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第六幕 こっちの未来人、そして全滅までのカウントダウン

スライム大統領を仲間に入れ、橋を渡っていると、見知らぬ男女が突然目の前に現れた。

「アンソニー......サヨナラ......」

人魚らしき女、ジェーンである。

「......ジェーン......」

アンソニーが切なそうに呟く。

「ジェーーーーーン!!!」

身を投げたジェーンを追って、アンソニーが自らも勢いよく橋から飛び込んでいく。

『ピューン、ガラゴロガッシャーン』

一同、完全無言。

......ツクール3の説明書に載っていた、どこかで見たような悲劇のワンシーンを、ただゲーム内で再現したかっただけらしい。感動もドラマ性もあったものではない。

そのまま進むと、今度は謎のクリスタル洞窟にたどり着いた。

「この先に進めば、何かある気がするズラー。行くっぺちゃ」

「コッチダヨって声がするな。行ってみようぜ」

シャフトが声のする方へ、自信満々にズンズン進んでいく。

......この洞窟、実際の構造はマップひとつしかない非常にコンパクトな作りである。無駄に画面を広く移動させて、いかにも長大なダンジョンであるかのように見せかけていただけだ。プレイヤーを誘導するために、わざわざ「コッチダヨ」なんて親切な音声を鳴らしていたはずだが、のちに友人Sとこの当時を振り返ったとき、記憶はどうも違ったらしい。「あー、あったな......あの問題のシーンね」とのことだった。

進んだ先は、見事にただの行き止まりだった。

「ここで終わってるべ、きっと空耳ズラー」

......しかし、ここからが自作RPGの真骨頂である。四角いグラフィックを透明にすると、その上を歩けてしまう仕様を見つけたので、そのまま使ってみた。

「見えない道があり、進めるようだぞ」

スライム大統領の理不尽かつ鋭い一言をきっかけに、目の前に広がる湖の上を歩く隠し通路が突如として現れる。

その驚き冷めやらぬ湖の奥で、突如として奇妙な何かが姿を現した。

「デルデルデル...デチャッター! ワタシノナマエハ、未来人」

「ミツケテクレテアリガトウ。ナカマニナル」

......SF要素ゼロの世界観に、唐突すぎる未来人が爆誕した。

未来人がパーティーに加入したことで、押し出されるように、これまで苦楽を共にしてきた兵士が強制的に離脱させられる。

「プルルルル」

「ん? 電話か。もしもし、スケさんか。何! それは大変だべ! ......少し急用ができたっぺ! 一度離れるズラー!」

......それにしても、パーティー入れ替えの面倒くささを「電話一本の通信」で強引に押し切るセンスには脱帽である。

ちなみに、本当はこの未来人、町の草原からしれっと加入するのが正しい手順で、しかもゴンザレスイベントより前にすでに仲間になっていたらしい。ここは少し議論になったが、話せば話すほどそんな気がしてきた。人間の記憶とは、案外いい加減なものらしい。

仲間をとっかえひっかえしながら進んだ一行は、やたらと開けた広場に出る。

「トコロデツギハドコニイクンダ?」

未来人の至極もっともな問いに、誰も答えられない。

すると、逃げる間もなく、四方八方から見知らぬ敵が突然現れて囲まれる。

「梅太郎、お前をここで始末する。覚悟せよ」

突然現れたこのキャラクターが、今回のラスボスである。設定上は黄色い紙をまとった戦艦の船長のような姿のはずだったが、復元してみると、白髪で髪の長い邪悪な老人になっていた。

......一切の情け容赦がない、問答無用の突然のイベント戦闘。

絶体絶命のピンチに陥ったその時、上空からあの懐かしい影が、激しい効果音とともに高速回転しながら降ってきた。

「梅太郎! ここはわてに任せるズラー!!」

兵士テーマソングに勝手に決めたBGMと共に颯爽と現れる。

さっき電話で急用と言って離脱したはずの兵士が、あまりにも都合よく舞い戻ってくる。

......困ったときに回転しながら現れるのは、この作品における仲間たちの伝統芸(様式美)である。

「回転ケック!!!」

訛っているからといって、キックが「ケック」になるものだろうか。放たれた一撃で敵の一体が壁を突き破り、壁には黒いシルエットのキャラクターが張りつく――穴が空いたような演出にしたかったらしい。バッタバッタと敵を倒していく兵士。

