第七十八話 独立
国連総会は大混乱となった。
『ナーロッパとはなんだ!? 我々の歴史をバカにしているのか!?』
『AIがアニメにも使われているのはアリなの?』
『ジャパニーズ〝ヘンタイ〟はクレイジーだ! 異種族をレビューするな!』
『日本は謝罪しろ! 歴史を捏造するな!』
『婚約破棄ばかりだから、出生率が低いのよ』
誰が発言しているのか分からないカオス。
議長が声を大きくしても収まる様子がない。
そこで千佳伊が稲妻のような台パンをテーブルへ落とした。
『話者がわからん! 大勢で連続セリフはやめろ!』
そのまま会場の端を指差す。
『地の文での中継点が不足しているな。だよな? そこの中継カメラマン!』
カメラ目線の千佳伊。
CNNの中継を見ていた仙は、邪眼の魔物に睨まれた状態に。
一同があっけに取られた会場では、すかさず議長が制しにかかった。
『各国代表は静粛に。日本代表も主張は一段落として良いか?』
『勝手に決めるな! ナーロッパに対してもあり得ないと決めつける輩がいるが、じゃあお前はこの現実世界以外の世界を実際に見たのか?』
千佳伊の独擅場は続く。
『じゃがいもがあることに違和感? 造語や比喩をつけるのがそれほど重要か? 厳密にやるのなら現地の言葉で書くべきだから、日本語で書かれるわけがないよな?』
最後には『バカかお前らは!』の捨て台詞まで付けた。
騒然とする会場。
パニックのCNNレポーター。
意識が異世界に渡りかける仙。
収拾がつかないと思えたとき、会場に大きな笑い声が現れた。
しかも二つ。
『ハッハッハ! 日本が国連でケンカを吹っ掛けてくるとは、クレイジーだ!』
『フハハハ! チカイはこの混沌をどう治めるんだい?』
流れを変える風を受け、千佳伊が髪をかき上げる。
『ふん! なんでも世界の常識で縛ろうとするから揉めるのだ!』
『チカイ、それはAIや小説の世界ってことかな?』
『違うな。既存の固定観念という小さき世界だ。だから戦争なぞ起きてしまう』
不敵な笑みのフェイスが頬杖をつく。
『本当に面白いレディーだ。君にのるかはさらなる面白さ次第だよ』
発言権を渡された千佳伊もニヤリと笑う。
『物理的な争いの終焉をここに宣言する!』
立ち上がった千佳伊に全員の視線が集まった。
『ナーロピアン・ユニオン──つまりNUの設立を行う! 集え、オタク共よ!』
領土は電脳世界に。
物理的な争いから、創作で競う世界へ。
千佳伊の主張が終わり、フェイスへ手を伸ばす。
『どうだ、大富豪? 私に投資してみないか?』
『ワァオ! 魅力的だね。でも断るよ』
イーロン・フェイスの拒絶。
参加者たちに電撃が走る。
『こちらはANU──アンチNUの独立を宣言する。その方が面白そうだ』
二つの世界の独立宣言。
それを聞き、仙は無言でテレビへ連続コンボを叩き込んでいた。