
五話 お前……武神系だったんか……?
シンローに色々説明してもらっている間に、あっという間に夜になった。あれからユタカを始めとする町人達が熱心にお祈りしてくれたのか、初陣の前には神威は七まで上がっていた。このペースが早いかは分からない。
初陣と内心意気込みつつ、外に出るが誰もいない。
「あれ? 国王とか、兵隊は?」
「ん? いらないから帰したよ?」
「は?」
カチャリと音がするので振り向くと、シンローが腰の刀に手をかけた音だった。
――いつの間に......?
「って、俺達だけでトロールを撃退するの?」
「そうだよ。トロール位ちょろいもんだよー」
細い目が嬉しそうにキラリと光る。少し寒気がした気がする。
「それに、折角だし従魔の練習してもいいかなーって」
「国存亡の危機なのに、そんな軽い扱いでいいのかな?」
「今までは救援要請なかったからねぇ。まぁ、干渉し過ぎると人事評価下がるし?」
「でた、人事評価!」
「なんなんだよそれ!」と毒づくが、シンローは無視して俺の手を握る。
「さぁ、折角だしトロールの群れの先頭まで飛翔のスキルで飛んでみようか?」
俺の返事を聞かないままシンローは羽ばたき始め、手を離してくれないので、俺の体も浮き始める。
「ほら、羽ばたくんだー」
「クソがー!」
それっぽい感覚の部位を動かしてみたら、なんとか羽ばたくことができた。手を引かれるまま身体を浮かせ、シンローと共に空を行く。
空から見たウミノハーシ国は国というより、寂れた村という方が近い国だった。薄暗い月明かりに照らされて、ひっそりとした村が肩を寄せ合って暮らしているように見えた――国がここまで小さくなるって......何があったんだよ......?
山林の上空を飛翔していると、木々がワサワサと揺れている所が見えた。
「いたね。降りるよ」
トロールの群れから少し離れた所に降り立ち、シンローは言う。
「いい? たぶんトロールのリーダーがいるから、ダイチはリーダーを見つけて、使い魔にするんだ。リーダーを従わせれば、子分のトロールもダイチに従う」
「服従のスキルだな?」
「違うよ。ステータス確認して。従魔の基礎スキルあるでしょ? そっち」
「え?」
ドシン、ガサガサ等の騒がしい音を遠くに聞きながら、慌てて自分のステータスを開く。
***
ダイチ・コヤーマ・ビッジョ
神威:7
信仰:83
権能:従魔
ステータス:新生神
不敬:10pt
***
「スキルのページあるでしょ?」
「あ、ここか......」
***
ダイチ・コヤーマ・ビッジョ
神スキル
浄化:1
治癒:1
神の声:1
浮遊:1
飛翔:1
従魔スキル
伏魔:1(1/50)
対話:1
服従:1
***
「伏魔?」
「そう、この伏魔ってスキルでトロールを従魔にすればいい」
「服従とは何が違うんだ?」
「うーん......服従は従魔にしてなくても、一時的に従わせるスキルなんじゃないかなぁ......?」
スキル画面を見つめながら、なるほどと頷いていると、シンローがカチャリと抜刀した。
「さて、僕は死なない程度に足止めしてくるから、頑張ってね」
「え? スキルの使い方分かんねぇ......あ......」
シンローはなかなかの笑顔をしながら、風のように闇の中に消えていった。すぐに遠くから「あがァァァ」とか、トロールの悲鳴っぽいものとかが大量に聞こえ始める。
――えぇ、お兄様、戦闘狂系......? 爽やかそうに見えて、武神系? ギャップ......。
(呆けてないで、さっさと行かないと。シンローが勢い余って殲滅しちゃうよー)
空からいつもの声が響く。
「やっぱりシンローって、そういう系?」
(血が滾るみたいねぇ)
キレイーナの苦笑いする声が響く。(ほら、早く!)という言葉に急かされて、俺は暗い森の中を小走りで急ぐ。だんだんとシンローの「天誅!」「天誅!」という楽しそうな声と、トロール達の可哀想な声が近付いてくる。
「うごォォォ!」
「天誅!」
ドシン
「あがァァァ!」
「天誅!」
ドーン
――なんか、トロール達が可哀想になってきた。早くリーダーを......あ、あいつか!
残り十を切るトロールの集団の、一番奥に一番巨大な姿を見つけた。他のトロールの1.5倍は大きそうだ。
シンローが生き生きと、それはもう日頃の鬱憤を晴らすかのように、硬いはずのトロールの皮膚を切り裂いていく。早く伏魔してしまわなければ、本当にトロールが全滅してしまいそうだ。
――えぇい、ままよ!
「おい、そこのトロールの親分! 俺に従え!」
ビクリとトロール達が俺を振り向いた。