っても無駄だと諦めかけたそのとき──。
電話越しに「パパ」と呼ぶ声が聞こえてきた。
『あ、ダーリン~! 多伊奈が喋ったよ~』
ライン通話の画面に弧見と多伊奈が割り込んでくる。
「おぉ~、さすが俺の娘! 最高に賢いな!」
『早く帰って来てよねダーリン。最近、ご無沙汰だしさ』
『おい、割り込んできていちゃつくな!』
『はぁ? チカチカのえっち! 違うから。新作を読みに来てないってこと!』
弧見は、二人の娘の育児をしながらも積極的に活動中。
漫画や小説の執筆に加え、ゲームではギルドマスターをもこなす。
「弧見はちゃんと寝ているか? 育児は大変だろう?」
『ダーリン優し~、愛してる~! 最近はゲームが忙しいかなぁ~』
弧見がキリリとした表情をみせる。
『でも大丈夫。育児を片手間にして負担を減らしてるからね!』
『コヤツ......逆だろう普通。母親としてどうなのか?』
引き気味の千佳伊の声がした。
いまだ遠い空の上。
仙は「一刻も早く娘たちの元へ帰らねばならない」と、決意を新たにした。