ホーム›神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~›十二話 木を守るために木を切れ!!
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挿絵AIで作った挿絵

十二話 木を守るために木を切れ!!

「ロック、木は切らせてもらう」
「何故? 話と違う」
「違わない。俺は山を荒らされない方法を一緒に探そうと提案したはずだ」
「木を切ると山は荒れる」
「ほれみろ、魔物は結局人間の邪魔をする!」

 どこからか現れたワカラン君が横槍を挟み始める――若いなぁ。あ、でも俺が死んだ年齢よりかは上そうだな......うん。でも、君がそう言う気持ちも分かるよ。うん。

「違う、自然の邪魔をするのは人間だ」
「神の次に人間が偉いんだよ!」
「違う、神の次は自然だ」
「違うね! 人間だ!」

 ロックとワカラン君による違う違う合戦が始まるが、ワカラン君を羽交い締めにする男達が二名ほど現れた。

「ワカラーヌやめろ、お前さっき罰を受けたところだろ!」
「止めるなソウボク! 今、ルールはないし死人は出ないはずだ!」
「お前ちょっとこっち来て落ち着け!」
「放せカモック! ここで線引きしておかないと、奴らは調子に乗るんだ!」
「魔物のことはダイチ様や国王に任せとけ!」
「ソウボクの言う通りだ。俺達がどうこう言うことじゃない!」
「やめろ! 放せ!! 俺は分からせるんだ!」

 ロックが呆気に取られている間に、ワカラン君は二人に引き摺られて賑やかに退場していった。

「......」
「......」

 俺と国王は顔を見合わせる。国王は困ったように汗を小汚いハンカチで拭った。

――まぁ、人間側の言い分をトロール側に主張する良い機会だな......。

 国王に頷いて、反論を促す。

「ロック殿、人間が山を荒すという認識が間違いかと思います」
「間違い......?」
「はい。むしろ木を無尽蔵に生やした方が、山は荒れやすいです」
「......どういうことだ?」
「木が増えすぎて密集すると、一本一本の木が吸収できる栄養が減り、成長が悪くなります。また、増えすぎた木々は日光を遮ります。木以外の植物が育ちにくくなります」

 なるほどな、と思いながら俺は知っていたかのように頷く。まさか、国王がこんなに林業に精通しているとは思っていなかった。

「......確かに、木が多い森は暗い所が多い」
「そうでしょう。暗い森は魔素も滞留しやすく、魔物も出やすくなります......ロック殿にはいいことでしょうが、魔物以外の生き物にはよくないことです」
「確かに、仲間も増えやすい。動物は減る」
「魔物が本来の動植物を荒らすのは良くないことではないでしょうか?」
「そうだな。良くない」

 思わず国王の説得術に聞き入ってしまう。この国王、意外とカードとしては強いかもしれない。ありがたい。

「ここで一つ朗報があります」
「......なんだ?」
「人間は余分な木々を伐採して、山を健全に保つ知識を持っています」
「例えば?」
「間伐です。他には貯水で水の管理も行うと、より良いでしょう」
「しかし、木々を切るのは――」
「ロック殿、なんでもかんでもありのままが良いというのは間違いです。ある程度、人の手によって管理することで、より良い状態に保つこともあるのです」

 なおも抵抗しようとするロックを抱え上げる。岩のはずなのに、俺にはそこまで重さを感じない。ロックは困惑したように何度も瞬きしながら俺を見た。

「主、分からない」
「ロックの拒否感も分かるよ。全部一気に始めるのは怖いだろうからさ、まずは少しの区域から試してみようぜ」
「う......わかった......」

 とりあえず第一関門はクリアできた、と国王と目を合わせて微笑んだ。

 さて問題はどの場所から始めるかということになる。クラーケン退治の翌日、俺は国王と有識者達、それにロックと膝を合わせて土地計画の話を始める。

「木材を運ぶのを少しでも楽にするため、まずは海辺の辺りの木々を使いたいと思っています」

 宰相のメイセキが地図を広げながら淡々と言う。

「船はどれくらい作る予定なんだ?」
「まずは手漕ぎの五人乗り程度の舟を三隻程作りたいです。木は大きさによりますが、十五本程度は必要です」
「なるほど......で、今後は他にも木材は使いたいから、材木担当の人員があった方がいいな」
「そうですね。出来れば木こり五人、製材五人、大工五人は常に欲しいところです」
「じゃあ、求人募集するか」

「求人?」メイセキが目を見開いた後、何故だか頬を膨らませながら肩を震わせる。

「どうした?」
「いえ、求人など、久しぶりに聞いた言葉なので......」
「どんだけギリギリ国家だったの?」
「陛下には申し訳ないですが、もう滅亡寸前だったもので......ダイチ様が誕生してからの変わりように、心底感謝しております」
「自覚はしてたんだな......」
「それはもう」

 メイセキの言葉に、皆が笑った。国王が口を開く。

「ついでに今後必要になりそうな職も募集しよう。暫くは現物支給になるだろうが、民も活気づくだろう」
「米農家は優先で頼む」
「ダイチ様、分かっていますねぇ......米は我が国のソウルフードですので、農家の中でも最も重要な職です」

――気が合うな国王!!

 俺は心の中で国王と握手を交わす。

「――海辺なら、この辺りが密集しているな」
「あっ!」

 マイペースに説明を始めるロックに、慌ただしく農林大臣のリンリンがメモを始める。

「海辺以外なら、こことここがかなり密集している。次はここ」
「あっ!」
「畑を作るなら、この辺がいいかもしれない」
「あっあっ! 待ってください......!」

――大丈夫。落ち着け、リンリン!