しかし、その頼もしい登場による安堵も、ほんの一瞬で打ち砕かれた。

「はへ?」

援軍(なのか敵なのかもよく分からない謎の銃撃隊)の容赦ない追撃を受け、突入してきた兵士があっさりと蜂の巣にされて倒れる。当時の記憶ではもっと派手に「プギャー」とやられていた気がしたが、実際は「はへ?」という、想像以上に間の抜けた情けない最期だったらしい。銃撃音も、重厚なものではなく「パシューン」という軽い電子音だったようだ。

「wαταςηηνοδεbανςukuναkuναηδεςukα?」

未来人までもが、文字化けのような奇声を上げながら、意味不明な断末魔とともに沈んでいく。本当は「私の出番少なくないですか?」と言わせたかったらしいが、それを言い切る前に一瞬で爆殺されてしまった。

乱戦の最中、誰の号令だったのかは判然としないが、「バンバンバンバン」という銃撃エフェクトの嵐のあと、誰かが「未来じーーーーーん!!!」と絶叫した気がする。おそらく叫んだのは主人公の梅太郎だろう。物語の主人公補正として最後まで生き残るのは梅太郎なので、消去法でそう推測するしかない。もっとも、そもそも最初からあいつに「未来人」なんて名前をつけて呼んでいたかと言われると、甚だあやしいものである。

「天下の統一を見ることなくこの日を迎えることになるとは......」

スライム大統領が、なぜか戦国武将が討ち死にするかのような重厚すぎる最期のセリフを残して崩れ落ちていく。

......実はこのセリフ、当時ハマってプレイしていた某戦国シミュレーションゲームで、大名キャラが寿命を迎えたときに発する決め台詞をオマージュしたものらしい。スライム大統領、最後の最後に中の人(製作者)の趣味と年齢が完全に漏れ出している。

「梅太郎ぉぉぉぉぉ!!!」

いつも威勢の良かった相棒のシャフトも、力尽きる寸前にただ名前を絶叫するだけの叫び声を残して倒れ伏した。

......最後の最後まで、相棒なのにまともな遺言のひとつすら用意されていない。

そのまま画面は暗転し、梅太郎もやられてしまった。

こうして、ツッコミどころと伏線の投げっぱなしを残したまま、パーティーは盛大に全滅したのだった。
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梅太郎伝説作者:シャフト
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第六幕 こっちの未来人、そして全滅までのカウントダウン

スライム大統領を仲間に入れ、橋を渡っていると、見知らぬ男女が突然目の前に現れた。

「アンソニー......サヨナラ......」

人魚らしき女、ジェーンである。

「......ジェーン......」

アンソニーが切なそうに呟く。

「ジェーーーーーン!!!」

身を投げたジェーンを追って、アンソニーが自らも勢いよく橋から飛び込んでいく。

『ピューン、ガラゴロガッシャーン』

一同、完全無言。

......ツクール3の説明書に載っていた、どこかで見たような悲劇のワンシーンを、ただゲーム内で再現したかっただけらしい。感動もドラマ性もあったものではない。

そのまま進むと、今度は謎のクリスタル洞窟にたどり着いた。

「この先に進めば、何かある気がするズラー。行くっぺちゃ」

「コッチダヨって声がするな。行ってみようぜ」

シャフトが声のする方へ、自信満々にズンズン進んでいく。

......この洞窟、実際の構造はマップひとつしかない非常にコンパクトな作りである。無駄に画面を広く移動させて、いかにも長大なダンジョンであるかのように見せかけていただけだ。プレイヤーを誘導するために、わざわざ「コッチダヨ」なんて親切な音声を鳴らしていたはずだが、のちに友人Sとこの当時を振り返ったとき、記憶はどうも違ったらしい。「あー、あったな......あの問題のシーンね」とのことだった。

