ホーム›神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~›二十話 聖職者が汚職は世も末
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二十話 聖職者が汚職は世も末

「ダイチ、そろそろ司祭選んだら?」

 蜘蛛の糸で紡織産業計画を初めてから数日後のとある夕方、教会の自室にて寛いでいたら、急にシンローに言われた。寝耳に水である。

「司祭って......いないもんじゃないの?」
「普通はいるよ。ここの教会の前司祭は汚職が酷かったから、僕がこっそり天誅したんだよ」
「サラッと酷いこといったな」
「酷いことしてたのは、前司祭だよ」

 やれやれと肩を竦めるシンロー。いや、天誅ってことはサラッとイチキルしたってことだよな? そうなんだろシンロー?!

「前司祭は何してたんだよ?」
「ウミノハーシ国の情報を隣国のシッ国に売ったり、職権乱用して豪勢な暮らししてたりしたね」
「あー、教会の家具が豪華だったり、備蓄が多かったのはそのせいだったのか」
「ちなみに前担当神は、前司祭のせいで消滅したよ」
「おおう......なんて不運......」

 教会にいたのでそっと十字を切ってみるが前世は特にそっちの信者だったわけではない。運が悪ければ、俺も消滅したかもしれないと思うと肝が冷える。

「ちなみに司祭はどうやって選べばいいんだ?」
「んー? よく祈ってくれる人じゃない?」

 パッと思い浮かんだ人がいるが、あまり気は進まない――いや、だって、ハグ強制......。

「信仰深い人を司祭にしておけば、信仰者を増やしてくれるからね」

――いや、うん......。そうかもしれないけど......。

「まぁ、ぶっちゃけ適任はユタカちゃんだよね。たぶん」
「ぶっ!!」

 縋るようにシンローを見る。

「他に信仰深い人いないの......?」
「うーん、一番わかるのが信仰されてる本人なんだよねぇ......。明日司祭の選出をするって宣言して、立候補者を募ったら? それで神の耳で候補者の祈りを聞けばいい」
「なるほど?」

 という訳で、メイセキに報告した後、早速広場で募集してみた。立候補者は十二人。その中にユタカはいなかった。なんだか少し残念である。
 立候補者を教会に集めて祈りを捧げてもらったが、やはりどの立候補者もしっくりこない。
「今日決めなくていいよ」というシンローのアドバイスから、その日は解散してもらって、夕方ユタカを探した。
 聞きこみ調査の末、たどり着いたのはユタカの自宅だった。ユタカの家は小さい家で、玄関のドアから入るとすぐがリビングダイニングらしく、簡素な棚とキッチン、テーブルに椅子が目に入った。ユタカは部屋の一番奥にある祭壇のようなものの近くに座って服っぽいものの補修をしていた。
 祭壇には小さな子供が好きそうな、布でできた人形が置いてある。

「これはこれはダイチ様。どうかされましたか?」

 キッチンにいたユタカの母が、目をまん丸くして包丁を動かす手を止める。今晩のおかずはキノコと魚の蒸し焼きのようだ。

「ちょっとユタカに用があって......いいですか?」
「ユタカ! ダイチ様が御用らしいよ、行っておいで!」
「え?!」

 ユタカが駆け寄って来たので、そのまま家から出た。外にある井戸のそばに行き、近くの岩に腰掛ける。

「急にどうしたんですか、ダイチ様?」

 なんと言葉にしようか考え、結局ストレートに聞くことにした。

「司祭に立候補すると思ってたのに、しなかったから何でかなって思って」

「あっ」とユタカは気まずそうに声を上げた。

「その......あまり家に余裕がないのです......」
「司祭って職業にならないの?」
「以前はそうだったかもしれませんが、今はそれどころじゃないじゃないですか?」

 確かに、自分達の生活だけで手一杯かもしれない。でも、それだけじゃないと、俺の勘が訴えかけてくる。

「司祭になったら、家族で教会に住めばよくないか? 部屋も今の家より大きいだろ? 給料はメイセキからふんだくればいいし、家事全般は今のままで、日中の仕事を司祭にするだけじゃだめなのか?」
「それは......そうかもしれませんが......」
「何か他に問題があるのか?」

 ユタカを見つめると、ユタカが瞳を揺らしながら視線を逸らす。何度も言おうとしては口を噤むのを繰り返すので焦れったい。

「正直にいうと、俺はユタカが司祭に立候補してくれなくて寂しかった」
「え......」
「だから、理由くらいは知りたい。聞けば諦められるかもしれないから」

 初めて会った日の、生き生きと俺を愛でて信仰してくれたユタカを思い出す。ユタカの熱心な信仰のお陰で初期の辛い時期に神威が一気に上がった。俺にとってユタカは、俺の狂信者一号なのだ。

 めげずにじっと見つめ続けると、ユタカはポツリと呟いた。

「赤ちゃんがいいんです......」
「え?」

 意を決したようにユタカが俺を見返して、俺の手を強く握る。

「私は、ダイチ様は、赤ちゃん推しなのです!!」
「えーっ!?」

(ぶふっ!!)とどこかで噴き出した音が聞こえた気がした。
盗聴してんじゃねえ、クソ上司め。
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神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~作者:小島もりたか
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二十話 聖職者が汚職は世も末

「ダイチ、そろそろ司祭選んだら?」

 蜘蛛の糸で紡織産業計画を初めてから数日後のとある夕方、教会の自室にて寛いでいたら、急にシンローに言われた。寝耳に水である。

「司祭って......いないもんじゃないの?」
「普通はいるよ。ここの教会の前司祭は汚職が酷かったから、僕がこっそり天誅したんだよ」
「サラッと酷いこといったな」
「酷いことしてたのは、前司祭だよ」

 やれやれと肩を竦めるシンロー。いや、天誅ってことはサラッとイチキルしたってことだよな? そうなんだろシンロー?!

