第四十七話 過失
ネットで誹謗中傷していた連中をまとめて摘発。
訴訟の準備を進めるさなか、仙のヘアサロンの再建も果たす。
「ふっざけんじゃねーぞ千佳伊!」
仙は激怒した。
弧見も、新たな屋号を見上げ、口をポカンと開けている。
「すっご、〝愛する千佳伊とのラブラブヘアサロン〟ってナニコレ?」
「俺は許可してない!」
仙が注文した看板は〝ヘアパレス仙〟だった。
経理処理の都合で、千佳伊の手を経た結果がこれである。
直接文句を言いたいが、千佳伊は経団連の会合にいっている。
仙の目はダークサイドに染まっていた。
「これまで我慢していたが......必ず、離婚してやる!」
一週間後。
離婚調停の準備を万全に整えた仙。
「この間のプロレス技。DVとして認められたからな」
「......げせぬ。たった一回では無いか」
「これ診断書な。動かぬ証拠だ」
急に立ち上がった千佳伊が、新しく購入したホワイトボードへ書き込む。
「たった一度のミスでブロックするのはやりすぎだと思う」
「何の話だ? いま離婚の大切な話の途中だが?」
「もちろん、創作論だ。だが、こちらも大切だ!」
千佳伊はブロックする作者の情報を追加で書き込んでいく。
「せっかく感想をやり取りする間柄になったのに、たった一つのミスだぞ」
「キャラ名を間違って感想を送ったら、即ブロックされたあの件か?」
「ウチも思い入れがあるキャラの名前を間違われるのやだな~」
感想を拒絶するWEB作家が多いと千佳伊は語る。
「設定もそうだ。一つ読み落としただけで読んで無い認定はひどいだろ?」
「他人の作品のすべての設定覚えてんのか? そんなん無理だぞ」
「う~、でもでも、ちゃんと書いてる設定を読み飛ばされるのは気分悪いよ?」
しばらく話題が続くも、仙が改めて書類を掲げる。
「話を逸らしても無駄だ。正義は俺にある!」
書類の中から一枚の紙切れを取り出し、千佳伊へ突き出した。
「さぁ、俺は離婚届を書いたぞ! サインしろ! さもなくば離婚調停だ!」
千佳伊もスッと真顔になる。
「黄泉 千佳伊さんはもう限界です。いつ倒れてもおかしくない状態です」
「は? いきなり何言ってる千佳伊?」
「つぶれてしまったら仙さんの弁護士生命にも傷がつきますよ」
「うるせー黙れ!」
痴話ゲンカが激しくなり、弧見は興味を失くして自身の作業に戻ろうとした。
その瞬間、とんでもない爆弾が千佳伊から投下される。
「百歩譲って離婚は認めるが、お腹の子の認知だけはしてもらわねば困る」
「は?」
「え?」
仙と弧見の時間は完全に止まった。