進んだ先は、見事にただの行き止まりだった。

「ここで終わってるべ、きっと空耳ズラー」

......しかし、ここからが自作RPGの真骨頂である。四角いグラフィックを透明にすると、その上を歩けてしまう仕様を見つけたので、そのまま使ってみた。

「見えない道があり、進めるようだぞ」

スライム大統領の理不尽かつ鋭い一言をきっかけに、目の前に広がる湖の上を歩く隠し通路が突如として現れる。

その驚き冷めやらぬ湖の奥で、突如として奇妙な何かが姿を現した。

「デルデルデル...デチャッター! ワタシノナマエハ、未来人」

「ミツケテクレテアリガトウ。ナカマニナル」

......SF要素ゼロの世界観に、唐突すぎる未来人が爆誕した。

未来人がパーティーに加入したことで、押し出されるように、これまで苦楽を共にしてきた兵士が強制的に離脱させられる。

「プルルルル」

「ん? 電話か。もしもし、スケさんか。何! それは大変だべ! ......少し急用ができたっぺ! 一度離れるズラー!」

......それにしても、パーティー入れ替えの面倒くささを「電話一本の通信」で強引に押し切るセンスには脱帽である。

ちなみに、本当はこの未来人、町の草原からしれっと加入するのが正しい手順で、しかもゴンザレスイベントより前にすでに仲間になっていたらしい。ここは少し議論になったが、話せば話すほどそんな気がしてきた。人間の記憶とは、案外いい加減なものらしい。

仲間をとっかえひっかえしながら進んだ一行は、やたらと開けた広場に出る。

「トコロデツギハドコニイクンダ?」

未来人の至極もっともな問いに、誰も答えられない。

すると、逃げる間もなく、四方八方から見知らぬ敵が突然現れて囲まれる。

「梅太郎、お前をここで始末する。覚悟せよ」

突然現れたこのキャラクターが、今回のラスボスである。設定上は黄色い紙をまとった戦艦の船長のような姿のはずだったが、復元してみると、白髪で髪の長い邪悪な老人になっていた。

......一切の情け容赦がない、問答無用の突然のイベント戦闘。

絶体絶命のピンチに陥ったその時、上空からあの懐かしい影が、激しい効果音とともに高速回転しながら降ってきた。

「梅太郎! ここはわてに任せるズラー!!」

兵士テーマソングに勝手に決めたBGMと共に颯爽と現れる。

さっき電話で急用と言って離脱したはずの兵士が、あまりにも都合よく舞い戻ってくる。

......困ったときに回転しながら現れるのは、この作品における仲間たちの伝統芸(様式美)である。

「回転ケック!!!」

訛っているからといって、キックが「ケック」になるものだろうか。放たれた一撃で敵の一体が壁を突き破り、壁には黒いシルエットのキャラクターが張りつく――穴が空いたような演出にしたかったらしい。バッタバッタと敵を倒していく兵士。

しかし、その頼もしい登場による安堵も、ほんの一瞬で打ち砕かれた。

「はへ?」

援軍(なのか敵なのかもよく分からない謎の銃撃隊)の容赦ない追撃を受け、突入してきた兵士があっさりと蜂の巣にされて倒れる。当時の記憶ではもっと派手に「プギャー」とやられていた気がしたが、実際は「はへ?」という、想像以上に間の抜けた情けない最期だったらしい。銃撃音も、重厚なものではなく「パシューン」という軽い電子音だったようだ。

「wαταςηηνοδεbανςukuναkuναηδεςukα?」

未来人までもが、文字化けのような奇声を上げながら、意味不明な断末魔とともに沈んでいく。本当は「私の出番少なくないですか?」と言わせたかったらしいが、それを言い切る前に一瞬で爆殺されてしまった。

乱戦の最中、誰の号令だったのかは判然としないが、「バンバンバンバン」という銃撃エフェクトの嵐のあと、誰かが「未来じーーーーーん!!!」と絶叫した気がする。おそらく叫んだのは主人公の梅太郎だろう。物語の主人公補正として最後まで生き残るのは梅太郎なので、消去法でそう推測するしかない。もっとも、そもそも最初からあいつに「未来人」なんて名前をつけて呼んでいたかと言われると、甚だあやしいものである。

「天下の統一を見ることなくこの日を迎えることになるとは......」

スライム大統領が、なぜか戦国武将が討ち死にするかのような重厚すぎる最期のセリフを残して崩れ落ちていく。

......実はこのセリフ、当時ハマってプレイしていた某戦国シミュレーションゲームで、大名キャラが寿命を迎えたときに発する決め台詞をオマージュしたものらしい。スライム大統領、最後の最後に中の人(製作者)の趣味と年齢が完全に漏れ出している。

「梅太郎ぉぉぉぉぉ!!!」

いつも威勢の良かった相棒のシャフトも、力尽きる寸前にただ名前を絶叫するだけの叫び声を残して倒れ伏した。

......最後の最後まで、相棒なのにまともな遺言のひとつすら用意されていない。

そのまま画面は暗転し、梅太郎もやられてしまった。

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