第五十七話 爆音
沙村号地護の別荘へと場所を変える。
打ち合わせの間も、弧見は疑いの眼差しを向けていた。
話はまとまり、仙が挨拶をしていたそのとき──。
──ドォォォオォンン!
とてつもない爆音がとどろく。
「何やってるんだマイハニー?」
「ごめんごめん。スマホが暴走したみたい」
音量マックスにしたスマホを突き出し、弧見は笑っていた。
帰り道。
千佳伊への電話。
「あ、チカチカ? いま終わったよ~」
『ヤツはどうだった?』
「あれはクロだね~」
仙も顔を寄せ、ビデオ通話の画面に割り込んできた。
「クロって何が?」
「沙村号地さんの〝実は聞こえている疑惑〟がだよ~」
『おい、遠く離れた地でもいちゃつくな』
仙がハッとしたように弧見をみる。
「そうか! 聞こえないなら、爆音のときにビクってした反応はおかしいな!」
「でしょ~」
仙が弧見を天才ともてはやしていく。
画面越しの千佳伊は、悟りを開いたような顔に。
『すきあらばチュッチュチュッチュ。恥じらいは無いのか?』
「ごめんね~、ウチら新婚だから~」
『......まぁいい。これでヤツの経歴が嘘だらけと判明した訳だな』
沙村号地の輝かしい経歴。
それを最初から疑っていた千佳伊。
『過去エピソードが出来過ぎているからな。掘れば真っ黒だと確信していた』
「チカチカって創作論でも過去エピの設定を重要視するよね~」
「キャラが過去にどういう発言をしたとか?」
千佳伊が画面に向かって人差し指をふる。
『チッチッチ、そこは重要ではない。どういった人たちに囲まれてきたか、どんな情報を得てきたか、どう価値観が変化していったかが重要だ!』
千佳伊から仙にメールが届く。
月曜日にはキノコの山が好きだと言っていた。
それが水曜日にはタケノコの里が好きだと言った。
添付されていたパワポにはそのようにある。
『重要なのは言ったセリフではない。どう変化したかのキッカケとなった部分だ』
千佳伊のうんちくが続く。
『たまたま天気の変化で意見を変えたのならそれでも良い。ただの気分屋となる』
千佳伊からジェスチャーで促され、仙は次のページを表示した。
別キャラが火曜日にタケノコの里を好きと言っていたケース。
そのキャラとの関係性による変化の方を重視すべきと書かれている。
『好きな相手だった場合、好みや話を合わせる傾向のあるタイプとなる。逆に嫌いな相手がキノコの山と言っていたからという理由でも良いだろう』
「チカチカ~、何が言いたいのかサッパリだよ~」
「とりま〝ファミリーパックでも買っとけ〟で解決だろ?」