ホーム›神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~›十九話 さては変態だな?!
← 前の話目次
挿絵

十九話 さては変態だな?!

二十歳くらいだろうか、なんとなく見覚えはあったがあまり記憶していない女性の発言に、俺は目が白黒する。

「えぇっと......この蜘蛛たちは食用じゃないかな」

 俺の言葉に女性は大きく肩を落とした。

「こんなに食べ応えがありそうな蜘蛛なのに......?」
「一応俺の従魔だから」
「そうですか......従魔ですか......」

 女性はくるっと背を向けてとぼとぼと帰ろうとしたが、またすぐにいい笑顔で俺に振り向いた。

「従魔ということは、観察し放題じゃないですかー!!」
「ひぃ!!」

 彼女は早速近くにいた蜘蛛を二匹捕まえると裏返してまじまじと見始める。捕まった小蜘蛛は逃げることもできず、ただ脚をワサワサと動かすことしかできずにいる。

「その、君は誰かな?」
「......はっ! 失礼しました、ダイチ様! 私は生物研究家のカサカ・ササーットと言います!」
「生物研究家......」

――この世界にもいるもんなんだな。

「......ん? 研究するのに食べるの?」

 俺の言葉にキラリとカサカの目が光る。

「むしろ研究してるからこそ、食べます」
「えぇ......昆虫食......?」
「昆虫食は素晴らしいですよ! 手近でサクッと高タンパク質が摂取できます。本当に、なんで皆食料がなくなってきてた時も食べようとしなかったのか......あ、でも蜘蛛は昆虫じゃないですよ?」

 カサカは心底不思議そうに首を捻るが、俺はむしろ皆の気持ちの方が分かる気しかしない。

「それにしても、最近生息し始めた蜘蛛たちは素晴らしいですね、シルクスパイダーにアイアンスパイダー、ケイブスパイダー......多様な蜘蛛達に出会えて本当に幸せです!」
「え、一種類じゃないの?」
「子ども達は何種類もいるわ」

 ナースクイーンはサラッと言っているが、うん......普通、親蜘蛛と同じ......あ、オス側が違うのか!

――一妻多夫なのか......。やっぱり生物界隈はメスが強いな。うん。

 感慨にふけっていると、カサカがニコニコと口を開く。

「特にシルクスパイダーは有難いですね。もう皆長い間布どころかまともな糸も作れていなかったので」
「あ、シルクって、絹って意味なのか!」
「そうですよー。シルクスパイダーの糸は蚕より丈夫で手触りの良い上質なものになります。これが継続して生産できるようになったら、大きな産業になります」
「へー! それは有難いな!」

 カサカは嬉しそうに掴んでいた蜘蛛を見せてくれる。お腹に白い線が三本入った小蜘蛛だ。

「こちらがシルクスパイダーですね。通常種よりかなり小さいですが」
「それは従魔になってる影響だな」
「なるほど!」

 カサカはついでとばかりに、ここにいる蜘蛛の種類を全て教えてくれたが、生憎俺には違いが全くわからなかった。

「シルクスパイダーとアイアンスパイダーの糸を混ぜて布にすると、防具向きの強い布になりますよ」
「兵士にピッタリだな」
「まぁ、普通は手に入らない高級品ですがね」

――紡織産業か......いいな! メイセキに相談してみよう!

 じゅるりと音がきこえたので顔を上げると、カサカが口元を拭っていた。

「あぁ......ダイチ様、本当に食べちゃダメですか......?」
「ダメだぞ、俺が怒られる」
「くぅ......食べたい。美味しそう......」
「ダメよ。私の家族を食べないで!!」
「うぅ......」

 そんな何日もご飯を食べてない子どもみたいな顔はしないで頂きたい。

「ほら、ナースクイーン、家族以外の蜘蛛がいる場所教えてやってくれない?」
「......それならいいわ」
「え、いいのですか?!」
「家族以外なら許しましょう」
「わーい! 教えてくださーい! ダイチ様サイコー!」

 ナースクイーンが脚を上げると、小蜘蛛が三匹程カサカの前に進み出た。早速案内するらしい。カサカは足取りも軽く去っていった。

「......子ども達は大丈夫かしらね?」
「いや、流石に食べないんじゃないか?」
「そうよね......」

 俺はナースクイーンを念の為山に残してもらい、早速町に帰った。忙しそうに会話しているメイセキを捕まえる。

「どうかされましたか、ダイチ様?」
「さっき知ったんだけど、シルクスパイダーの糸って布に使えるらしいじゃん。紡織とかどう?」
「スパイダー......クモですカ?」
「そうだな」
「シルク......ナルホド。少々お時間頂いてもいいですか?」

 みるみる顔色が悪くなるメイセキに俺は首を捻る。

「どうした、大丈夫か?」
「ちょっと、想像しただけで......うっ!」

「失礼します」と駆け去っていくメイセキに俺は思い出して謝罪する。

「ごめーん! 蜘蛛苦手だったの忘れてた!」
シェア
← 前の話
十八話 お前ら……マジか!
最新話です
目次に戻る
神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~作者:小島もりたか
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
挿絵

十九話 さては変態だな?!

