

十三話 くもクモkumo蜘蛛!!
――......ケテ......ダ......サ......タス......。
求人募集が始まり、国民が少しずつ職を得るようになって数日が経った。山――というか森もだけど――の木々の間伐が始まったのが昨日。今日もオンボロ城の会議室で農作物のことや、漁について会議していると、一人の兵士が会議室に転がり込んできた。
メイセキが眉間に皺を寄せながら問いかける。
「どうしました?」
「洞窟を発見しました! ですが魔物の巣窟だったらしく、何人かが......! 応援を求めます!」
一気に会議室の空気が凍りついた。俺は思わず下唇を噛む。
――初めてシンローがいない日だって日に......!
「急いで助けに行くぞ! 場所を教えてくれ!」
「ダイチ様、落ち着いてください。まずは状況の整理が必要です」
「わかった! 整理はお前らに任せた! 俺は行く!」
「ダイチさま――!」
国王やメイセキ達を会議室に残して俺は窓から飛び立った。
――なんか変な声が聞こえてると思ったけど、助けを求める声だったのかよ!?
声に意識を集中すると、なんとなくその場所が分かる。本来はメイセキの言う通り状況を把握してからじゃないといけないのは分かってはいたが、いてもたってもいられなかった。
――ごめん! 声があるってことは生きてるってことだよな!?
洞窟はすぐに見つかった。俺の神威上昇に伴い、二頭身になったロックが音もなく洞窟の入口に降り立つ。
(......何か見えるか?)
俺も静かにロックの横に降り立つ。
(中で何かが蠢いている)
(ムガク、ここに居そうな魔物ってなんだ? まだ兵士は生きてるみたいだし、すぐに獲物を喰らわない感じのやつ)
(......洞窟ならゴブリン、蟻系、蜘蛛系、植物系かにゃ。その中で生きたまま備蓄するとしたら、蟻か蜘蛛か植物の可能性が高いにゃ)
(ほとんど絞れてなくない?)
(ゴブリンは減ったにゃ)
奥の方から小さく誰かの呻き声が聞こえる。ゴクリと喉が鳴った。
(......なぁ、伏魔できる魔物の可能性は?)
(現時点なら、植物系以外なら可能だと思うにゃ)
(なるほど......)
兵士も助けられて、運が良ければ従魔にもできる......もし成功したら一石二鳥だ。
――いや、伏魔ってどうすりゃいいんだ?
なにせロックの時は偶然上手くいった感じなのだ。具体的な伏魔の方法について、残念ながら俺はまだ把握していない。
――そういえば練習しておけば良かった、忘れた!
頭をガシガシ掻きながらどうするかと考えていると、不意に現れた黒い影にロックが拐われていった。
「あ――っ!」
戦闘に関してはズブの素人な俺は、咄嗟に洞窟内部に入ってしまう。
「あ......」
「ダイチはお馬鹿にゃー」
黒いものに包まれたかと思ったら、気が付いたら逆さ吊りになっていた。真っ暗な空間のなか、俺の頭の上の輪が煌々と光って辺りを照らす。
「ダイチ様?!」
三人の兵士が俺を見て驚く。隣を見ると、ロックも俺達同様、白い紐にグルグル巻きにされた状態で逆さ吊りになっていた。
「あー、ごめん......」
気まずくて視線を逸らすと、逸らした先で赤い目と目が合った。
「ヒッ!!」
俺の顔より大きな巨大な目。俺の身体なんてひと呑みしてしまいそうな巨大な口。俺の太ももより太い黒くて毛むくじゃらの脚。
「こ、こんにちは?」
俺が挨拶すると、蜘蛛は不思議そうに目を揺らした――まてまて、俺の下にめっちゃくちゃ蜘蛛いない?! 俺達食われちゃうの?!
(不思議ね、あなたの言葉が分かるわ)
意外と理性的な言葉が返ってきて、俺は何度も目を瞬いた。
「俺は神なんだ。あなたはここの蜘蛛のリーダー?」
(リーダー......? いいえ、私は母よ。この子達の産みの親)
――あ〜、そういうね?
下にいる子蜘蛛がわさわさと蠢いているのが聞こえてくる。なんで動くの? 数がいすぎて気持ち悪いからやめて!!
「俺達を食べるつもり?」
(そうね、そのつもりだったけど、貴方は食べれなさそうね。中身がなさそうだもの)
「え、俺中身空っぽなの?!」
(えぇ、匂いがないわ)
空という衝撃で固まっていると、聞き慣れた声が空から降ってくる。
(そうよー。神威が低い貴方には、肉体はないのよー)
(初耳ですが?!)
(教えてないなら当然よ。でも、不思議に思わなかったの? 鏡に姿が映らないでしょ?)
(......鏡に遭遇してないかも?)
(......ドンマイ)
(......)
おい、クソ上司! ふざけるんじゃねぇ!!
(――はい、不敬!)
(ねぇ、わざと? わざと不敬ポイント稼ごうとしてない?)
(はいこれも不敬〜。合計で三ポイント加算しますぅ)
(うぜぇ!!)
(はい、合計五ポイント!!)
「......ムガク。天界にいるクソ上司を殴る方法を教えて?」
「縄を首にかけて引き摺りおろすにゃ」
「どうやって天界まで縄を飛ばすのかな?」
「天界の場所によるにゃ」
「うーん、ハルシネーション!!」