 たぶんきっと、ムガクが記録して――って、そんなスキルまだねぇや! ごめん!
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神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~作者:小島もりたか
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「ロック、木は切らせてもらう」
「何故? 話と違う」
「違わない。俺は山を荒らされない方法を一緒に探そうと提案したはずだ」
「木を切ると山は荒れる」
「ほれみろ、魔物は結局人間の邪魔をする!」

 どこからか現れたワカラン君が横槍を挟み始める――若いなぁ。あ、でも俺が死んだ年齢よりかは上そうだな......うん。でも、君がそう言う気持ちも分かるよ。うん。

「違う、自然の邪魔をするのは人間だ」
「神の次に人間が偉いんだよ!」
「違う、神の次は自然だ」
「違うね! 人間だ!」

 ロックとワカラン君による違う違う合戦が始まるが、ワカラン君を羽交い締めにする男達が二名ほど現れた。

「ワカラーヌやめろ、お前さっき罰を受けたところだろ!」
「止めるなソウボク! 今、ルールはないし死人は出ないはずだ!」
「お前ちょっとこっち来て落ち着け!」
「放せカモック! ここで線引きしておかないと、奴らは調子に乗るんだ!」
「魔物のことはダイチ様や国王に任せとけ!」
「ソウボクの言う通りだ。俺達がどうこう言うことじゃない!」
「やめろ! 放せ!! 俺は分からせるんだ!」

 ロックが呆気に取られている間に、ワカラン君は二人に引き摺られて賑やかに退場していった。

「......」
「......」

 俺と国王は顔を見合わせる。国王は困ったように汗を小汚いハンカチで拭った。

――まぁ、人間側の言い分をトロール側に主張する良い機会だな......。

 国王に頷いて、反論を促す。

「ロック殿、人間が山を荒すという認識が間違いかと思います」
「間違い......?」
「はい。むしろ木を無尽蔵に生やした方が、山は荒れやすいです」
「......どういうことだ?」
「木が増えすぎて密集すると、一本一本の木が吸収できる栄養が減り、成長が悪くなります。また、増えすぎた木々は日光を遮ります。木以外の植物が育ちにくくなります」

 なるほどな、と思いながら俺は知っていたかのように頷く。まさか、国王がこんなに林業に精通しているとは思っていなかった。

「......確かに、木が多い森は暗い所が多い」
「そうでしょう。暗い森は魔素も滞留しやすく、魔物も出やすくなります......ロック殿にはいいことでしょうが、魔物以外の生き物にはよくないことです」
「確かに、仲間も増えやすい。動物は減る」
「魔物が本来の動植物を荒らすのは良くないことではないでしょうか?」
「そうだな。良くない」

 思わず国王の説得術に聞き入ってしまう。この国王、意外とカードとしては強いかもしれない。ありがたい。

「ここで一つ朗報があります」
「......なんだ?」
「人間は余分な木々を伐採して、山を健全に保つ知識を持っています」
「例えば?」
「間伐です。他には貯水で水の管理も行うと、より良いでしょう」
「しかし、木々を切るのは――」
「ロック殿、なんでもかんでもありのままが良いというのは間違いです。ある程度、人の手によって管理することで、より良い状態に保つこともあるのです」

 なおも抵抗しようとするロックを抱え上げる。岩のはずなのに、俺にはそこまで重さを感じない。ロックは困惑したように何度も瞬きしながら俺を見た。

「主、分からない」
「ロックの拒否感も分かるよ。全部一気に始めるのは怖いだろうからさ、まずは少しの区域から試してみようぜ」
「う......わかった......」

 とりあえず第一関門はクリアできた、と国王と目を合わせて微笑んだ。

 さて問題はどの場所から始めるかということになる。クラーケン退治の翌日、俺は国王と有識者達、それにロックと膝を合わせて土地計画の話を始める。

「木材を運ぶのを少しでも楽にするため、まずは海辺の辺りの木々を使いたいと思っています」

 宰相のメイセキが地図を広げながら淡々と言う。

「船はどれくらい作る予定なんだ?」
「まずは手漕ぎの五人乗り程度の舟を三隻程作りたいです。木は大きさによりますが、十五本程度は必要です」
「なるほど......で、今後は他にも木材は使いたいから、材木担当の人員があった方がいいな」
「そうですね。出来れば木こり五人、製材五人、大工五人は常に欲しいところです」
「じゃあ、求人募集するか」

「求人?」メイセキが目を見開いた後、何故だか頬を膨らませながら肩を震わせる。

「どうした?」
「いえ、求人など、久しぶりに聞いた言葉なので......」
「どんだけギリギリ国家だったの?」
「陛下には申し訳ないですが、もう滅亡寸前だったもので......ダイチ様が誕生してからの変わりように、心底感謝しております」
「自覚はしてたんだな......」
「それはもう」

 メイセキの言葉に、皆が笑った。国王が口を開く。

「ついでに今後必要になりそうな職も募集しよう。暫くは現物支給になるだろうが、民も活気づくだろう」
「米農家は優先で頼む」
「ダイチ様、分かっていますねぇ......米は我が国のソウルフードですので、農家の中でも最も重要な職です」

――気が合うな国王!!

 俺は心の中で国王と握手を交わす。

「――海辺なら、この辺りが密集しているな」
「あっ!」

 マイペースに説明を始めるロックに、慌ただしく農林大臣のリンリンがメモを始める。

「海辺以外なら、こことここがかなり密集している。次はここ」
「あっ!」
「畑を作るなら、この辺がいいかもしれない」
「あっあっ! 待ってください......!」

――大丈夫。落ち着け、リンリン!

 たぶんきっと、ムガクが記録して――って、そんなスキルまだねぇや! ごめん!
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