二十歳くらいだろうか、なんとなく見覚えはあったがあまり記憶していない女性の発言に、俺は目が白黒する。

「えぇっと......この蜘蛛たちは食用じゃないかな」

 俺の言葉に女性は大きく肩を落とした。

「こんなに食べ応えがありそうな蜘蛛なのに......?」
「一応俺の従魔だから」
「そうですか......従魔ですか......」

 女性はくるっと背を向けてとぼとぼと帰ろうとしたが、またすぐにいい笑顔で俺に振り向いた。

「従魔ということは、観察し放題じゃないですかー!!」
「ひぃ!!」

 彼女は早速近くにいた蜘蛛を二匹捕まえると裏返してまじまじと見始める。捕まった小蜘蛛は逃げることもできず、ただ脚をワサワサと動かすことしかできずにいる。

「その、君は誰かな?」
「......はっ! 失礼しました、ダイチ様! 私は生物研究家のカサカ・ササーットと言います!」
「生物研究家......」

――この世界にもいるもんなんだな。

「......ん? 研究するのに食べるの?」

 俺の言葉にキラリとカサカの目が光る。

「むしろ研究してるからこそ、食べます」
「えぇ......昆虫食......?」
「昆虫食は素晴らしいですよ! 手近でサクッと高タンパク質が摂取できます。本当に、なんで皆食料がなくなってきてた時も食べようとしなかったのか......あ、でも蜘蛛は昆虫じゃないですよ?」

 カサカは心底不思議そうに首を捻るが、俺はむしろ皆の気持ちの方が分かる気しかしない。

「それにしても、最近生息し始めた蜘蛛たちは素晴らしいですね、シルクスパイダーにアイアンスパイダー、ケイブスパイダー......多様な蜘蛛達に出会えて本当に幸せです!」
「え、一種類じゃないの?」
「子ども達は何種類もいるわ」

 ナースクイーンはサラッと言っているが、うん......普通、親蜘蛛と同じ......あ、オス側が違うのか!

――一妻多夫なのか......。やっぱり生物界隈はメスが強いな。うん。

 感慨にふけっていると、カサカがニコニコと口を開く。

「特にシルクスパイダーは有難いですね。もう皆長い間布どころかまともな糸も作れていなかったので」
「あ、シルクって、絹って意味なのか!」
「そうですよー。シルクスパイダーの糸は蚕より丈夫で手触りの良い上質なものになります。これが継続して生産できるようになったら、大きな産業になります」
「へー! それは有難いな!」

 カサカは嬉しそうに掴んでいた蜘蛛を見せてくれる。お腹に白い線が三本入った小蜘蛛だ。

「こちらがシルクスパイダーですね。通常種よりかなり小さいですが」
「それは従魔になってる影響だな」
「なるほど!」

 カサカはついでとばかりに、ここにいる蜘蛛の種類を全て教えてくれたが、生憎俺には違いが全くわからなかった。

「シルクスパイダーとアイアンスパイダーの糸を混ぜて布にすると、防具向きの強い布になりますよ」
「兵士にピッタリだな」
「まぁ、普通は手に入らない高級品ですがね」

――紡織産業か......いいな! メイセキに相談してみよう!

 じゅるりと音がきこえたので顔を上げると、カサカが口元を拭っていた。

「あぁ......ダイチ様、本当に食べちゃダメですか......?」
「ダメだぞ、俺が怒られる」
「くぅ......食べたい。美味しそう......」
「ダメよ。私の家族を食べないで!!」
「うぅ......」

 そんな何日もご飯を食べてない子どもみたいな顔はしないで頂きたい。

「ほら、ナースクイーン、家族以外の蜘蛛がいる場所教えてやってくれない?」
「......それならいいわ」
「え、いいのですか?!」
「家族以外なら許しましょう」
「わーい! 教えてくださーい! ダイチ様サイコー!」

 ナースクイーンが脚を上げると、小蜘蛛が三匹程カサカの前に進み出た。早速案内するらしい。カサカは足取りも軽く去っていった。

「......子ども達は大丈夫かしらね?」
「いや、流石に食べないんじゃないか?」
「そうよね......」

 俺はナースクイーンを念の為山に残してもらい、早速町に帰った。忙しそうに会話しているメイセキを捕まえる。

「どうかされましたか、ダイチ様?」
「さっき知ったんだけど、シルクスパイダーの糸って布に使えるらしいじゃん。紡織とかどう?」
「スパイダー......クモですカ?」
「そうだな」
「シルク......ナルホド。少々お時間頂いてもいいですか?」

 みるみる顔色が悪くなるメイセキに俺は首を捻る。

「どうした、大丈夫か?」
「ちょっと、想像しただけで......うっ!」

「失礼します」と駆け去っていくメイセキに俺は思い出して謝罪する。

「ごめーん! 蜘蛛苦手だったの忘れてた!」
シェア
最新話です
目次に戻る
神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~作者:小島もりたか
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません