

第四幕 遠回りしすぎ、ショスタコビッチ討伐
関所を越えて南へ進むと、そこは森。
シャフトが唐突に脇道を指差した。
「あっちの方が怪しいから、行ってみようぜ!」
このイベントは、どうでもいい森のマップに配置されており、無視して別の道へ進もうとしてもこれを言われて引き返させられるという、強制連行の鬼畜仕様だった。進む以外の選択肢はなく、完全に詰んでいる。
進んでみると、画面上にキャラのグラフィックはおらず、歩くたびに「あーい、あーい」と声が聞こえてくる。中学校の時に小テストの紙の裏へ矢印と分岐を書き殴って考案し、それをそのままツクール上で具現化した恐怖のイベントである。
進んだ先で出会ったのは、あーいおじさんだった。みすぼらしい格好をしたおじさんだ。
「あーい、あーい。ビーフorチキン?」
▷はい YES
「意味わからん、くたばれ!」
シャフトが一撃を喰らわせて、終了。
......なお選択肢の意味を、誰一人理解していない。
この選択肢、実は小テストの裏の分岐通りに様々なイベントをくっつけており、選択次第であーいおじさんと熊が戦闘する仕掛けだったらしい。しかも選択肢自体が謎すぎて、何も起きない選択肢まで用意されていた記憶がある。当時の俺たちは、選択肢に意味を持たせるという発想を、根本的に放棄していたようだ。
さらに森を進み西に行こうとすると、唐突にシャフトに言われる。
「そっちじゃない気がする。」
さらなる強制イベント。もはや森の分かれ道の意味がない。
仕方なく森の南に行くと、名前もつけられなかった街に着く。そこで別のおじさんに拒絶された。
「この村には何もない......もう来ないでくれ」
......初対面の相手から、いきなり出禁を言い渡される。
こういう、いかにもベタな展開を、当時はどうしてもやってみたかったお年頃だったらしい。
「あいつムカつくから、さっきのところに戻ろうぜ!」
シャフトの提案で街から出ると、また「戻ろうぜ」の号令がかかる。
街に戻ると、煙のようなエフェクトとともに街そのものが丸ごと消えていた。
「なんだ? 街がなくなったぞ?」
......都市計画としては最悪だが、演出としては妙に印象に残る。
北に洞窟があり足を踏み入れると、宝箱が待っていた。
「宝箱がある、開けようぜ」
宝箱を開けた瞬間、青い巨大な龍(某カードゲームの青眼の白龍風グラフィック)が姿を現した。
「くそ、罠か! 行くぞ梅太郎!」
さらに、赤い龍(真紅眼の黒竜風グラフィック)まで登場する。
「おい、戦闘一つにしてくれよ」
......本当は二体並べて一緒に戦わせたかったらしいが、グラフィックが大きすぎて画面に入りきらず、ツクール3の仕様上どうしても並べられなかった。結果として2連続の戦闘になってしまったという、知らなかった挙動による偶然の産物に、当時の俺たちは爆笑していたそうだ。なおS曰く、元々のダンジョン内に宝箱はなかったとのこと。もはや誰もこの龍が飛び出すイベントがどこにあったかはわからない。覚えているのは、デフォルトマップの地下水路にその宝箱があったということだけだ。
戦いを終えて奥へ進むと、謎の存在が待ち構えていた。
「なんだ? こいつらは? 我々が始末してやるわ!!」
その名は、ショスタコビッチ。
......この男が、さっきの街の消滅と何か関係があるのかどうかは、いまだに謎のままである。
名付けたのは友人Sで、当時の筆者は本気で「桃太郎伝説系の敵キャラ」だと思い込んでいた。この活動を始めてから、音楽の教科書に載っている実在の作曲家(ドミートリイ・ショスタコーヴィチ)だとSに暴露され、25年越しに衝撃的なフラグが回収された。
ショスタコビッチは、二匹の肌色ゴブリンで財宝がたくさんあるバックが湖の場所にいた。すごく綺麗なマップだ。もちろんデフォルトマップだ。
なお簡単にショスタコビッチを討伐。
「結局よく分からんかったな。次に行こうぜ!」
......よく分からないまま倒して、よく分からないまま次に進む。このシリーズで一番潔い決着かもしれない。
筆者は、ここら辺にイベントがあったけど何があったかは全く覚えてなかったという。Sが颯爽と俺が作ったイベントということで見事復元された。言われた時は、全身に稲妻が走るような感覚で夜な夜な笑いが止まらなかったそうだ。
ちなみにこの寄り道の間、本編になんの影響もなく、おじいさんとおばあさんの喧嘩を止める道のりは一歩も進んでいない。