第七十七話 狭窄
『日本代表、指示を聞いてください!』
CNNの国連中継も大荒れ。
だが、千佳伊は止まらない。
『そういや、小説を読まない作家はダメという理論もあったな』
千佳伊の言葉にマカロン大統領が反応した。
『チカイ、それはどういった理論なのですか?』
『その理論と反証は動画サイトにアップしてある。リンクはこれだ!』
仙はテレビ画面にしがみつき、叫ぶ。
「マカロン~~~! お前、本当に本物なのかーー!?」
当然、その絶叫は会場まで届かない。
フランスが反応したことでCNNまで取り上げてしまった。
女性レポーターが、千佳伊の経歴と今の創作論を紹介していく。
『ラノベやWEB小説ばかり読んでいる輩はダメだと自称プロや老害がほざく』
ご丁寧に、30ヵ国の言語それぞれの動画まで用意してある入念ぶり。
『文学ばかり読んでいる方がよほど拗れとるわ!』
千佳伊はテーブルを片足で踏みつけ、勢いのまま続ける。
『批判や分析までは良いとしても、作家の趣向までダメだしはマナー違反だ!』
『でもチカイ。読んでると強みになるんじゃないの?』
『だからWEBを読んでいる。読まない奴よりは上であろう?』
『ジャパン! オカシイ!』
電子書籍から撤退を始めた北欧三ヵ国からの苦言が入る。
しかし、千佳伊がそれを一蹴。
『黙れ! 私はその〝紙こそ神だ!〟の理論が大っっきらいだ!』
『日本代表。AIと関係ない話はやめてください』
『反AIと同じだ。新しいものを拒み、従来の型を頑なに守ろうとする視野狭窄!』
思わぬ軌道修正に、マカロンも目を丸くした。
『これは新規参入に否定的な姿勢への批判だったのですか?』
『そうだ。変われない連中の方がどうみても下ではないか!』
さらに千佳伊が声を荒げる。
『なのに見下して知識マウント知識マウント! 向上心がないのはどっちだ!』
千佳伊の〝新しいものを受け容れるべき〟という主張。
『小説を読まないのが悪いのではなく、現状を変えようとしないのが悪だ!』
議題がAIということもあり、まばらだが拍手も生まれた。
そこにアメリカ代表のイーロン・フェイスが割り込む。
『けれど、ナーロッパも思考停止ではないの? 劣化量産されているよ?』
『甘いな大富豪。それこそ表層的にしか物事をみていない証左よ』
フェイスと千佳伊の間に無数の火花が咲く。
『根拠は?』
『もともとナーロッパ作品はパブリックドメインの二次創作である』
腕を組み、フェイスとの徹底抗戦の姿勢をみせる千佳伊。
それをテレビ越しに見る仙の精神は、ゲシュタルト崩壊寸前だった。