「前司祭は何してたんだよ?」
「ウミノハーシ国の情報を隣国のシッ国に売ったり、職権乱用して豪勢な暮らししてたりしたね」
「あー、教会の家具が豪華だったり、備蓄が多かったのはそのせいだったのか」
「ちなみに前担当神は、前司祭のせいで消滅したよ」
「おおう......なんて不運......」

 教会にいたのでそっと十字を切ってみるが前世は特にそっちの信者だったわけではない。運が悪ければ、俺も消滅したかもしれないと思うと肝が冷える。

「ちなみに司祭はどうやって選べばいいんだ?」
「んー? よく祈ってくれる人じゃない?」

 パッと思い浮かんだ人がいるが、あまり気は進まない――いや、だって、ハグ強制......。

「信仰深い人を司祭にしておけば、信仰者を増やしてくれるからね」

――いや、うん......。そうかもしれないけど......。

「まぁ、ぶっちゃけ適任はユタカちゃんだよね。たぶん」
「ぶっ!!」

 縋るようにシンローを見る。

「他に信仰深い人いないの......?」
「うーん、一番わかるのが信仰されてる本人なんだよねぇ......。明日司祭の選出をするって宣言して、立候補者を募ったら? それで神の耳で候補者の祈りを聞けばいい」
「なるほど?」

 という訳で、メイセキに報告した後、早速広場で募集してみた。立候補者は十二人。その中にユタカはいなかった。なんだか少し残念である。
 立候補者を教会に集めて祈りを捧げてもらったが、やはりどの立候補者もしっくりこない。
「今日決めなくていいよ」というシンローのアドバイスから、その日は解散してもらって、夕方ユタカを探した。
 聞きこみ調査の末、たどり着いたのはユタカの自宅だった。ユタカの家は小さい家で、玄関のドアから入るとすぐがリビングダイニングらしく、簡素な棚とキッチン、テーブルに椅子が目に入った。ユタカは部屋の一番奥にある祭壇のようなものの近くに座って服っぽいものの補修をしていた。
 祭壇には小さな子供が好きそうな、布でできた人形が置いてある。

「これはこれはダイチ様。どうかされましたか?」

 キッチンにいたユタカの母が、目をまん丸くして包丁を動かす手を止める。今晩のおかずはキノコと魚の蒸し焼きのようだ。

「ちょっとユタカに用があって......いいですか?」
「ユタカ! ダイチ様が御用らしいよ、行っておいで!」
「え?!」

 ユタカが駆け寄って来たので、そのまま家から出た。外にある井戸のそばに行き、近くの岩に腰掛ける。

「急にどうしたんですか、ダイチ様?」

 なんと言葉にしようか考え、結局ストレートに聞くことにした。

「司祭に立候補すると思ってたのに、しなかったから何でかなって思って」

「あっ」とユタカは気まずそうに声を上げた。

「その......あまり家に余裕がないのです......」
「司祭って職業にならないの?」
「以前はそうだったかもしれませんが、今はそれどころじゃないじゃないですか?」

 確かに、自分達の生活だけで手一杯かもしれない。でも、それだけじゃないと、俺の勘が訴えかけてくる。

「司祭になったら、家族で教会に住めばよくないか? 部屋も今の家より大きいだろ? 給料はメイセキからふんだくればいいし、家事全般は今のままで、日中の仕事を司祭にするだけじゃだめなのか?」
「それは......そうかもしれませんが......」
「何か他に問題があるのか?」

 ユタカを見つめると、ユタカが瞳を揺らしながら視線を逸らす。何度も言おうとしては口を噤むのを繰り返すので焦れったい。

「正直にいうと、俺はユタカが司祭に立候補してくれなくて寂しかった」
「え......」
「だから、理由くらいは知りたい。聞けば諦められるかもしれないから」

 初めて会った日の、生き生きと俺を愛でて信仰してくれたユタカを思い出す。ユタカの熱心な信仰のお陰で初期の辛い時期に神威が一気に上がった。俺にとってユタカは、俺の狂信者一号なのだ。

 めげずにじっと見つめ続けると、ユタカはポツリと呟いた。

「赤ちゃんがいいんです......」
「え?」

 意を決したようにユタカが俺を見返して、俺の手を強く握る。

「私は、ダイチ様は、赤ちゃん推しなのです!!」
「えーっ!?」

(ぶふっ!!)とどこかで噴き出した音が聞こえた気がした。
盗聴してんじゃねえ、クソ上司め。
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神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~作者:小島もりたか
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