

七話 魔物に襲われなくても滅びそう
山で解散して教会に戻ると、シンローは表示された画面を見て、そそくさとまた旅立って行った。
――めちゃくちゃ戦闘狂じゃねえか!
シンローの働きにより、魔物退治も素早く終わったので夜もまだまだ深い。ロックをテーブルの上に乗せ、ムガクを起動する。
「えっと、今って本何冊まで覚えられる?」
《七冊程度です》
「ってことは、だいたい俺の神威と同じ冊数になるのか」
《しばらくはそうです》
「とりあえず、六冊読み込ませとくかー」
部屋にある本棚を見上げる。
――んーと、次にしないといけないことを基準に......。
国のステータスを確認する。
***
ウミノハーシ国
総人口:三百四人
食料:残り五日
状態:滅亡寸前
***
「おいおい、地味に食料もやべーじゃねぇか!」
魔物の情報に目がいっていたが、地味に食料がないこともヤバい。放っておいたら餓死する。滅亡する!
「っていうか、残り五日の基準ってなんだよ?! 皆が三食、一汁三菜しっかり食べたら五日なの? それとも一日一食おにぎり一つなの? アバウト過ぎんだろ、わかんねーよ!」
こんな時に限ってクソ上司は何も言ってこない――教えろや! おい、無視すんな! おい、覗き魔!
......本当に不在なのかもしれない。頭を掻きむしりながら、とりあえず農業と漁業関連の本を二冊ずつぶっ込む。
――後は山菜とか野生のものか......。
「長期的には農業発展させないとダメだけど、直近だと農業の収穫は間に合わないもんな......うん」
あと、この土地は海も比較的近い。漁業でそれなりに海産物が取れればさらに強い。
「あー、ついでにこの世界の情報ももう少し仕入れないと。地図とか地理的な本っと......」
そんなこんなで滅亡させない為の対応策を考えていると、あっという間に夜が明けた。気が付けば神威は八に上がり、シンローはほくほく顔で戻ってくる。
「干渉しすぎると、人事評価がとか言ってた気がするけど、魔物退治し過ぎると干渉にならねぇの?」
「そこは諦めてるんだよね、僕」
「はい、戦闘狂――切り裂きジャックー」
「斬るの楽しいよ?」
「俺は武神じゃないから」
シンローは何で興味がない? とばかりに不思議そうな顔をしているが、俺はそんな物騒な欲求はありません!
俺とシンローは教会を出て、城とは程遠いが、多少はほかの建物より大きい家屋に入っていく。
「え――国民の犠牲がなかったんですか......?」
「あぁ。山の中で解決したから......ほら、こいつが来る予定だったトロール。従魔にしたから小さくなったけど......」
「す、凄い......! ありがとうございます! ありがとうございます!」
「お......おう。これからも頑張るよ......」
「ありがとうございます!!」
どんな状況だったかとか、細かいことは一切聞かれず、ただただ感謝されて正直困った。国王の顔を見ると目の下のクマが凄い......なんというか、苦労してんだなと同情した。頑張ってやらないと......ってこれは社畜根性?! 俺はあのクソ上司の思惑通りになりたくねぇ! なんだか不敬ポイントが無言で足された気がするが、気にしないでおく。
(僕が代理担当になってる時は、秘密裏に魔物退治していたけど、これからは君にちゃんと感謝が行くようになるから嬉しいやー)
(なんで秘密裏にしてたんだ?)
(大々的に僕が護っちゃうと、僕がここの主神になっちゃうじゃん! これ以上担当増えるのは嫌だよ!)
(あぁ......)
シンローも見事な社畜であったことを思い出して、思わず苦笑いしてしまう。
町でもシンローが大声で俺の戦果を吹聴するものだから、結局神威が十まで上がった。
「うんうん。昨日はどうなることかと思ったけど、順調順調!」
シンローが大きくなった俺の頭を撫でながら満足していると、ユタカが駆けて来た。
「ダイチ様! もうこんなに大きく......!!」
「ユタカの祈りのお陰が大きいですよ」
「いえ! 私の祈りなんてしれてますよ!」
ユタカは「昨日もっと抱っこさせてもらえばよかった」と俺を抱きしめながら小さくボヤく。抱きしめた傍から、ぐるきゅきゅきゅぅ......と複雑な音がする。ユタカは俺を解放し、顔を赤らめながら「ごめんなさい」と言った。
「朝ごはんまだ食べてないの?」
「最近は昼と晩のみですね!」
「食い物ないの?」
「そうですね......海も山も、魔物が出るのでなかなか食料調達にいけないんですよ......作ろうと思っても荒らされますし......」
ぐるきゅきゅう、とユタカのお腹がまた鳴る。そういえば、神になってから一度も何かを口にしたことがないが、神はつまりそういうことなのだろう。
「山なら解決したかも」
「......え?」
「夜中に来たトロールを伏魔した。だから、山は大丈夫かも。今から空いてる人手で何か取りに行こうぜ!」
「え、トロールを従えたんですか?! ダイチ様、凄いです!」
キラキラした目を向けてくるユタカに、足元の小さな岩を指さす。
「仲間になったトロールのロックだ。ロック達が取っても問題ない食料や、取っていい量を指示してくれるから、皆しっかり従うように!」
いつの間にか出来ていた人だかりに向かって説明する。皆不思議そうな顔でチビのロックを見ていた。何人かは遠巻きに訝しげに俺たちを見ていたが、今は食料問題の方が重要だ。無視する。
「トロールって陽の光苦手じゃないのか......?」
すす汚れた服の男性が呟く。
「伏魔された魔物は光に対して耐性ができるみたいなんだ。ロックと同じくらいチビのトロールは俺達の味方だ。傷つけないように気をつけてくれ!」
「山の恵みの奪いすぎは許されぬ。我らに従うように」
ロックの言葉に、お腹を満たしたくてたまらない人々は真剣に頷いた。
「じゃあ、まずは様子を見て手伝ってくれる人間だけで作業しよう。でも人手は欲しいから、まずはすぐに集められる人だけ集めてここに集合して欲しい。三十分後、ここに改めて集合してくれ」
「わかりました!」
町民がそれぞれ頷いて散開していった。俺達はひとまず分担の構成を考えることにしよう......。